ハンドメイドエフェクターがブティックと呼ばれる前から個人でエフェクターを制作し、アンプライクという言葉が一般化する前からダイナミクスを重視したハイレスポンスなペダルをラインナップしてきたブランド、BJFE。
ハンドメイドなエフェクターブランドの老舗、大御所、権威的な風格を持つBJFEですが、実はその名が世界に広まったのはインターネットの存在が欠かせないものだったりもします。
もちろん今では老舗の風格があり、長年にわたりエフェクターを制作しているBJFEですが、「老舗のハンドメイドエフェクターブランド」の中では比較的新しいブランドでもあります。新しい老舗ってのも変な話ですけどw
1970年代から今でもハンドメイドエフェクターブランドの形を崩していない希有なブランド、Crowther Audioを別格とすれば、現在の「ハンドメイドエフェクターブランド」を築いた多くのブランドは90年代にその端を発します。
Way Huge、Fulltone、Z.Vex、そしてKLON。
どれも90年代半ばごろまでにハンドメイドエフェクターを制作し、大量生産品とのサウンドクオリティの違いから、“こだわりの“ミュージシャンやプレイヤーに愛され、大きくなってきました。
BJFEの創業は2000年。上記の第1世代ともいえるエフェクターブランドと比べると、少し遅れてのスタートとなっています。ちなみにKeeleyが2001年なので同時期という感じですね。
そして、これらの多くのブランドと比べてBJFEが異質なのは、上記のブランドは全て…KLONでさえ、大量生産とまではいかなくとも、生産効率を上げる方向に梶を切っているのに対し、未だに初期のころと変わらない手作業のスタイルを貫いているところでしょうか。
なぜその違いが出ているのか。それは販路や開発のスピード(BJFEの開発スピードはすさまじいらしい)の違いもあるかもしれません。また、BJFEというブランド自体が、インターネットのフォーラムから大きくなったことも大いにあります。主に楽器店や代理店向けの製品を作るなら、仕様を安定させ、モデル名を決めて販売する形が理に適っています。Amazonへの出品ではUPCやEANなどのコードが必須ですし、仕様を変える度にそれらが変わるのは大変です。
一方、BJFEはフォーラム上での意見を取り入れたり、逆に教えたりしながらペダルを改良したり、カスタムモデルを制作したりしてきました。その流れから、現在も細かく仕様を変えたり、モデル名を変更したりする形が定着したのかもしれません。
現在、エフェクターブランドはSNSを中心にユーザーと直接やりとりしたりすることも珍しくありませんが、BJFEは実はその走り…SNSではなくフォーラム、つまり「掲示板」の時代ですが、それを早くから行っていたブランドでもあるわけですね。
そもそも「BJFE」とはどういう意味なのか。これは「Björn Juhl Förstärkarelektronik」の頭文字です。スウェーデン語ですね。読めません。
Björn JuhlがBJFEの主催者。ビヨン・ユールだったりビョルン・ユールだったり。読み方がいろいろあります。で「Förstärkarelektronik」は英語にするとAmplifier Electronics。なので「BJF」というとBjörn Juhlの作るアンプ、みたいなそんな意味になる感じです。複数の単語が1つの単語になって長ーい言葉になっていくのは北欧圏やドイツ語などの特徴でもあります。
よく知られた話でもありますが、BJFEはもともとアンプリペア工房としてスウェーデンに開業しました。だから「アンプエレクトロニクス」なんですね。開業は1999年。会社化したのが2000年です。なので設立は2000年となります。
Björn Juhl(以下BJF)のインタビューなどを読むと、小さな頃から音楽や電気工学が好きだったということが分かります。
初めてエレキギターを買ったとき、アンプを買うお金がなかったので自宅のラジオを改造してアンプにした、という話があったり、その後ストックホルムで最も古い楽器店の1つでギターテクニシャンとして働き、店内のギターセットアップを行ったり。
そしてElectro-Harmonix Screaming Bird(現在のものではなく、プラグが筐体から突き出た最初期のもの)を購入し、使っていたものの、あまりに故障が続き、それを修理していくうちに電子機器の修理に興味が出てきた、ということがあったりします。
そして図書館に通い、ギターや電子機器、アンプに関する書籍を全て読み、1981年に自分のためのエフェクターを作り始めます。
インターネットがまだ軍事用で公開されていない時代です。スウェーデンで音楽や電子楽器に興味を持つ人達が集まるようになり、そこにBJFもいました。また楽器店に勤めている時には、ストックホルムでエレキギター関連の電子機器に関わったほとんどの人と会ったりしています。
