「エレキギター」の歴史は、楽器の歴史として見るとまだまだ新しいものです。現在の、一般的な「ギター」は18世紀の後半にスペインで作られたものが19世紀になり世界に広まったものが原型となります。ギターの先祖としてはリュートなどの楽器がありますね。そのため、一般的なギターはスパニッシュギターと呼ばれます。
金属製のギター弦の振動により生じる磁気の振動をコイルで拾い、電磁誘導を起こしてスピーカーに接続するという形のスパニッシュギターを「エレキギター」とするならば、1932年に発売された「Ro-Pat-In Electric Spanish」がその始まりとして知られています。(個人でのギターの改造としてはそれ以前にもあったようです。)Ro-Pat-Inは後にRickenbackerとなります。
ちなみにこのエレクトリック・スパニッシュという言い方はギブソンのESシリーズ・・・ES335とかES355とかですね、あの型番の意味でもあります。
エレキギターが大きな転換点を迎えたのが、1949年にFenderがプロトタイプとして設計し、1950年に発売された“世界初の量産型ソリッドボディエレキギター”、「Broadcaster」(後のTelecaster)の登場。同時期、というかそれ以前からにソリッドボディエレキギターを構想していた当時の全米トップギタリスト、レス・ポール氏のシグネチャーモデルであるGibson Les Paul Modelは1952年に発売・・・・・・と、これ以降エレキギターの歴史はポップミュージックと共に“世界で最も売れる楽器”の1つとして君臨していくことになります。量産型ではなく、単に「発売された」という形としては1948年発売のBigsby=Travis(あのトレモロユニットのビグズビーです)が最初として知られています。もちろんこのギターがフェンダーに影響を与えたことは確かです。またレオ・フェンダーは当時レス・ポールにもギターの制作について打診していたようです。
まぁそのあたりの逸話はいろんなところに出てくるので良いとして、楽器としてはまだまだ新しいものである、ということは分かると思います。
一方、エレキギターの構造は、その頃から大きくは変わっていません。
ですが、そこに新たなものを加えるという試みはこれまでも行われてきました。
1987年にCasioが発表した「DG-20」は、ギターのスタイルをしたシンセサイザー。当時の技術ではこの試みが成功だったかどうかはともかく、全く新しいギターとして考えられたものとして有名です。
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ギターとシンセの融合という意味ではRoland GKピックアップを基本とするギターシンセシステムは現在も多くのギターに内蔵されたりするなど、最も成功したギターシンセです。
また、デジタルモデリングの技術が進んでいくと、ギター1本で様々なギターの音を作るモデリングギターも発売されていきます。最も歴史が有り有名なのはLine6 Variaxシリーズで、2002年に最初のモデルが発売され、その後改良が重ねられています。
デジタルモデリングに対し、アナログ技術とデジタル制御を組み合わせ、多彩なPUの組み合わせやイコライジングで様々なギターサウンドを作ろうとした例もあります。結果としては失敗だったと言えますが(正直価格が高すぎた・・・)、2012年発売のGibson Firebird Xはその最たるものでした。
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ただデジタルの制御は別として、マグネティックとピエゾPUを組み合わせたり、アクティブプリアンプやEQを入れて多彩なギターサウンドを作るという発想自体は多くのコンポーネント系ギターなどで行われているスタイルですね。
ギターシンセで人気のRoland/BOSSも、モデリングギターを作っていました。Fenderと提携して2012年に発売した「VG Stratocaster」も有名なモデルでした。
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2016年にはVoxがStarstreamシリーズを発売しています。
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Starstreamは現在もラインナップとして掲載されていますが、ギターの方は店頭には出ていない感じです。生産完了かどうかは不明。ベースはまだ出ています。
異色モノとしては、ギターのチューニングを変える・・・その、ギター本体の物理的なチューニングではなく、ピッチ補正技術によって出力される音のピッチを補正し、通常のギターではあり得ない完璧なチューニングや、ペグに触れずにチューニングを変更できるスタイルを持った2012年発売のPeavey AT-200も話題となりました。
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こういった、ギターに新たな技術を組み合わせて、従来のギターを越えたギターを作る、という発想はこれまでもあり、実際に製品化もされています。
