きになるおもちゃ -ギター・エフェクター・アンプ・DTM関連の情報サイト-

ギター・エフェクター・アンプ・DTM関連の情報サイト


きにおも@Twitter
Facebookアカウント
instagramアカウント
Line@アカウント
きになるおもちゃ@Lineブログ

がっきや速報
楽器店のセール情報や限定特価品をまとめてみます

ボカロ曲

リンク切れ等がございましたら、メールかコメントに書いていただくと助かります



きになるリスト(ニコニコ動画) Youtubeチャンネル Instagram

当サイトの内容を説明文等に使用している楽器店さんがあるようですが、一切関係がありません。

新世代?後継機?発売から2年、“SONY MDR-M1ST”を考える

f:id:toy_love:20210727000354j:plain
新世代のスタジオ標準モニターヘッドホンを目指し、2019年8月に発売されたヘッドフォン、「SONY MDR-M1ST」。

昨今の多彩かつ豊富なヘッドフォン市場における新製品として、これほど“大正義”なヘッドフォンは珍しいです。少なくともヒットは当然、どころか、「今後30年の基準」となるとまで言われる、そんなヘッドフォンとして発売されました。

もちろん、そんな評判になるのは前提があって、それが伝説のモニターヘッドフォン、MDR-CD900STの存在です。

先日、MDR-CD900STの立ち位置を改めて考えてみました。
toy-love.hatenablog.com

今回は、このMDR-M1STがどういうものか考えてみたいと思います。

ではいきましょう。
まずは…まぁあちこちで出尽くしていますが、せっかく手元にあるので外観的なところから。
f:id:toy_love:20210727002118j:plain
SONY MDR-M1STです。スタイルとしてはスタンダードなヘッドフォンという感じ。MDR-CD900STの要素を受け継いでいますが、あまりに定番機種のため“似たスタイル”は数多くあり、もはや一番普通のモニターヘッドフォンの形と言えるほどです。
どれくらい定番かというと、ちょっと似たスタイルのヘッドフォンを挙げてみますね。

Audio Technica ATH-M50xSHURE SRH840Roland RH-300YAMAHA HPH-MT8MACKIE MC-100ADAM Audio STUDIO PRO SP-5ULTRASONE Signature StudioJVC HA-MX100VBEHRINGER HPX6000CLASSIC PRO CPH7000.・・・・・・。
まだまだありますがこの辺にしときましょうか。明らかに同じスタイルを意識して似せたものもあれば、定番の中に自身のデザインを入れようとしたものなどもありますけど、まぁ、同じタイプです。
というか、逆にクラシカルなスタイルすぎて、現行のSONYヘッドフォンの中では珍しいデザインとなっています。
つまり、SONYとしては「あえてCD900STを思わせるクラシカルなデザインにした」ものということになると思いますが、そのスタイルが定着しすぎて、モニターヘッドフォンとしては「スタンダードスタイル」となっているのがなんか面白いです。

f:id:toy_love:20210727003340j:plain
とはいえ細部はさすがに「今」のソニーヘッドフォンです。あとMade in Japanです。

f:id:toy_love:20210727004542j:plain
イヤーカップ部をCD900STとM1STで。「ライン」のところがステッカーになっていて、いらなければ外せるところまで同じです。
CD900STは「DIGITAL」と書かれた赤いラインが特徴。M1STも一見赤ラインに見えるので、後継モデル感がとても強いんですが、このラインはよく見たらオレンジです。
オレンジはSONYのコーポレートカラー、通称“品川オレンジ”。SONYはカメラでもオレンジがとても綺麗に出たりしますね。(ニコンはイエロー、キヤノンはレッド、オリンパスはブルー、ペンタックスはグリーンみたいに、コーポレートカラーを綺麗に出すのはカメラではよくあることなんです。だって自社のイメージカラーがちゃんと撮れないとね・・・w)
それはともかく、オレンジラインが入っているということは、これが今の「SONYの音だ」ということを暗に主張しているように思えます。まぁそれだけ気合い入れて作られたってことではないかと思います。

f:id:toy_love:20210727003413j:plain
イヤーカップ部は90°回して平面的に置くことができるようになっています。

f:id:toy_love:20210727003446j:plain
CD900STが縦方向に180°回せるようにしているのとは対称的な部分。CD900STはおそらくDJ的な使い方だったり、ヴォーカルレコーディングで片耳を跳ね上げることを想定したんだと思いますが、実際に使用される上ではほとんどが跳ね上げるのではなくずらして使っているということから、M1STではこの形にしたものと思われます。
まぁDJならともかく、ヴォーカルレコーディングで片耳跳ね上げるとドライバが外側を向くので、余計な音が入ってしまう可能性がありますからね・・・結局ずらして使うことになるわけです。

