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DAW、DTM向け自宅用モニタースピーカー特集! Part.1 基本の用語とこだわりポイント

DAWで音楽を作るとき、自分の聞いている環境が正しいのかどうか、不安になったりします。普段の再生環境と別にヘッドフォンやイヤフォン、あえてノートPCの小型スピーカーから再生してみたりしてどんな風に聞こえるのか試したりってことをやったりするわけですが、そもそも普段の再生環境が実際どうなのかということが分からないですよね。
最近モニタリング用のスピーカーをいろいろ探したりしていて、再生環境を変えてみようといろいろ見たりしています。今のうちの再生環境では、とりあえず定位が全体的に右にずれる、高域がちゃんと出ていない、というところまでは分かっていて、その辺を自分である程度補正したり、リファレンスヘッドフォンを使ったりしながら調整したりしてるんですが、そもそもの環境から一新してアップデートした方が早いな、という結論になりました。
で、最近ずっといろんな卓上のモニタースピーカー、いわゆるニアフィールドスピーカーを見ていたりします。見ているといろんなタイプがあって、こだわりのポイントなんかも面白かったりしますね。いろいろなモデルが出ていて、見ているとかなり楽しいです。今回はPart.1ということで、まずはこだわりのポイントなんかを見てみようと思います。

  • 小型モニタースピーカーの呼び方

こういう小さめのモニタースピーカーですが、いろいろ呼び方があります。1つは「スタジオモニター」。スタジオの作業で使うモニタースピーカーという感じですね。大型なものはラージスピーカーやラージモニターと言いますが、デスクトップ向けの小型のものをスタジオモニターと言うことが多いようです。
他の言い方としては、「ニアフィールドモニター」という言い方もあります。ニアフィールドとは近距離ということ。近くに置いて使うモニターですね。単に「ニアフィールドスピーカー」というとリスニング向けスピーカーも含まれたりします。あとは「ブックシェルフスピーカー」。ブックシェルフは本棚っていう意味ですが、本棚に置けるようなスピーカーって感じでしょうか。こちらも小さめのスピーカーを表す言葉です。
また、「デスクトップモニター」という言い方もあったりします。要するに卓上モニターですね。単にモニターってだけでいうと画面のことなのかスピーカーのことなのか分からなくなったりして、検索結果に両方出てきたりしますね。それからモニターじゃなくてリファレンススピーカーって言うこともあります。スピーカーよりもヘッドフォンでよく使われる言葉ですね。モニタリングヘッドフォンじゃなくてリファレンスヘッドフォンみたいな。リファレンスは参考とか参照とかいう意味ですが、味付けなくそのままの音を出力する機材を「リファレンス」と呼ぶことがあります。ミキシング時に参考にするために使うリファレンストラックとか、その辺から来た言葉ですかね。
いろいろ探して見ていると分かるんですが、オーディオ用語って同じ意味でも全然違う言葉が使われていたりします。年代とか地方とかにもよるんですかね。日本独自の言葉もあれば、アメリカ系の言葉、ヨーロッパ系の言葉などいろんな言葉があるので難しいですね。

  • アクティブとパッシブ

スピーカーユニットには、アクティブとパッシブがあります。アクティブとは、スピーカー本体の中にプリアンプ、パワーアンプを内蔵し、オーディオソースを直接接続して使うことができるもの。ギター的に言えばコンボアンプです。パッシブはスピーカーユニット単体では駆動させることができず、別途アンプを用意する必要があるものです。
ピュアオーディオでは、スピーカーはパッシブが当たり前ですが、ことニアフィールドモニターに於いては、圧倒的にアクティブタイプが多いです。アクティブタイプの利点は、ユニットにアンプが内蔵されているため場所を節約できること、またアンプ/スピーカーを別で購入するよりも安くなることが多いこと(もちろんモデルによりますが)。リスニングのためにいろいろなアンプにこだわり、スピーカーにこだわっていくのはまた楽しいものですが、それとは違い、モニタリング向けの小型スピーカーでは、スピーカーの傾向に合わせて専用設計されたアンプを内蔵できるアクティブ型の方がよく使われる傾向にあると思います。今回の特集では、基本的に全てアクティブタイプのものを紹介していこうと思います。
なお、アクティブタイプでも大きく2種類のものがあります。低価格帯によくあるのが片側アクティブスピーカー。ステレオセットで売られているもので、片方にアンプ類をまとめてしまい、もう片方はパッシブスピーカーユニットとして作られているものです。電源が1つで済む、2本セットでくっついているRCAケーブルを使えるといった利点もありますが、左右でユニットの重さがかなり違ってしまう場合はそれで音の聞こえ方がずれることがあったりもします。上位モデルになってくると、左右それぞれが独立したアクティブスピーカーとなっています。これはペアでなく単体で売られていることも多く、ステレオで揃えるには2つ購入する必要があったりもします。また、それぞれ別の入出力端子となるため、電源ケーブルが2つ必要になります。左右のスピーカーの重さは揃うので、音の聞こえ方は均一になりやすいですね。

