定番ペダルを今改めて振り返ってみる特集。第7回から、前回の第11回まで、5回に分けていろいろなモジュレーションエフェクターを見てきました。今回は、そんな様々なモジュレーションペダルを1つにまとめて、1台のペダルで様々なモジュレーションサウンドを作ってしまおうという観点で作られた、多機能なモジュレーションペダルを見てみたいと思います。
あくまでモジュレーションペダルということで、「空間系特化のマルチエフェクター」とは違い、さまざまなモジュレーションエフェクトを作ることの出来るペダル、というモデルに絞って載せて行きます。では、いってみましょう。
- 定番モジュレーションマルチエフェクター
※「定番」に定義はありません。あくまで個人的な印象も含んでいますので、これが入っていない、これは定番じゃない、といったご意見もあるかもしれませんがご了承ください。メーカーのアルファベット順にご紹介します。
Blackstar HT-Modulation
BlackstarHT-MODULATION |
Flanger、Phaser1、Phaser2、Vintage Chorus1、Vintage Chorus2、Multi Chorus、Tremolo、Rotaryの8種類のモジュレーションエフェクトを搭載し、その中から1つを選択して使えるタイプのペダルです。エフェクトはデジタルですが、そこに真空管を使った回路を組み合わせてヴィンテージサウンドを作り出すというスタイルで、かつてDamage Contolが製作したGlass Nexusというペダルと似たようなスタイルとなっています。
コントロールはEffectとSpeed、Feedback、Saturation、Level。フットスイッチはON/OFFと2段階のスピード切替となっています。Saturationノブで真空管の飽和度をコントロールすることができるということですね。デジタルペダルですが、かなりアナログ的なコントロールで使えるペダルとなっています。
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Eventide Modfactor
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Phaser、Flanger、Chorus、Polymod、Undulator、Tremolopan、Vibrato、Q-Wah、Modfilter、Ringmodという10種類のエフェクトを搭載。それぞれを10ノブで詳細にコントロールできる、このペダル特有のスタイルとなっています。非常に幅広い音作りが出来るモデルですね。
2パッチ×10バンクの20プリセットを保存可能となっており、フットスイッチだけでなくMIDIコントロールでパラメータやプリセットの切替などが可能となっています。タップテンポ対応、ギターとラインレベルの切替、ステレオ/モノラル対応、ファームウェアアップデート対応と、まさに最高峰の機能を持ったモジュレーションペダルです。
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Line6 MM4
数々のエフェクトが搭載されたLine 6 MM4モジュレーションモデラーLine6 MM4【送料無料】Line6 MM4 |
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Source Audio Orbital Modulator
【渋谷店】Source Audio ソースオーディオ SA226 Orbital Modulator |
9種類のパラメータは自由に外部コントロールを設定でき、エクスプレッションペダル、Hot Hand、MIDIといったソースでリアルタイムなコントロールが可能。56Bitの高性能DSPによるハイクオリティなサウンドも特徴です。
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Strymon Mobius
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本体にはValue、Speed、Depth、Level、Param1、Param2のノブとValue、およびTypeノブを搭載。CHORUS、FLANGER、ROTARY、VIBE、PHASER、FILTER、FORMANT、VINTAGE TREMOLO、PATTERN TOREMOLO、AUTOSWELL、DESTROYER、QUADRATUREの12種類のサウンドを作ることができるペダルとなっています。また、200種類のプリセットを保存し、それらを呼び出して使うことができます。ステレオ入出力に対応し、モノラル時には2種類のモジュレーションを別々のIN/OUTとして使うことが可能。MIDIコントロールにも対応していて、エクスプレッションペダルによるコントロールも可能です。搭載されているエフェクトはそれぞれ以下の通りです。
Chorus(コーラス)
コーラスモードではSpeed、Depth、Level、アサイン可能な2つのパラメータノブと、さらにMode、Mix、Toneの3つのコントロールを使うことが出来ます。コーラスモードではさらに5種類のサウンドバリエーションを変えるモードを搭載し、さまざまなクラシックコーラスサウンドを網羅しているとのことですね。
strymon BRIGADIER等にも搭載されたdBucketテクノロジーによるBBDサウンドを作るアナログ風コーラスやマルチコーラス、ヴィブラート、さらに80年代のクリーンなデジタルコーラス、そしてDetuneサウンドを収録しています。
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Flanger(フランジャー)
フランジャーモードではSpeed、Depth、Level、2つのパラメータノブの他、Mode、Regeneration、Manualコントロールを搭載。
6種類のフランジャーサウンドを収録し、Modeコントロールで切り替えることができます。収録されているのはヴィンテージフランジャーサウンドを作り出す、シルバー、グレー、ブラック+、ブラック-の4モードと、ゼロフランジャーを再現するゼロ+、ゼロ-モードとなっています。
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Rotary(ロータリー)
ロータリースピーカーのサウンドをシミュレートするモードです。
Speed、Depth、Level、2つのパラメータノブの他、Horn Level、Preamp Drive、Slow Rotor Speed、Acceleration Time、Tap Switchコントロールがあります。サウンドバリエーションを変えるモードはありませんが、その分多彩なパラメータで様々な音作りが可能です。
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Strymon Lexを思わせるサウンドですね。
Vibe(ヴァイブ)