一見すると似ているイヤーパッドとドライバ部ですが、実は全く構造は新しくなっています。
f:id:toy_love:20210623004231j:plain
これはCD900STのドライバ部。ドライバ周りのウレタンリングでイヤーパッドのメッシュと間隔を作ったりしていましたが・・・

f:id:toy_love:20210727003940j:plain
M1STではドライバに角度を付け、耳の形に合わせた方向に音が出るようになっています。もちろんウレタンリングみたいな、要交換な消耗品はありません。
CD900STあるあるなんですけど、レコーディング時に耳の手前側を押さえて、ドライバがちょっと後ろを向くようにして音を録ることがあります。
M1STではその角度を最初から付けておくことで、音をより真っ直ぐ届けることができるようになっている、ということですね。先ほどのイヤーカップの動きといい、これらは実際にスタジオで使用しているアーティストからのヒヤリングで取り入れられた構造かと思います。(まぁドライバに角度を付けるのは今の本格的なヘッドフォンでは一般的なスタイルでもあります。)

f:id:toy_love:20210727004233j:plain
そしてケーブルが取り外し可能。ネジでロックするタイプなので、使っていて外れてしまうということもありません。あとケーブル自体も縦に溝が付けられていて絡まりにくい構造。このケーブルのスタイルは、SONYフラッグシップのZ1Rと同じです。つまり、フラッグシップ級のこだわりで「使いやすい」ヘッドフォンであることが考えられている、とも言えるかもしれません。

f:id:toy_love:20210727004450j:plain
CD900STと並べて。900STのケーブルは取り外すことができませんし、ケーブル自体も普通のツルッとしたケーブルです。ふと気付くとねじねじになってたりします。

f:id:toy_love:20210727005315j:plain
ヘッドバンドの長さ調節は片側10段階。CD900STは片側11段階でした。といって別に不便なことはないと思います。

外観はこんな感じでしょうか。重さはCD900STが200g、M1STが215gと少し重くなっていますが、付けている感覚的にはあまり変わりません。側圧はM1STの方が強め。900STの頼りない感じはありませんが、それが好きという人もいると思うので、どちらが良いかはまた別の話ですね。
イヤーパッド自体の付け心地は、個人的にはM1STの方が良いと思います。これも好みがあるところなんですけど、あくまで一般論として、M1STの方が心地良いと思う人の方が多いんじゃないかな、とは思います。この辺はさすがに進化してます。ちなみにM1STのイヤーパッドは立体縫製で、人間工学に基づいて設計されている、ということです。

  • 後継なの?

そもそも論。あらゆるところで、MDR-M1STMDR-CD900STの後継モデルだ、と言われています。
しかし、開発者は「後継モデルではない」と断言しています。
参考インタビュー
cocotame.jp

開発者が言っている以上、これは後継モデルと言うのは間違っていると言って良いと思います。
ただ一方で、SONYスタジオではCD900STが全てM1STに置き換えられたという話があります。そういう意味では「後継モデル」という見方もできるのでは、と思いますよね。
では実際どうなんでしょうか?

  • 世代交代?

M1STは、今のハイレゾ時代に於けるスタンダードとなるべくして作られた次世代機、という言い方をしています。直接的な後継ではなく、今の時代でゼロから考えて作られたものだから、後継モデルではない、ということです。そういう視点で見れば、SONYスタジオでの置き換えは世代交代によるものとも言えます。

では実際どうか。実際に楽曲制作にも使ってみたり、音を聞き比べてみて思うことは、たしかに「後継機」ではない、全く別物であるということです。

ちょっとスペックを比べてみましょうか。

MDR-M1ST

  • インピーダンス:24Ω
  • 音圧感度:103dB/mW
  • 周波数特性:5~80,000Hz(JEITA)
  • 最大入力:1,500mW(IEC(国際電気標準会議)規格による測定値)

MDR-CD900ST

  • インピーダンス:63Ω
  • 音圧感度:106dB
  • 周波数特性:5~30,000Hz
  • 最大入力:1,000mW

スペックに注釈がいろいろあるM1STと、そんなものはないCD900STの違いは時代の違い。それだけスペックが厳格になっている、ということもあると思います。
ヘッドフォンの「音」をスペックから読み取ることはできませんが、何を想定して作られたのか、ということはイメージできます。
まず大きく異なっているのがインピーダンスです。CD900STは63Ωと、実はけっこう高いインピーダンスのモデルです。これはヘッドフォンをつなぐ機材が変化したことを思わせます。CD900STが作られた88~89年頃、レコーディングスタジオでヘッドフォンを出力するのはキューボックスというヘッドフォンアンプが使われていました。というか今でも本格的なスタジオではそうです。
一方、今のDTM環境など、自宅の環境ではオーディオインターフェイスのヘッドフォンアウトが一番良く使われることでしょう。オーディオインターフェイスのヘッドフォンアウトはそれほど出力の高いヘッドフォンアンプではないので、インピーダンスを低くして作られたのではないか、と考えられます。
音圧感度は似た感じですが、CD900STの方が大きな音が出る感じですね。ボリューム調整すればいい、くらいのレベルなのでそこは特に問題にはならないでしょう。
最大入力は1.5倍になっています。これは大きなシグナルにも耐えられるという意味で、技術的な進化も含め、耐久性が高くなっていることが分かります。
そして最大の違いが周波数特性です。

