久々の「きになるオーバードライブ」シリーズ、今回はLine 6社のエフェクターデザイナーの方へのインタビュー記事を元に書いてみたいと思います。
ではいきましょう。
今回はエフェクターの紹介というよりも、「デジタルとアナログについて」ということを書きたいと思います。
まず、そのインタビューに答えていた方ですが、ジョージ・トリップスという方で、以前「Way Huge Electronics」というハンドメイドエフェクトブランドをやっていたということでした。当然、そのブランドの製品は既に生産終了となっているにもかかわらず、未だにオークションなどでは高額で取引されている、というエフェクターです。そんなブランドの中心となった人ですから、エフェクター界における有名人の一人、ということですね。(サウンドなどの評価はともかく、日本におけるHSWやTakkyの中心人物、と考えてもらえばいいと思います。)
さて、Line6といえば、「モデリング」ですね。デジタル技術と膨大なデータをもって、有名なアンプやエフェクターをリーズナブルな価格でコンパクトにまとめてしまう、ということを得意としています。今、現時点でBOSSと同じ土俵で争える、数少ないブランドの一つですね。
デジタルエフェクターで、その「地位」を最も認められているのは、「ディレイ」だと思います。好みはともかくとして、アナログでは到底できなかったことをデジタルの力で行うことができるようになり、有名なU2の付点ディレイプレイなどが登場しました。そして、このジョージ・トリップス氏がLine6社に入って開発したディレイこそ、世界的なベストセラーとなっている、デジタルモデリングディレイ、「LINE6 DL4」です。
LINE6 DL4 |
では、「歪み」についてはどうでしょうか。ジョージ氏によると、いわゆるゲインの低い歪み(チューブスクリーマーのような)については、アナログの方がパーツが少なくてすむので有利だといいます。また、そこに表れるニュアンスの違いなども考えれば、たしかに「ゲインの低い歪み」に関してはアナログの方がいいように思います。(もちろん技術は進化するので一概にはいえませんが)
そんな中、「LINE6 CRUNCHTONE」では、VOX、Marshall、Fenderという代表的な3種類のアンプをモデリングし、ゲインの低い歪み、すなわち「クランチサウンド」をデジタルで作り上げ、成功したペダルの一つです。
LINE6 CRUNCH TONE |
しかしデジタルの利点を最大限に生かすのは、「ハイゲインな歪み」だといいます。アナログ回路でのハイゲインペダルで有名なものといえば、BOSS MT-2だと思いますが、あれはゲインを上げるだけでもオペアンプを2段使っていますし、そこからさらに音作りにつながるフィルタ等を多数(ちなみにMT-2のフィルタは7つ)使うことで、どうしても通る部品が多くなってしまいます。しかし、その点デジタルならば、部品は少なくてすみますし、要求される「芯のある音」というのも、アナログに比べて作りやすいということです。(クランチではこのデジタルらしい「芯のある音」が逆に目立ってしまっているのではないかと思います。)
そうして登場したのが、MT-2と同様評価の高い、Line6 UBER METALです。出たばかりのBOSS ML-2もデジタルハイゲインペダルですね。
LINE6 UBER METAL |
このように、デジタルとアナログ、どちらにも利点があります。「デジタルだから」と拒絶反応を示す前に、まず音を聞いてみることが大事だと思います。音作りは「出音が全て」なのですから、例えば途中に100万円のアンプを通っても、1000円のエフェクターを使っても、出音がよければそれでいいのです。
もちろん、それらの先入観を排除した上で、片方が好みに合わない、ということがあるなら、それは仕方がないと思います。
ただ個人的には、デジタル技術を使うのならば、システム自体をデジタル向けにするようなことも必要だとは思います。コンパクトエフェクターをパッチケーブルでつないでアンプに・・・・というのは、明らかにアナログ回路が有利になるシステムですから、そのあたりから見直していくことも大事なのではないかと。デジタルはデジタルで、アナログはアナログで利点を生かし、弱点は補っていく、そんなシステムを作って欲しいですね。