アンプの作る「歪み」の原点ともなった、Blues Brakersのレコーディングで使われた「1962 JTM」の復刻版を試してきました。
「伝説のサウンド」は語り継がれていくのでしょうか・・・。
では、いってみましょう!
Marshall 1962 "BluesBraker Combo"
- 歴史的なアンプ
マーシャルアンプの歴史は、1962年に始まります。1960年にショップをオープンした、ジム・マーシャルはドラマーで、ドラムの講師などを行っていたようです。そんな彼の教え子たちのバンドメンバーであるギタリストが、「もっと大きな音を出したい」という話をしているのを聞き、じゃあそういうアンプを作ろうということで作られたのがマーシャルアンプでした。
当時、ギターサウンドといえばクリーンサウンドのことを指していて、ジム・マーシャルさんもそういったサウンドのためにアンプを作ったはずです。ところが、そのアンプには欠陥がありました。元々フェンダーアンプ(元となったアンプは分かりません)を改造して作られたマーシャルアンプは、ヴォリュームの領域を広げすぎてしまい、音量を最大にすると歪みが発生してしまうのです。
とはいえ、イギリスは小さな国です。大きな音量を出すために作られたマーシャルアンプを、フルヴォリュームで鳴らすような機会はほぼなかったのではないでしょうか。
ところが、それが可能な環境をもったギタリストが存在していました。それがヤードバーズの初代ギタリストで、「Elic Crapton With Blues Brakers」を結成したばかりのエリック・クラプトンです。彼は、1962年にその作られたばかりのマーシャルアンプを使い、フルヴォリューム時に出る歪みをそのまま使ってレコーディングを行いました。そして、そのサウンドは「極上のディストーション(歪み)サウンド」として伝説となるわけです。
その結果、この「1962」と名づけられたマーシャルアンプは、「Blues Braker Combo」と呼ばれるようになりました。時期的には先にJTM45が作られたらしく、1962はそれのコンボバージョンだったようです。(公式サイトより)
- アンプの仕様
こちらが、1962のコントロール部です。SPEED、INTENSITYはCh.2に搭載されるトレモロの設定、そしてPresence、Bass、Middle、Trebleの3バンドEQとプレゼンス、Volume1、Volume2で構成されるクラシカルな4インプット2chアンプです。2chといっても、現代のMarshall JCM2000 DSL100のようにチャンネルを切り替えて音を変えるというようなことはできません。基本的にはJAZZ CHORUSと同じような構成で、EQが両チャンネルで共通となっています。
出力は30W(一部お店によっては45Wと書かれていますが、30Wのようです)プリアンプにはECC83こと12AX7が4本使われ、整流管にGZ34、パワー管には6L6/5881が2本使われています。この12AX7と6L6の組み合わせはまさにチューブアンプの基本形ですね。
スピーカーにはセレッションの12インチが2発搭載されています。
- セッティング
さて、今回の試奏では、「クリーミーな伝説のサウンド」のことはあまり考えていません。このアンプ自体は基本的にヴォリュームを上げないと歪まないことは分かっていますし、それを試奏でおこなうのは無理というものです。そこで、アンプ側はクリーンで、エフェクターを使ってどの程度使えるのか、現代の基本的なロックはできるのか、ということを焦点にしました。では、セッティングいってみましょう。
Gibson 60's Les Paul
↓
【渋谷店】Ibanez / TS808 Tube Screamer |
ダイナミックなサウンドを演出!定番オーバードライブOCD エフェクター【送料無料】 FULLTONE ... |
Marshall 1962
というわけで、まずはブースターとしてTube Screamerを、歪み系としては本当はBORを使いたかったのですが、置いていなかったので、BOR同様素晴らしい音圧を持つOCDを使いました。
- 操作性
これは特に問題ないです。基本的な設計は古いので、イコライザの効きは悪いです。が、何か使いにくいと思うような点は、特にありませんでした。あえて言えば、1VOLなのでアンプを歪ませるためには大きな音を出す必要がある、というくらいでしょうか。
- サウンドレポート
- クリーンサウンド
まずは、エフェクターをOFFにしてのアンプのみのサウンドです。これこそマーシャルサウンド!というような、よく言われる「パリっとしたサウンド」を出すことができますね。言葉で表すのは難しいですが、本当に張りと艶のあるサウンドです。ただ、やはりヴォリュームが1程度なので、とても軽く感じます。これは仕方がないことでしょうね・・・。
-
- TS808
Ibanez TS808をONにしてのサウンドです。先ほどの「軽さ」をなんとかするため、エフェクターのTONEはかなり絞ってみました。OVERDRIVEノブは0、LEVELノブ全開です。結果として、中低域に寄ったクランチサウンドとなります。TSのマイルドな感覚を残しながら、和音でも分離が素晴らしいです。ただ、音量を調整しながらOVERDRIVEを上げていってもあまり変わりません。ちょっと相性が悪かったようです。
-
- OCD
Fulltone OCDをONにしてみます。すると、これは最高のドライブサウンドとなります!
ハイゲインとはいきませんが、充分に現代のロックシーンで使える歪みだと思います。OCDの音圧と、Marshallの張りのあるサウンドが合わさって、「最高のディストーション」となりました。ペダルの相性は素晴らしいですね。この音量だと、レスポールで、さらにフロントPUでないとちょっとトレブリーすぎるのですが、これは仕方がありません。アンプ側のEQやプレゼンスでなんとか調整しようと試みましたが、プレゼンス以外はすこし効きが悪い上、このあたりはフルテンにしないと少し抜けが悪くなってしまいます。やはりこのアンプは、ツマミを全開にするのが基本といえそうです。
しかし、OCDもさすがです。張りと艶がすばらしいとはいえ、かなりペラペラだったサウンドが重厚になり、一気に音圧が上がりますね。これは是非BORで試したかったところですが・・・OCDも非常にいい仕事をしていると思います。
歪みとしては、OCDで歪ませていてもやはりマーシャルサウンドですね。中央のツマミをHP側にしてもLP側にしても、音は多少変化するものの、どちらでも「マーシャルの音」となります。
-
- TS808+OCD
つないだエフェクトを両方ONにしてみました。TS808はブースト、歪みはOCDで作っています。さらに音圧が増し、とても気持ちのいい音となります。あまりにいい音で、ちょっと音量が上がりすぎていて店員さんに注意されてしまいました・・・ゴメンナサイ。
ということで、今回はMarshall 1962のレポートでした。あまり家で使うことを意識せずに、どんなもんかな、と思って試してみたのですが、やはりいい音ですね・・・。
めちゃめちゃ欲しくなりました。しかし、なんとか家でも使えるような方法があればいいのですが、現状では無理だと思いました。音はすばらしいですが、本領を発揮するためにはヴォリュームを上げなければなりません。
方法としては、1962の元となっているアンプヘッド、Marshall JTM-45を使って、KOCHなどのキャビネットをつながなくてもスピーカーシミュレータを通してラインで録ることができる、ダミーロード付きのアッテネータからラインで出すのは一つの案だと思います。どちらにしても、お金を貯めないと・・・。今は、いつかここで「レビュー」できる日が来ることを楽しみにしていることにします。