  • ニアフィールドモニタースピーカーの構造

基本的にオーディオスピーカーと構造は変わりません。多くのモデルが1つのユニットに複数のスピーカーを搭載しています。スピーカーを1つしか搭載していないのはフルレンジスピーカーといって、スピーカー1つで上から下まで出してしまうというもの。とてもリアルで美しい音が出る、特に女性ヴォーカルの綺麗さはフルレンジが最高、という話もありますが、一方で物理特性上、出せる帯域が制限されてしまうこともあります。最も多いのはスピーカーを2つ搭載したもので、ツイーターとウーファーというように分かれています。2Wayという言い方をします。ツイーターが高域、ウーファーが中低域を出力します。アクティブタイプはアンプを内蔵していますが、このツイーターとウーファーそれぞれに専用のアンプを内蔵するものをバイアンプと言います。バイアンプのステレオスピーカーなら、そのセットで4つのアンプを駆動させている形になるわけですね。もっとスピーカーを増やした3Way方式のモデルもあったりします。

  • スピーカーサイズ

さて、卓上や机上に置いたりして使うモニタースピーカー。ものすごく広い部屋で余裕のスペースがあるなら良いんですが、なかなかそうは行かないですよね。となると大事になってくるのが本体のサイズ。これはそれぞれスペックに表記があるので良いと思いますが、本体のサイズが制限されると、自動的に制限されるのがスピーカーのサイズです。
スピーカーは、サイズが大きいと低音の再生に向いていて、小さいと高音の再生に向いています。つまり、スピーカーのサイズが制限されるということは低音を出し切るのが難しくなってくるということですね。もちろん、ラージモニターの出すスーパーローと呼ばれる帯域、20Hzとかの可聴限界域の超低音はまず出ません。そこはそもそも不可能なのであきらめましょう。その上で、設置することができるスピーカーサイズの中で、できるだけ大きめのウーファーを搭載したものを選ぶ、というのも1つの方法です。ただもちろん、いろいろなスピーカーの特性などから、小さいのに驚くほど低音が出るモデルなんかもあったりするので、そのあたりはまた面白いところですね。

  • 低域の補完、密閉型とバスレフ型

小型のスピーカーでは低域が物理的に出ないことは上記のとおりです。しかし、スピーカーはいろいろな工夫をすることで低域を補完することができます。
スピーカーサイズを大きくするというのが1つの理想として、そこに一番近いのがサブウーファーユニットを追加することです。いわゆる2.1chにしてしまう。ある程度の価格以上のモデルではサブウーファー向けのアウトプットが付いていますので、それをつかうことで 低域を補完することができます。ただ、やはり設置場所に制限があるわけなので、自宅ではなかなか難しかったりします。音量的な制限もありますし。
なので、サブウーファーを使わなくても低域がしっかり出るように多くのスピーカーでは様々な工夫をしています。これはユニットの構造の話になりますが、まず最もシンプルな形を密閉型と言います。これは密閉した箱の中にスピーカーユニットを取り付けたもの。クローズドバックキャビネット、みたいな感じですね。密閉型は低域の補完をしていないので再生可能周波数では不利ですが、スピーカーからの音だけが出力される(もちろんキャビネット自体の特性の音も入りますが)わけで、タイトなローの出方をします。ここも1つのこだわりポイントですね。
低域を補完する方法としてラジエータースピーカーを配置する、というものもあります。これは電装系を外したスピーカーユニットを別途取り付けることで、スピーカーを共振させて低域を再生するというもの。サブウーファーなんかに使われることが多かったりしますが、そもそもサイズに制限のあるニアフィールドモニターで、スピーカー1つ分のサイズを消費するラジエータースピーカーは現実的では無く、採用しているモデルはほぼありません。
ほとんどのモデルで採用されているのがバスレフという構造。バスレフとはBass Reflexのことで、スピーカーユニットの中に筒状の穴を開けることで、低域を共振させて低音を補完する技術です。スピーカーユニットは音に合わせて動きます。動くとキャビネット内の空気も動きます。いわゆる逆相の音ですね。この空気の動きを利用して、筒状の穴を共振させます。空いた瓶の口を横から吹くと共振して音が鳴ったりしますね。フルートなんかはそういう奏法で音を出しています。それと同じ原理を使って低域を補完するものです。