そして今、現在も新しいスタイルの「エレキギター」が発売されています。BOSS EURUS・Line6 Variax・Mooer GTRS。この3つはどういうものか、改めて比べてみましょう。
Line6 Variax Standard
YAMAHA Pacificaシリーズをベースとしたモデリングギターです。
アルダーボディ、ボルトオンソリッドメイプルネック、エボニー指板。スケールは648mmのロングスケールで、ミディアム22F仕様。
アルニコVマグネットのクラシックな3シングルPUとL. R. Baggs Radiance Hexピエゾピックアップ・システムを内蔵しています。ブリッジはカスタムデザイン・シンクロナイズド・トレモロ
そして、Variax HDモデリングによりテレキャス、ストラト、レスポール、Firebird、グレッチ6120、リッケン370、ES-335、ES-175、スーパー400といったエレキギター/ジャズギターに加え、マーティンD-28、D12-28、O-18、ギルドF212、ギブソンJ-200といったアコースティック/12弦モデルのサウンドもカバーしています。
単にモデリングしたサウンドだけでなく、本体のピックアップで拾った音とモデリングサウンドをミックスさせることも可能。
また、ギター本体のペグを回さずにチューニングを変更可能。さらに各ピックアップ位置の擬似的にな微調整やサウンド調整、カスタムチューニングなどをVariax Workbench HDソフトで調整し、プリセットしておくことができます。
ローズ指板のGTRS S800とローステッドメイプル指板のergtrss801.html%3Fsc_i%3Dshp_pc_search_itemlist_shsrg_img%26ea%3D01" rel="nofollow">GTRS S801、オプションのワイヤレスフットスイッチGWF4をラインナップしています。
バスウッドボディにモダンCシェイプのローステッドカナディアンハードメイプルネック、ジャンボ22F仕様。幅広く音を作る事の出来るGTRS SC-1N (Neck) / SC-1M(Middle)/ HM-1B(Bridge)のSSH配列のピックアップを搭載し、1Vol、1Tone、5Wayセレクターと2点支持のシンクロナイズドトレモロタイプとなっています。ここまでは普通のギター。内部にリチウムイオンバッテリーを用いたGTRSインテリジェントプロセッサシステムを搭載し、黒いスーパーノブを使って、様々なサウンドのプリセットをロードしたり調整が可能。
BluetoothでiOS/Androidアプリと連携し、アプリ上からギターシミュレーションx9、ギターエフェクトx126(アンプモデル含む)、ドラムマシンx40、メトロノームx10、80秒ルーパーを操作してプリセットしたりチューナーとして使えます。アウトプットは通常のギターのアウトプットだけでなくヘッドフォンアウトとして使うこともでき、USB-C端子から内部バッテリーの充電や、ラインレコーディングも可能。
バッテリーは連続駆動15時間となっていて、電池が切れたりGTRSプロセッサを使わなければ普通のギターとして使うことができます。ワイヤレスフットスイッチを使えばより多彩なプリセット選択やルーパー、チューナーの操作などを行う事も可能です。
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BOSS EURUS GS-1
ギターシンセで定評のあるRoland/BOSSによる、「シンセギター」ですね。スタンダードなハイクオリティギターとしての一面と、ギター型シンセとしての一面があり、それらを切り替えて使うことができるモデルです。
アルダーボディにCシェイプメイプルネック、インディアンローズ指板。指板はコンパウンドラディアスで、ミディアムジャンボ24Fとなっています。
ピックアップは専用のEURUS Humbuckerのセット。コントロールはMaster Volume、Guitar Tone、Synth CTL、Synch Memory、5WayスイッチとModeスイッチ、Bluetoothボタン。
ブリッジはGotoh 510T-FE1のシンクロナイズドトレモロで、ペグはGotoh SG381-MGT-07-L6ロックペグ。
ギターとシンセ用のアウトプットがあります。
電源とUSB端子があり、シンセはアダプターまたは単3電池4本で駆動可能。USBはファームウェアアップデートができます。
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ギターサウンドのモデリングに特化し、本体PUの構成やアプリによる設定により様々な「ギタートーン」を生み出せるVariax、ギターのシミュレートだけでなくマルチエフェクター自体を中に入れてしまったようなGTRS、そしてギターとシンセの新たな融合、EURUS。
こういうモデルを見ていると、エレキギターに新たな形が生まれるかもしれない、そんな楽しさがありますね。
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