そして99年にオープンしたBJFのアンプリペアショップは「何でも直すことができる」として評判となり、またエフェクターの制作も始めます。
BJFEの名前(BJFörstärkarelektronik名義ですが)が付いた最初のペダルはトレモロペダルで、これが初めて自分用ではなくギタリストのために制作されたエフェクターでした。
2000年、ストックホルムのギターショウにFUZZ1というエフェクターを出展し、その高いレスポンスが評判になります。それが後にBaby Blue Overdriveになるペダルでした。
面白い逸話としては、このモデル名に関するものがあります。BJFEペダルの特徴として、「色の名前」+「エフェクト名」の法則があります。
これは、BJFがエフェクターの名前に悩んでいたとき、その筐体(ベイビーブルーの色)を見た妻が「Baby Blue Overdrive」だと言ったことが始まりだと言います。
スウェーデンという英語圏ではない国で、世界中で販売できる名前をどのように付けるか悩んでいたということですが、筐体の色がベイビーブルーだから、誰もこれが「Baby Blue Overdrive」であることを否定できない、という理由を語っています。冗談かもですが。
そこから、モデル名の法則が始まりました。一部の例外を除き、BJFEペダルはほとんどがその形となっています。モデル名として付けられる色はBJFが音を聴いてイメージした色。それが基本となりますが、全てではなく、そこから派生した別カラーのカスタムモデルなどはその色の名前に変わったりします。
また、先に筐体の色があってそこからイメージした名前が付けられることもあるようです。
だいたいインタビューで語られることはこんな感じでしょうか。
その後筐体の塗装をDonnerbox(Bearfootのドン・ラスク氏)が行うようになりますが、現在はまたBJFにて行われています。2000年代にはタハラ楽器扱いで日本にも入って来ていました。
BJFEペダルは塗装された筐体に手書きでモデル名が記載されるスタイルで、今でも基本的に少量生産で製作されていますが、大量生産のエフェクターの設計も手がけています。
初期のMad Professorの回路設計をしていたのはもちろんですし、前述のBearfootも全てBJFの回路です。現在はOne Controlのエフェクター設計をしていることも有名ですね。
ですが、本家BJFEペダル自体はやはり全て手作業で少量生産されています。そして、(かつてのLovepedalがそうだったように)頻繁に仕様変更が繰り返され、カスタムモデルが作られています。その結果、膨大な派生モデルがあったり時期により仕様が異なったりすることもよくあるのがBJFEペダルです。
2014年、BJFEが正規で日本に再上陸しました。
toy-love.hatenablog.com
この記事で、基本的にBJFEペダルについては細かく載せません、と書いています。
これは少量生産のためここに載せても買えるとは限らないし、また以前日本でも販売されていたモデルを再度載せてもしょうがない、さらに派生モデルが多すぎて追い切れないということもあり、基本的にBJFEについてはあまり記事でも載せない方が良いと思ったからです。
時々、明らかな新製品と思われるものや、あまりに珍しいものが出た時だけ書いてきましたが、最近はかなり安定して販売が行われているようですので、そろそろBJFEというブランドについて、まとめた記事を書きたいと思ったのが今回の内容になります。
それでは、「今」、つまりこれを書いている時点で、ウェブ上から買うことのできるBJFEペダルをまとめてみましょう。
ちなみにBJFEペダルは少量生産で、各店、在庫状況などは細かく変わります。この記事に載っていないペダルが売られていることもあれば、載ってるのに売り切れとなっているものもあると思いますが、それはもう「そういうブランド」なんだと思ってもらえれば。あと全国全ての楽器店を見ることができるわけではありませんので、抜けてるものがあるかもしれませんがご容赦を。できるだけ集めてみました。
現時点でもけっこうな数があるので、簡単に触れていく感じになりますが、いってみましょう。
※エフェクターのジャンルごとに、モデル名順に並べていきます。
- オーバードライブ
BJFE Baby Blue Overdrive Super Deluxe
ちなみに普通のBaby Blue ODは現時点で在庫があるものが見つかりませんでしたが、One Controlバージョンが出ていますね。
BJFE Flametop
Flametop Overdrive // BJFe // Transparent Overdrive Pedal
BJFE Golden Delicious MkII
BJFE Honey Bee OD
BJFE Honey Bee Overdrive 解説レビュー
BJFE Honey Bee OD Retro
