ミニサイズのエフェクターが、世界的にスタンダードになりつつあると言って良いと思います。もちろん、これまでのMXRサイズやBOSSサイズのペダルが廃れることはありませんが、新たな定番の1つとして、ミニサイズペダルは明らかに多くなってきています。
ミニサイズペダルが一般的に知られるようになったのは、おそらくKeeley True-Bypass Looperの発売からです。もちろんそれ以前にもミニサイズペダルは作られていましたが、世界的に認知されたのはこのペダルの存在でしょう。
それ以降、ABボックスや1Loopボックスを中心に展開されてきたミニサイズペダルが、少しずつエフェクターも増え始めた所に、2009年、1つの転機が訪れます。それがLovepedal Amp50(レビュー)をはじめとするLovepedal Micro SeriesとXotic EP Booster、そして続けて2010年にはMalekko Omicronシリーズというエフェクターが一気に発売。これらのUSAブランドの力により、世界的にミニサイズのエフェクターという存在がさらに一般化します。
そこからじわじわと、ミニサイズペダルを製作するハンドメイド系ブランドも増え始め、2012年、Mooerが多数の低価格ミニサイズペダルを発売。もはやミニサイズペダルという存在は強固な物となったと言って良い状況が生まれました。最近ではHotoneのような、さらに小さなペダルも生まれています。
ミニサイズペダルは、多くが「Hammond 1590A」という筐体、またはその筐体を元にした似たスタイルの筐体を使って作られています。この筐体は、一般的にフットスイッチとIN/OUTジャックを設置すると、9V電池を入れるスペースがありません。かつて、現在はKatanasoundとして活動するmt'Labが、ジャックでなくプラグを使い、電池駆動を実現させた「μFace」というペダル(マルハチBlogさんのレビュー)を作っていたこともありましたが、そういう無理をしないと、9V電池駆動は難しいです。
そのため、多くのミニサイズペダルは電池駆動不可。電池が入るのは少し大きなオリジナルケースを使う場合のみ、というのが現在の一般的なミニサイズペダルの状態です。そんなオリジナルケースを使った電池駆動可能なミニサイズブースターといえば、前述のXotic EP Booster、そして先日レビューした、One Control Granith Grey Boosterです。
Granith Grey Boosterは、Mad ProfessorやBearfoot、そしてBJFEでおなじみのBJFの設計した回路を用いたクリーンブーストペダル。音色に干渉をほとんどしない、ナチュラルなブーストが特徴のペダルです。
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D.A-projectのペダルは、基本的に楽器店には並びません。唯一島村楽器静岡パルコ店にのみ置かれているようですが、あとはネットでの販売のみとなっています。
そのためあまり知られていないブランドではあるんですが、ニコニコ動画での人気ゲーム実況プレイヤーで音楽活動もしているM.S.S Projectのメンバーが使用するなど、特にネット上のサブカル系を中心に人気のブランドです。D.A-project自体も特にTwitterでの発信が非常に多く、その内容があまりにも赤裸々なためいろいろあったりすることもあるようですが、日本のエフェクターブランドの中では突出してTwitterでの活動が活発なブランドと言っても良いかと思います。
似たコンセプトを持つ2つのミニサイズブースター。どちらも日本のブランドが発売したこともあり、ネット上、特にTwitter上で、この2台はどう違うのかという疑問が多く出ていました。
あまりに多くの方がその疑問を持っていたので、そのうち誰かが比べるんじゃね?くらいの気持ちで、Granith Grey Boosterのレビューでは「電池の入るミニサイズブースター」として、Xotic EP Boosterと比較したわけなんですが・・・今のところ、おそらくほぼ、この2台の比較は無いと思います。(Twitterでのレビューは少し見かけました。)
そうなってくると逆にきになってきて、じゃあ、自分でやるしかないか、と思ったのが今年の1月頃。まずはD.A-Boosterを入手するところから始めなければなりません。普通に買っても良かったんですが、けっこうな待ち時間があるようでどうしようかと考えているうちに、先日とうとうUsed品を発見したのでそれを入手しました。今回はその比較となります。
ちなみにD.A-Boosterにはいくつかの種類がありますが、今回比較するのはトゥルーバイパスでブルーLEDのモデルです。多分一番定番なモデルではないかと思います。
では、長くなりましたが、いってみましょう!