toy-love.hatenablog.com

この記事でも書きましたが、一般的なCD音質は最大で20kHz程度です。これはデジタルのサンプリング定理に基づくもののため、わずかな誤差はあっても変わることはありません。CD900STの周波数特性が30kHzまでとなっているのは、まさにCD音質の音を聞き漏らさないことを前提にしていることが分かります。
一方、「ハイレゾ」音源、および「ハイレゾ対応」と言うためには、倍の40kHzまでの周波数特性が必要となります。
M1STはそれをさらに倍にして80kHzまでカバーしています。(JEITA)と書かれていますが、これは2014年に定義されたハイレゾの規格で、それに合致してなお80kHzという意味です。これが、SONYの、そして開発者の言う「新世代」ということになります。

では実際の音はどうでしょうか。

まず前提として。ヘッドフォンの音への評価は「相対評価」です。例えばいろいろなところにあるM1STのレビューをざっと見てみると「低音が強い」「リスニングにもいける」「リスニングには物足りないがモニターらしい音」「高音が弱い」「上までしっかり出ている」とバラバラです。
これは当然のことで、相対評価だから。しかもこれだけ「大正義」の新作ヘッドフォンなので、様々な人が買って試しているわけで、その「相対」の対称はより多岐にわたります。これが逆に20万円とか30万円とかのヘッドフォンだと、だいたい比較対象も狭まってくるんですけど、3万円くらいの価格帯なのでまたその比較対象もいろいろあるわけですね。
最も多い比較対象は、MDR-CD900STでしょう。ですが、「新世代のスタンダード」として、M1STが初めてのモニターヘッドフォンで、それ以前は普通のイヤフォンや数千円のヘッドフォンだった、という人もいれば、逆に「新世代を試してやろう」と、高級ヘッドフォンをよく知るオーディオマニアが買うこともあるわけです。
CD900STと比べたら「低音が強い」と感じるかもしれませんし、初めてのモニターヘッドフォンなら、「思ったより普通に聴けてリスニングいける」と感じるでしょう。逆にリッチな響きの高級リスニングヘッドフォンに慣れていれば「リスニングには物足りない」となるでしょう。ローがしっかり出るから高音が弱く感じることもあれば、余裕の周波数特性から上までしっかり出るということもあるでしょう。
これがヘッドフォンレビューの面白さでもあり、分かりにくいところでもあります。ヘッドフォンの音の評価とはそういうものだ、ということをまずは前提にしておきます。

今回は比較対象を基本的にCD900STに絞ります。
では、この伝説のMDR-CD900STはどんな特性でしょうか。
音が近くて、鋭い、ちょっとキンキンする、低域が物足りない(これはウレタンリングとかがヘタってる可能性あり)というのは一般的な解釈と言えます。
まず音が近い。これは間違いないと思います。音が鋭くてキンキンする感じも、実際あります・・・が、実はCD900STはミッドが強いヘッドフォンだと思います。
ギターに例えると、「テレキャスター」なのがCD900STです。テレキャスターって鋭いアタックで音が高めなイメージがあるんですが、実際に録音したり歪ませたりすると意外と音はミッド強いんですよね。重心はけっこう下の方にあります。CD900STも似た特性があって、たしかに鋭い音なんですけど、高域がすごい出ているわけではないんです。ただミッドがかなり分厚いので、他のヘッドフォンやスピーカーでは聞こえないような音かぶりのノイズが聞こえたりします。私、実はフラッグシップのZ1R(周波数特性4~120,000Hz!)持ってるんですけど、実際高域のノイズはこのZ1Rでしか聞こえないことがあります。つまり、CD900STの特徴は、音のアタックが鋭く出て、ミッドが厚い、という特性だと思います。

ではM1STはどうでしょうか。
CD900STと比べると、明らかにフラットです。低域もしっかり聞こえます。単純に印象で比較すると、M1STは「低域すごい出る」となるのも分かります。が、よくよく聴くとバランスがちゃんと取れていて、低域が「強い」ヘッドフォンではありません。低域が「ちゃんと出る」ヘッドフォンです。
ミッドは明らかにCD900STが強いです。だから、900STでだけ聞こえた「音かぶりノイズ」は、M1STでは聞こえません(Z1Rでも聞こえません)。
音像はCD900ST、M1ST両者近いですが、CD900STの方が耳元で鳴ってる感じがするので、よりバランスが取れているのはM1STと言えると思います。CD900STの音の近さは、特にヴォーカルレコーディングで威力を発揮しますが、それ以外では近すぎると思います。

M1STは、音がちゃんと細部まで見える近さを保ちながらバランスが取られていて、特性もフラットで、上も下もちゃんと聞こえます。重心はちょい下よりだと思いますが、モニタースピーカーの音にもかなり近づけられていると感じます。

  • M1STで音作りができる?