伝説的なモジュレーションエフェクター、Uni Vibeを思わせるサウンドを作るモードです。
Speed、Depth、Levelと2つのパラメータノブ、Waveshape、Low End、Headroom、Modeコントロールとなっています。
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このモードはエクスプレッションペダルを使うと特にすごそうな感じですね。
Phaser(フェイザー)
フェイザー、フェイズシフターと呼ばれるエフェクトです。Speed、Depth、Levelと2つのパラメータノブ、Mode、Regeneration、LFO Type、Spreadコントロールとなっています。
搭載されるモードは、2、4、6、8、12、16ステージフェイザーの切替となっています。どのモードも最適な音響特性となるようチューニングされているとのことです。
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Filter(フィルター)
続いてはフィルターエフェクトです。Speed、Depth、Level、および2つのノブに加え、Mode、Waveshape、F Mid、Resonance、Dry Level、Spreadのコントロールとしても使用可能。
モードはシンプルにローパス、ワウ、ハイパスとなっていて、フレキシブルなフィルターサウンドが得られます。オートワウ、エンヴェロープフィルタ(タッチワウ)、さらにエクスプレッションペダルでのワウエフェクトも可能です。
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Formant(フォルマント)
フォルマントはあまり聞き慣れない名前のエフェクトですが、いわゆるトーキングマシンエフェクトです。
Speed、Depth、Level、そして2つのノブと、Vowel 1、Vowel 2、LFO Type、Spreadのコントロール。母音を選択することでバリエーション豊かな「言葉」をしゃべらせることができます。
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Pattern Trem(パターントレモロ)
続いてはちょっと変わったトレモロです。8ビートまでのシーケンスを用いてリズムを刻むことの出来るトレモロですね。
コントロールはSpeed、Depth、Level、2つのパラメータノブ。そして追加コントロールとしてWaveshape、Beat 1-8、Panを使用可能です。
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Autoswell(オートスウェル)
最近は「Swell」というエフェクト名を使わなくなりましたが、これはいわゆるスロウギア等のヴォリュームを自動で動かすエフェクトの事です。古いワウ/ヴォリュームペダルなんかだと、「Wah/Swell」と書かれていたりしますが、それと同じです。
コントロールはSpeed、Depth、Level、アサイン可能な2つのノブとRise Time、Shapeコントロールがあります。ヴァイオリンやストリングス風サウンドからリバースエフェクト的な音まで作ることができます。
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Destroyer(デストロイヤー)
非常に派手な名前のモードです。このエフェクトはビットクラッシャーやサンプルレートの可変を行って個性的な音を作り出すモードとなっています。
コントロールはSpeed、Depth、Levelとアサイン可能な2つのノブ、さらにBit Depth、Sample Rate、Filter、Vinyl、Mixとなっています。古いレコードのようなサウンドから、レトロな8ビットゲームサウンド、さらに凶悪な轟音など様々な音を出すことができます。
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Quadrature(クワドラチャ)
クワドラチャは、通常はラジオ等の電波を音に変換するために行う検波の一種で、入力された電波を2つに分け、片方を1/4サイクルずらすことでノイズの少ない音を作り出す、というものですが、このペダルのクワドラチャは非常に個性的な音を作り出すシンセ的なエフェクトです。
Speed、Depth、Levelとアサイン可能な2つのノブ、そしてMode、Shift、LFO Type、Mixの追加コントロールを搭載。AM (振幅変調)、FM (周波数変調)、Frequency Shifting (単側波帯変調)のモードを搭載。シンセ、スライサー、リングモジュレータなどいろいろな音が出ます。
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t.c.electronic Nova Modulator
t.c.electronic モジュレーション NOVA MODULATOR |
さらに、同時に2つのエフェクトを選択してテンポを同期させたり、それぞれを個別に設定して使うことも可能。多くの多機能モジュレーションペダルが1つのエフェクトしか使えないのに対し、同時に2つのエフェクトを使えるというのは大きなアドバンテージですね。このシリーズ特有のコンパクト筐体も使いやすさを増しています。もちろんタップテンポやフルステレオ対応です。サウンドも定評のあるモデルですね。
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というわけで、今回はいろいろな、多機能モジュレーションペダルを見てみました。見ての通り、それぞれいろいろな機能を備えたモデルばかりです。特にこういった多機能なモジュレーションペダルは数がそれほど多くなく、定番モデル、というよりも流通モデルほぼ全てご紹介みたいな感じになりましたが、より比較がやりやすいかと思います。
デジタルモデルということで、新しいものの方が機能性はやはり有利ですね。かつてはEventideでしたが、機能やプリセットだけを見ると今ではStrymonが飛び抜けています。一方、t.c.electricは2エフェクト同時使用可能という特徴があったり、Blackstarの真空管サウンド、Source AudioのHot Handなどリアルタイムなコントロールへのこだわり等といった特徴がそれぞれ見受けられます。
どのモデルも、大きな人気メーカーが製作しているだけあってクオリティも高く、よく考えて作られている印象ですね。特にEventideとt.c.electronicに至っては2008年以来のロングセラーモデルです。こういったデジタル多機能ペダルでこれだけ長いこと作られているのは、今の時代では素晴らしいことですね。
たしかに流通モデルほぼ全てご紹介したんですが、どれも定番になるに足る力を持ったペダルばかりだと思います。それぞれのスタイルに合ったものを選んでみてください。
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