BJFE Retro Honey Bee OD with Tyson Tone Deacons, Gibson R8 and Bluesbreaker
- ディストーション
BJFE Cliff Hanger II
BJFE Cliff Hanger II - Hiwatt Custom 100
BJFE Custom Shop Cliff Hanger II Artist
BJFE Dyna Red Distortion Tiger 4K
この「4K」は4ノブという意味。同じモデルでもコントロールノブの数の違いでバリエーションがあるのもBJFEの特徴です。
BJFE Dyna Red Distortion Tiger 5K
BJFE Emerald Green Distortion Machine 4k
BJFE Emerald Green Distortion Machine
BJFE Gunnar Gain
BJFE LA DIstortion 5K
BJFe LA Distortion - Demo by Hans Johansson
BJFE Poppy Red Distortion
BJFe Poppy Red Distortion
- ファズ
BJFE Arctic White Fuzz
BJFE Arctic White Fuzz
BJFE Bone Bender MarkI
BJFE Bone Bender 1 - Moody Sounds DIY kit build and test
BJFE Bone Bender MkII 4K
BJFE Fuzz 109
BJFE Purple Fuzz
BJF Pink Purple Fuzz Pedal
- ブースター
BJFE Baby Pink Booster
BJFE Baby Pink / Red Rooster / Sea Blue EQ
- モデル○○
BJFE Model G
このModel Gはギブソンアンプサウンドを再現したペダルですね。
BJFe Model G - 5 knob
BJFE Model H 4K
BJFE Model H 4K (Custom Shop)
BJFE Model R
BJFE Model R [Super Rare Distortion] demo by Jake Cloudchair
BJFE Model R 5K
- コンプレッサー
BJFE Pine Green Compressor Deluxe
BJFE Sparkling Red Compressor
- フェイザー
BJFE Purple Plum Phaser
BJFE Phaserama Explanation Purple Plum and Folk Phase
- トレモロ
BJFE Orange Tremolo
BJFE Saffron Yellow Tremolo
- ヴァイブ
BJFE Mighty Black MiniVibe
筐体の色のみのカスタムモデルです。
BJFE Mint Green Mini Vibe
BJFE MiniVibe 2 stomp customshop w/ Dyna Red Distortion
BJFE Mighty Green Minivibe Deluxe
BJFE Mighty Green MiniVibe Deluxe
- フィルター
BJFE VCF
BJFE VCF customshop Filter Donnerbox
- コンボモデル
BJFEにはカスタムモデルとして、2種類のペダルを1台にまとめたコンボモデルがあります。これもカスタムなのでかなり自由に組み合わせができるみたいで、いろいろなバージョンがあります。
BJFE DRD/BBOD Special Combo
BJFE HBOD/DRD Special Combo
BJFE SROD/DRD Special Combo
BJFE SYOD/DRD Special Combo
ということで、一応今見た感じで新品で販売されているものになります。
BJFEの「ラインナップ」という意味ではかなり一部ですが、それでもけっこうな種類が出ています。
筐体の色を合わせたカスタムのモデル名違いがあるかと思えば、モデル名がそのままで筐体の色が異なっているペダルもあったり、ノブの数で名前が変わったり、同じものが制作時期により名前が変わり、それが両方とも復活していたりとかなり形態が複雑なのもBJFEの特徴。
それがBJFEの謎めいた感じを出しているところも大いにあると思います。
むしろ実際に弾いてみて気に入ったものがあれば、モデル名関係なく使い倒せ、っていうようなメッセージもどこかに含まれているのかもしれないなと思ったりしました。
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