手頃な価格ながらハイクオリティなエフェクターをラインナップする、人気の高い日本のエフェクターブランド「Leqtique」。Shun Nokina Designとしても活動するビルダー、Shun Nokina氏によるエフェクターブランドで、日本全国から世界にまで流通させるエフェクターをハンドメイドで製作し、手頃な価格で抑えつつパーツ類には圧倒的なこだわりを見せるという、非常に困難なことを実現しているブランドです。
そんなLeqtiqueが、今年発売した新しいオーバードライブペダル、「Redemptionist」は、同時にShun Nokina Designでも同名でラインナップされているオーバードライブです。
これら2機種にはどのような違いがあるのか。早速レビューしてみたいと思います!
【エフェクター】《レクティーク》Leqtique Redemptionist 《エフェクター/ディストーション》... |
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Leqtique Redemptionist
まずは新しく発売された、Leqtiqueバージョンから。MXRサイズの筐体に、3つのノブと1つの小さなノブを搭載。Shun Nokina Design(SND)のモデルをベースに改良を重ね、完成したのがこのペダルということですね。独特のSwirl塗装です。多くのSwirlと違い、金属的な光沢が残るような塗装です。
各コントロールは、3つのノブが左から順にVolume、Treble、Gain。そしてTrebleノブの脇にある小さなノブがLow-Cutです。SNDバージョンと同じコントロール構成となっています。
スタンダードなMXR系筐体に見えますが、オリジナルのアルミ削り出し筐体を使用しています。DCジャックはインプット脇にあります。
裏蓋を開けると、アルミ削り出し筐体であることがよく分かります。裏蓋の内部には、いろいろとサインが書かれています。
内部の様子。ユニバーサル基板に手作業でパーツを組み込んでいます。使われている各パーツも、上質なものにこだわっているのがよく分かります。
CA3240EZという見慣れないOpamp。大きなコンデンサやクリッピングと思われるLED、カーボンコンポジット抵抗やDale抵抗など、どのパーツにも手を抜いていないのが分かります。
フットスイッチの配線。チューブを通して各部が保護されています。細かいですが、これも手作業ですね。この価格帯で、楽器店で売られているペダルではそうそう見ることができないと思います。
電池スナップまでこだわりがあります。配線も太いです。
Shun Nokina Design Redemptionist
続いてSNDバージョンの方を。現在、Redemptionistは「2nd Era」というモデルが発売されています。こちらは回路など内部にそれまでのモデルとは違いはありませんが、初期モデルはShun Nokina氏本人が組込、製作を行っていたのに対し、こちらはKohei Murakami氏など別のビルダーが製作を行うようになったというだけの違いです。
今回レビューするモデルは、初期のモデルです。2nd Eraになる前から、SNDのRedemptionistもアルミ削り出し筐体になっていますが、今回のモデルはそれより前の、ダイキャスト筐体で作られていたモデルです。機能などに違いはありませんが、現行品とはパーツが一部違っている可能性はあると思いますので、その点はご了承ください。
見ての通りのミニサイズ筐体。DAとGGBのブースター比較レビューでも書きましたが、現在はミニサイズペダルも一般的になっています。Shun Nokina Designも、早い時期からミニサイズペダルを製作していたブランドの1つですね。
コントロールノブは4つ。上段左からVolume、Gain、下段左からTreble、Low-Cutとなります。Leqtiqueバージョンとコントロール構成は同じです。
このペダル、面白いのがフットスイッチ脇にアダプタージャックがあり、ノブの脇にインプット、逆側にアウトプットがあるという構造になっている点です。また、フットスイッチもかなり手前に配置されています。これにより、ペダルボードに並べた際、フットスイッチを出来る限り近くに持ってくることができます。
裏蓋を開けたところです。ダイキャスト筐体というのが分かると思います。
さて、内部ですが・・・見ての通り、凄まじい作りになっているのが分かります。単5サイズの12Vアルカリ電池をセットすることで、電池駆動も実現しています。これをEBSSシステムと言うようですね。9V電池と比べて場所はとりませんが、その分どうしても駆動時間が限定されるため、ライブなどでアダプタが抜けてしまった時にもそのまま駆動できるような、緊急的なシステムです。