  • バスレフの位置

ほとんどのニアフィールドモニターはバスレフ型の設計がされていますが、バスレフの穴の位置もポイントとなります。バスレフはその多くが前、または後ろに付けられています。バスレフはそこから空気が出るので、後ろに設置すると本体のスピーカーユニットの出力を邪魔することが無いため、理論上は後ろに付ける方が良い、という話があります。
しかし、それはスピーカーが理想的な空間に設置された場合です。理想的な空間とは、前後左右に十分なスペースを確保できる状態。こういったモニタースピーカーは、壁際に設置されることも多くあります。バスレフが後ろにあると、そこから出る空気が壁に反射して音に影響することがあったり、また後ろにあるとスピーカーユニットからの距離が離れ、音が届くまでに差が出る=音像がぼやける、という意見もあったりします。ではどうするか。ということで、それぞれの設計者が考えた結果が、各モデルの形です。フロントバスレフ、リアバスレフ、中には上面バスレフのモデルもありますが、きちんと設計されたモデルならどれも意味があると思います。それぞれの設置状況なども考えながら、選ぶ際のこだわりポイントとして考えるのが良いと思います。

  • 出力

今回はアクティブスピーカーの話です。となると、搭載されているアンプの出力も重要な要素となります。出せる音量は決まっているわけで、それをどんな出力で鳴らすか、というのがポイントですね。小さな出力をめいっぱい上げて鳴らすのも1つの方法ですし、大出力を余裕を持って鳴らすのも1つの方法です。パワーアンプの出力と音の特性についてはギターアンプと同様の傾向があって、大出力ほどヘッドルームが大きくなります。出力の違う同タイプのギターアンプ、例えば100Wと50Wのモデルがあったとして、同じような設定にすると、50Wの方が歪みますよね。モニタースピーカーにはギターアンプみたいな歪みはありませんが、大出力の方がそれだけ歪みが少なくなる、ということもあります。しかし逆にアンプがスピーカーを鳴らし切るために必要な音量も、大出力の方が大きくなるわけで、スピーカーを鳴らし切ることができないと、スピーカーの動きを元に低域を補完するバスレフが上手く働かなかったりもします。個人的には、ある程度の余裕を持った出力のモデルが良いのかなと思ったりしますが、そのあたりはいろいろ考え方がありますね。大出力のモニターをメインに、小出力をサブに、というような方法もあったりしますし。ここもそれぞれのこだわりポイントです。

  • 周波数特性の読み方

スピーカーのスペックにはいろいろなことが書かれていますが、再生できるレンジを表記する方法として、周波数特性があります。○Hz〜○kHz、というものですね。これは1つの指標として活用することができますが、表記として読み方を知っておくと、より分かりやすくなります。
基本的に、何も書かずに「○Hz〜○kHz」とだけ書かれているものは、よほどひどいものでなければ、この周波数帯の音は「-3dB」までの範囲で音が出ますよ、ということを指しています。全体域で完全にフラットなスピーカーは存在しないわけですが、その範囲の音であれば小さくても-3dBまでに収まりますよ、という事ですね。別途記載がある場合は、-6dBの範囲だったりもしますし、両方を記載しているメーカーもあります。とはいえこのスペックはあくまで指標。厳密に音の特性を知ることはできません。小さな差であれば設計の特性で印象が変わることもあります。ただ、大きな差がある場合(例えば最小が80Hzと40Hzのスピーカー)では、音の出方が明らかに違うんだな、ということが分かると思います。