基本的に、ギターやシンセ、ベース、ドラム等々、音作りはスピーカーで行います。ですが、どうしてもヘッドフォンでやらなきゃならないとなったらM1STは音作りにも「使えなくない」レベルになっていると思います。CD900STは音作りには「全く向いていない」(一部の方しかできない)のとは違う部分です。

  • ミックスまでできる?

CD900STと比べると、音の定位は見やすいですし、音量バランスも取りやすいです。なので、100%これだけで、は厳しいと思いますが、スピーカーと併用してミックスの細部の手直しなどには十分使えると思います。DTMなどで楽曲制作を行う上でのメインヘッドフォンとしては、CD900STよりも使いやすいのは間違いないと思います。

  • CD900STとM1STはどちらが買い?

あくまでアマチュアのDTMや音楽制作という観点からですが、「メインヘッドフォンとして1本だけ」持つなら、M1STかと思います。
一方、モニタースピーカーをちゃんと使っていて、補助としてのヘッドフォンなら「CD900ST」の方が効果的な場合があります。それはノイズチェック。上に書いたとおり、ミッド付近の強力な強さが、他のヘッドフォンでは見つけることができないようなノイズを見つけられるので、そういう補助的な使い方ならCD900STが適しています。
最適解に近いのは「モニタースピーカーを持った上で、両方持つ」だとも思います。モニタースピーカーなしでの楽曲制作は、あくまでもクオリティを求めるなら、そして完パケまで自分でやるならとても厳しいです。そしてノイズチェック的な意味でCD900ST、スタンダードモニターヘッドフォン的な意味でM1STを使い分ける、というのが理想的。
ですが「作曲のみ」(アレンジ程度までは自分でやって、ミックスはMix師や得意な人に任せる)なら、圧倒的にM1STです。音作りも理想はスピーカーですがM1STもけっこういけるので、アレンジまでの作業なら全部これだけで完了させる、ということも十分に出来るヘッドフォンと言えると思います。

というか、それを考えて作られたのがM1STと言えます。CD900STは「レコーディング」、特に「ヴォーカルレコーディング」が焦点にあるであろうことは特性から推測できます。
M1STは、「楽曲制作者」のためのヘッドフォンという感じで、ミックスやマスタリング、つまりサウンドエンジニアではなく、コンポーザーとしての仕事をこなす範囲で使用するのに耐えるヘッドフォンとして作られたのではないか、というのが実際に使ってみての感想です。

ちなみに、リスニング用としても十分使えると思います。もちろん10万円クラス以上の高級ヘッドフォンと比べたら音の質感とかは物足りなさはあると思いますが、同価格帯程度までのヘッドフォンとしては十分に音も良いし、聴きやすいと思います。3万円クラスとしては相当出来が良い、5万円クラスとも渡り合えるヘッドフォンだと思います。もちろん音質には好みがあるので、「M1STの音は好きじゃない」ということもあるとは思います。

ということで、MDR-M1STのレビューも含めつつ、実際に立ち位置を考えてみました。

使い方によっては、CD900STの軽く上を行くヘッドフォンです。が、用途によってはCD900STが必要となることもある、という感じです。ヴォーカル録り、歌ってみたの収録とかならCD900STの方が使いやすいと思います。ミックス前までの楽曲制作ならM1STの方が使いやすいと思います。
また、M1STはある程度「スタンダード」となることは間違いないと言えるヘッドフォンなので、ミックスやマスタリング時の音チェックとして、CD900STに「追加で」持っていて損はないヘッドフォンだと思います。
さすがにSONYが力を入れたモデルだけあって、良いものですよ。

 
Lineアカウントからブログ更新をお知らせ!
がっきや速報
人気blogランキングへ にほんブログ村 音楽ブログへ 友だち追加



にほんブログ村 音楽ブログへ
免責:
紹介している商品のリンク先の販売店、およびメーカーと管理人は関係ありません。
仮に御購入の際になんらかのトラブルがおきましても管理人は責任を負いかねます。
当サイトは楽天アフィリエイト、Amazon.co.jp アソシエイト、Yahoo!アフィリエイト、アクセストレード、A8.net、リンクシェア、Google Adsence、iTunesのリンクを使用しています。
また、当サイトと同じ改造を行って何らかの問題が発生した場合も責任は負いかねます。ご了承ください。
Privacy Policy