どうなっているのか理解できないほど詰め込まれた内部。基板を使って組み込まれているようですが、上に載ったパーツで基板が見えません。Opampは丁寧に削られているので、何が使われているか定かではありません。他にトランジスタや様々なコンデンサ、カーボンコンポジット抵抗などが見えます。Leqtiqueとの違いとして、少なくとも見える範囲で、ですが、クリッピングと思われるLEDが2つあります。Leqtiqueは1つのようでしたので、このあたりに違いがあるのかもしれません。
EBSSシステム。プラスチックの電池ボックスを使うことで絶縁をしながら省スペースに電池を収めています。
フットスイッチ部。筐体の側面に張り付くほどギリギリに収められています。この状態でさらに配線にもこだわっているんですから意味が分からないくらいです。フットスイッチ自体にも、ON/OFF時の感触など、こだわりがあるそうです。そもそもこの内部に入るフットスイッチも限られてきそうですね。
LeqtiqueとSND。どちらも恐ろしい作りです。Leqtiqueは価格という足かせをあえて設けることでこういう作りになっているのではないかと思いました。それでもとんでもないんですが、SNDの方は、さらに完璧を求めたらこうなった、みたいな作りですね。
また、両者に共通することですが、あえて弱い塗装を使うことで、使っているうちに「味」が出て来るのも特徴です。けっこうあちこち塗装が剥げているのはそのためです。
では、写真はこんな感じで、レビューいってみましょう!
- 操作性
まず操作性についてです。それぞれ、ノブにラベルがついていないので、一見してどれがどれ、とはすぐに分からないですが、音を出せばある程度は分かると思います。特にVolumeとGainはスタンダードな位置にあるので、馴れていれば間違えないでしょう。
Leqtiqueの方は、他のノブもどちらがどちらか、一目で分かりますが、SNDは触ってみないと分からないかも知れません。特にTrebleコントロールはあえて狭めに作られているため、知らなければちょっと戸惑うかも知れませんね。
ただ、各ノブの動かしやすさ、特にLow-Cutについては、見ての通りかもしれませんがSNDの方が操作しやすいです。Leqtiqueの小さなノブは、例えば間違えて蹴っ飛ばしてしまう心配はほとんどありませんが、今どこを指しているのかが分かりにくいです。とはいえ、このノブはそれほど頻繁に変えるものではないと思いますので、その点も考えた上で、この形を採用したのかな、とは思いました。
- サウンドレポート
では、音についてです。まずはそれぞれのサンプルから。
サンプルサウンド1(Medium Gain / Response)
基本的に各ノブを12時にしてのセッティング。音量のみ合わせています。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
Leqtique:Volume:9:00、Treble:12:00、Gain:12:00、Low-Cut:12:00
SND:Volume:12:00、Treble:12:00、Gain:12:00、Low-Cut:12:00
Leqtique(ギターヴォリュームフル→7→フル)→SND(ギターヴォリュームフル→7→フル)
サンプルサウンド2(High Gain)
サンプル1の状態から、ゲインのみをフルアップさせたセッティングです。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
Leqtique:Volume:9:00、Treble:12:00、Gain:Max、Low-Cut:12:00
SND:Volume:12:00、Treble:12:00、Gain:Max、Low-Cut:12:00
Leqtique→SND
サンプルサウンド3(Low Gain / Treble Full)
ゲインを下げ、TrebleとLow-Cutをフルアップさせ、ハイを強く、ローを弱くしたセッティングです。
(聴けない場合はこちら)
- 録音環境
ギター:Fender USA American VIntage 57 Stratocaster リアPU
アンプ:Koch Classic SE C-SE6C クリーンセッティング
Leqtique:Volume:10:00、Treble:Max、Gain:9:00、Low-Cut:Max
SND:Volume:1:00、Treble:Max、Gain:9:00、Low-Cut:Max
Leqtique→SND
音はこんな感じです。正直、ペダルが優秀すぎて、これだけで十分音の違いが分かると思います。
まずサンプル1ですが、各ノブを12時にしたセッティングです。LeqtiqueはSNDよりも音量が上げられているので、そこだけ合わせて設定しました。Redemptionistの基本的な音色が分かると思います。ギターやアンプの音色を出しながら、厚く、マイルドで柔らかに、スムーズながらハイレスポンスな音色がこのペダルの特徴ですね。ギターヴォリュームへのレスポンスも高きのが分かると思います。