  • クロスオーバー周波数

複数のスピーカーを搭載したマルチウェイスピーカーの場合、それぞれのスピーカーが担当する帯域が違っています。その帯域の境目をクロスオーバー周波数と呼びます。2Wayスピーカーの場合、クロスオーバー周波数が高いほどウーファーが担当する範囲が広がり、低いほどツイーターが担当する範囲が広がります。基本的にしっかり作られているものなら大丈夫ですが、クロスオーバー周波数帯は音が少しだけ濁りやすい(普通に聞く分には気づかないレベルかもしれませんが)ので、ミックス作業をする際などはその周波数帯を覚えておくと良いのかもしれません。また、ミックスする上で「重要な周波数帯」と「クロスオーバー周波数帯」がかぶっているモデルは選ばない、というこだわり方もあります。重要な周波数帯はジャンルや楽曲ごとに異なりますが、作業をしていて「よく調整する周波数帯」だったり、「よく持ち上げる周波数帯」はそれぞれあると思いますので、そこを考えるのも1つのやり方ですね。どの帯域が重要か分からないって場合は気にしなくて良いと思います。ちゃんとしたものなら通常問題なく聞こえるように作られているはずですので。

  • モダンスペック

スタジオモニターにも「現代的なスペック」というものがあります。例えばアンプがクラスD(デジタルアンプ)で、それをDSPで制御している、というようなモデルも増えてきていますね。また、ツイーターにリボンツイーターを使用する、という手法も最近は多いです。リボンツイーターとはAMT(エアー・モーション・トランスフォーマー)ツイーターと呼ばれることもあります。スピーカーの構造は、コーン(多くのウーファーやギターアンプのスピーカーなど)、ドーム(多くのツイーターに使用される)、ホーン(拡声器など)の3種類が主ですが、そうでないスピーカーもあります。スピーカーとマイクは同じ構造と言っても間違いではありません。つまり、マイクでできることはスピーカーでも出来ます。なので、コンデンサ型やリボン型のスピーカーも存在しています。コンデンサ型だと、STAXのヘッドフォンなんかがそうですが、独特の繊細な音を出すことができる代わりに、専用の電源ユニットが必要になります。リボン型はリボンマイク同様、レスポンスが高く、かなりの超高域まで出せることができるため、一部モデルではツイーターに使われています。高解像度な高域が出せる反面、ウーファーと構造が異なるため音をまとめるのが難しいということもあるようです。モダンなスタイルのモデルを選ぶのか、王道スタイルのモデルを選ぶのかもこだわりのポイントですね。

  • 同軸(コアキシャル)とセパレート

複数のスピーカーを搭載するモニタースピーカーは、フルレンジな音を出したとき、ツイーターとウーファーの両方から音が出ます。すると音源が2つある、ということになります。一般的なスタイルでは2点から音が出るわけで、高域はちょっと上の方から聞こえる、ということがあったりします。
特に近距離で使うことが多いスピーカーではこのちょっとの違いが定位に影響したりします。そこで出てくるのが「同軸」という考え方です。同軸(コアキシャル)は、ツイーターとウーファーが同じ位置に設置されていて、低域も高域も同じ位置から音が出ます。「点音源」と呼ばれたりもします。同軸スピーカーは定位が分かりやすい一方、ツイーターの周りにウーファーのコーンがある形となるため、きちんと音を聴くことのできる範囲が狭まるという特性もあります。
例えば部屋の中でゆったりとくつろいで音楽を聴くなら、同軸よりも広い範囲で安定した音の出るセパレート型の方が良いのではないかと思います。一方、PCの前でほとんど動かずに作業をするなら同軸モニターの方が向いている(特に定位に気をつかって作業する必要がある)のではないか、と個人的に思います。実際、こういったニアフィールドモニターは上位モデルほど同軸が増えていきます。一方でしっかりと設計、開発されている必要があるため価格が高くなってしまうというのも同軸の欠点の1つです。当然、同軸でなければ絶対にダメ、ということは一切ありませんので、そこも1つのこだわりポイントとして、選ぶ際の参考にするのが良いかと思います。あとフルレンジスピーカーはスピーカーが1つしかないため、自動的に点音源となります。

  • 重さ

モニター自体の重さも、1つのこだわりポイントです。設置場所に制限があるとはいえ、よほど華奢な机の上に置く、といった場合でなければ、本体の重さが問題になることは無いと思います。一方で本体の重さはスピーカーが安定して音を出すために必要な要素でもあります。もちろんちゃんと設計されていることが大前提ですが、重たい方がスピーカーの動きでキャビネット自体が動かないため、安定した音を出せる、ということもできます。スピーカーを持ち運ぶことがある、という場合は、逆に軽さにこだわるのも1つの選び方です。ここも使い方やスタイルに合わせて選ぶこだわりのポイントになってきますね。
 
ということで、今回はモニタースピーカー選びのこだわりポイントを中心に書いてみました。次回から、価格帯別に定番モデルや評判の良いモニタースピーカーを載せていこうと思います。

Part.2に続く
 
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