D.A-project D.A-Booster / One Control Granith Grey Booster
こちらが、その2台のブースターです。どちらもミニサイズに1ノブ、トゥルーバイパスのシンプルなブーストペダルです。以下、基本的にD.A-Boosterは「DA」、Granith Grey Boosterは「GGB」と書きます。GGBの方は、以前のレビューでさんざん写真を載せましたので、今回はDAの写真がメインとなります。
DAはHammond 1590A筐体を用いた正統派ハンドメイドミニサイズペダル、GGBはオリジナルのアルミ削りだし筐体を用いたミニサイズペダルです。GGBの方が、長さが長いです。
DAならではのこだわりとしては、筐体の上にアクリル板(?)を載せ、LEDをその中で光らせることにより、筐体の周囲と、板に彫られたブランド名を光らせるという演出。Tubeman Mk2などにも見られる手法ですが、良い雰囲気になります。ちなみにフットスイッチのワッシャも蓄光タイプを使っていたり、かなり光ることにこだわりを持っていることが分かります。
内部はこんな感じです。
GGBとの比較。オリジナル筐体のGGBは、9V電池を内部に入れて電池駆動も可能です。
細部の様子。基板はほとんどがモールドされていて分かりませんが、ちょっとだけDale抵抗が見えていたり、良さそうなコンポーネンツを使っていることが分かります。
普段はこのように、シリアルナンバーを書いた紙で絶縁されています。
裏蓋には製作日と、製作者のサインが入っています。
写真はこんな感じで。ではレビューいってみましょう。
- 操作性
この2機種について、操作性はどちらも言うまでも無いという感じだと思いますが・・・特に問題ありません。違いとしては、DAの方がペダル奥にアダプタジャックがあり、その代わり電池駆動は不可。GGBはインプット脇にアダプタジャックがあり、電池駆動も可能、というくらいの違いです。どちらが使いやすいかはそれぞれかと思います。
- サウンドレポート
では、音について。まずはいくつかサンプルを載せてみます。
サンプルサウンド1(Unity Gain)
OFF時と全く同じ音量に設定してのサウンドです。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
D.A-Booster:Minimum
Granith Grey Booster:12:00
クリーン→DA→クリーン→GGB
サンプルサウンド2(Medium Boost)
中間的なブースト設定でのサウンドです。マイクのクリップを避けるため、アンプの音量を下げています。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
D.A-Booster:10:00
Granith Grey Booster:1:00
クリーン→DA→GGB
サンプルサウンド3(Max Clean Boost)
両者の「クリーンブースト」の最大設定です。アンプの音量はサンプル2と同様、音量を下げています。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
D.A-Booster:12:00
Granith Grey Booster:Max
クリーン→DA→GGB
もう少しサンプルサウンドもありますが、ひとまずここまでとしましょう。
ここまでは、DAとGGB、それぞれの「クリーンブースト」の違いを見てきました。まず、DAの方ですが、ノブが最小でユニティゲイン、12時で最大のクリーンブーストとなります。音は後で載せますが、それ以上の設定では軽い歪みが得られるようになっています。GGBは、12時あたりでユニティゲインとなり、最大までクリーンブーストです。ノブが最小から12時までは、ヴォリュームカットができるようになっています。
これはそれぞれの設計思想の違いと言えますが、どちらもノブの可変幅の半分でクリーンブーストができるようになっているというのはおもしろい共通点だと思います。
音色に関して言うと、聴いての通り、両者ほとんど音は変わりません。あえて違いを言えば、DAはハイミッド〜プレゼンスが強めに出る、いわゆるバッファの延長線上のようなサウンドが特徴です。一方でGGBはローミッド〜ローエンドあたりが強めになり、ハイ側はレンジを広げつつ、ハイを少し抑えたような独特の音色です。どちらも非常に微細な違いではあるんですが、この違いが結果として、DAは元気のある音、GGBは上品な音として出力されていると思います。
原音と全く同じユニティゲインのサウンドが作れるのはDAで、GGBはほんのすこしですがハイエンド部で音の違いが感じられます。といって、サンプル1のような弾き方ではまずわからないと思います。アタックした直後にONにすれば分かるんですが、それ以外では分かりません。アタック直後はハイが最も強くなる状態ですので、そこでハイを少し抑えるようなGGBの特性が出ているんだと思います。
一方、ブースト量を上げていくと、逆にGGBの方が原音に近い音色となるように感じます。DAは音が元気になっていく感じです。どちらが良いかはそれぞれだと思いますが、どちらにしてもほとんど違いはないくらいと言えるかも知れません。
サンプル3のフルクリーンブーストでは、それぞれの音色の違いが最も大きくなる設定です。聴覚上の音量的にはほとんど違いはないと思いますが、波形にするとGGBの方が音量レベルは大きいです。これはローミッドあたりを中心に音がでている特性によるものだと思います。
では、それぞれクリーンブースト「ではない」領域の音を載せてみます。
サンプルサウンド4(D.A-Booster Full Gain w/ GGB Max Boost)
D.A-Boosterの歪みです。後半はそれをさらにGGBでブーストしています。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
D.A-Booster:Max
Granith Grey Booster:Max
クリーン→DA→GGB+DA(GGBが前段)
サンプルサウンド5(GGB Volume Cut w/ Dunlop Fuzz Face Mini Ge.)
Dunlop Fuzz Face Miniを使って、GGBのヴォリュームカットの効果を見てみました
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
Granith Grey Booster:8:00
Fuzz Face Mini:Volume:2:00、Fuzz:max
Fuzz Face Mini→GGB+Fuzz Face Mini(GGBが前段)
こんな感じです。サンプル4は、DAの歪みです。なお、チューブアンプですのでアンプの歪みもちょっと混ざっています。DAは、12時以降の設定ではこのように、ハイがチリチリとするようなジャキジャキ系の歪みが少しずつ加わっていきます。前段でブーストをかければ、音量と共にゲインも一気にあがります。これはこれで、面白い使い方ができるんじゃないかと思います。
サンプル5は、DA関係ないですがブースターだとその効果がわかりにくいと思いましたので、Dunlop FFM2 Fuzz Face Mini Germanium(レビュー)を使いました。
D.A-BoosterとGranith Grey Booster。どちらも原音に忠実なミニサイズのブーストペダルです。それぞれ思想の違い、機能や音色の違いを見てきましたが、はっきり言ってどちらもとても良いペダルだと思います。
あとは電池駆動の有無やアダプターの接続位置、ブーストサウンドの違いやノブに充てられた機能の違いなどから、それぞれの使い方に合う方を選択すると良いのではないかと思います。
D.A-Boosterサンプルムービー
D.A-Boosterサンプルムービー2
D.A-Boosterサンプルムービー3
Granith Grey Boosterサンプルムービー
Granith Grey Boosterサンプルムービー2
Granith Grey Boosterサンプルムービー3
One Control ( ワンコントロール ) / Granith Grey Booster 【BJF、ビヨン・ユールとのコラボ・... |
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