2台の比較という意味では、基本的な音色はほぼ変わらず、若干SNDの方がローミッド強めかな、という感じです。レスポンスはSNDの方が良いと思います。ヴォリュームを絞った時のクリーンサウンドが、より「クリーンな」クリーンサウンドとなっていますね。
サンプル2では、そのままゲインを最大にしてみました。こうすると、両者の最大ゲインはそこまで違わないです。相変わらずSNDの方がローミッドが強めですね。Leqtiqueはトレブルが広げられているんですが、このセッティングではほとんど変わらないです。ローエンドも、SNDの方が太く出ていると思います。そして、どちらもディストーション的な音ではないんですよね。ディストーションペダル特有のミュートでの音のキレというか、鋭さはあまりなく、オーバードライブならではのやわらかさがあります。サンプルではコードバッキングを弾いていますが、もっとテクニカルなリードなどにはさらに最適なペダルと言えます。特にレガートなどのプレイスタイルには大ハマリするペダルですね。
そしてサンプル3。これが最も音の違いが出ています。Leqtiqueモデルは前述の通り、トレブルが大きく拡大されています。SNDのTrebleコントロールは、ほとんど効きが分からないほど微調整なノブなんですが、Leqtiqueはしっかり、トーンコントロール的に使えます。このサンプルでは、あえてTrebleとLow-Cutを最大(Low-Cutは右回りでローがカットされます。)にしての音色を録りました。通常だとここまでハイを強くすることは、特にストラトでは無いと思いますが、結果としてLeqtiqueとSNDの音の違いが明確に出ましたね。
ローカットに関しては、最もカットした状態でこの音なので、両者に差はほぼありません。が、Trebleの出方が圧倒的に違います。Leqtiqueは、このセッティングだとハイが強すぎると感じるほどトレブルが出ていますが、SNDの方は、普通のローゲインオーバードライブの音、と言っても良いくらいな感じですね。また、その結果としてLeqtiqueの方が、このセッティングではレスポンスが高くなっています。トレブルは特に減衰が早いためだと思います。別の見方をすれば、SNDの方がこのセッティングでサステインが長いとも言えます。減衰しやすいハイがもともと、Leqtiqueよりも出ていないためです。
両者、Redemptionistというペダルに共通していることなんですが、とにかくものすごく使いやすいです。メタリックなバッキングには向いていませんが、ポップスやロック、パンクなどは余裕。メタルもリードならむしろ大得意というペダルです。歪みの質はきめ細かく、音全体が綺麗に歪みます。そして何より、歪み全体にあるバランス感覚がものすごいです。そして、これだけスムーズな歪みなのにレスポンスが高いこと。スムーズな歪みは、基本的にコンプレッションが高いことを意味していますので、それでこのレスポンスは驚異的と言えます。
コンプレッションで言えば、SNDの方がよりコンプ感が強く、Leqtiqueの方が、いわゆるオープンな音色です。どちらも非常に素晴らしいですが、あえて言うとハムバッカーならLeqtique、シングルコイルならSNDの方が向いているかも知れないと思います。そのあたりはそれぞれですけど。
あとは、こういうサンプルサウンドだけではどうしても表せない所なんですが・・・音色そのものの持つ質感、これはさすがにSNDの方がより上質というか、高級感があります。特にゲインを上げたままギターのヴォリュームを絞った時の立体感などはその違いが出やすいところです。一方で、作ることの出来る音の幅広さは明らかにLeqtiqueです。Trebleコントロールの可変域、Volumeの増大が最も大きな要因ですが、そもそもコンプレッションが軽めなため、より高いゲインにしても音がはっきりとしているところもあるかも知れません。それでゲインは十分に稼げますし。
というわけで、Leqtique Redemptionist、Shun Nokina Design Redemptionistのレビューでした。
本当にすごいペダルです。ある意味で、音のバランスが良すぎて薄味に感じるかも知れませんが、それでも、1つ手元にあると歪みの基本として使えるような扱いやすさがあります。これほどのペダルは、なかなか無いですね。内部パーツなどへのこだわりも凄まじいですし。
Leqtiqueバージョンのサンプルムービー
SNDバージョン(初期)のサンプルムービー
SNDバージョン(2nd Era)のサンプルムービー
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