かの“伝説”、Klon Centaurの後継者として名高い、KLON KTR。
2012年に発売されてから10年となる今、KTRにも実は“変遷”が出てきています。
さて、今軽く「後継」と書きましたが、KTRの祖先であるCentaurは、現在も極稀に制作されています。
それらはリイシューモデルとしてeBayなどで販売されたりします。
そして、KTRなのですが、2021年に「生産完了」の噂が出たことがありました。
それ自体は、あくまでも噂で終わったもので、その後生産されています。(実際に2021年は、おそらく部品供給が原因でほとんど生産されませんでした。)
発売から10年。そんな生産完了の噂が出たりもするKTRですが、現在4種類のバージョンが確認されています。
V1:最初期のモデルです。基板上にKLON 2010と記載のあるもの。2010年に設計され、2012年に発売された形のものです。
V1.5:基板にKLON 2019と記載され、V1やCentaurと同じNOSダイオードが使用されているもの。2021年11月までに生産されたものとされています。V1とV1.5では基本的に音色等の違いはない(時期により使用パーツの誤差はありそう)とされています。基板パターンも大きな違いはありませんが、一部パーツの配置密度が異なる部分がありそう、というくらいです。(実物で比較していないのでWeb上で見た写真の角度等の違いかもしれませんが…。)
V2:新ダイオード搭載モデル。あくまでもゲルマニウムダイオードクリッピングではありますが、それまで製作者Bill Finneganが「魔法のダイオード」と言っていたものではありません。
理由は、そのダイオードの在庫です。もともと90年代にこの「魔法のダイオード」を多数購入しストックしていたBillは、Centaur、そしてV1.5までのKTRにそのダイオードを使用してきましたが、その在庫がもう少なくなってしまったため、今後はリイシュー「Centaur」にのみ、このダイオードを使用し、KTRには別のダイオードを使用することになりました。なお、V2も基板自体はKLON 2019と書かれたものが使われています。
それでは音が異なってしまうのでは、ということで、Electronic Audio Experimentsを主宰するJohn Snyderと協力し、「魔法のダイオード」と同等の音色となるように回路に調整を加えた、ということです。
それがV2。V2のダイオードは、ダイオードの端が黒ではないタイプとなっているようですが、外観だけ似たものが使われる可能性もあります。V2は2021年10月ごろから生産されています。
V2(2022):そして、最新の2022年モデルでは、電池駆動非対応となりました。電池スナップがなくなり、V2回路の形となっています。ただし、一時的なものでまた戻る可能性もあります。
「運が良ければ新品で買える」KTRですが、それもこのように変遷が出てきています。ちなみに日本国内のみの事情で言えば、代理店も少し変わってたりします。
最初期のごく僅かな期間のみ、ZENBU Japanが販売していました。(おそらくファーストロットのみ。ZENBU扱いは100% V1です。)
その後Human Gear扱いでの販売があり、2017年にイケベ楽器扱いとなっています。
ZENBUとHuman Gear扱いのものはすべてCentaurと同じダイオードです。
イケベ楽器扱いのものは、2021年11月に日本に入ってきた分以降がV2となっている、ということです。
ちなみに、KLON KTRの価格はこの「V2」の発表以降跳ね上がっています。「KTRもこんなにするんだ」って思うんですけど、実はこういう事情が絡んでいたりします。
ということで、オリジナルのCentaurもKTRも価格が大幅に上昇している状況。オリジナルにこだわらなければ、KLONEと呼ばれるクローンモデルは多数販売されています。
現在のKLONE事情もついでに見てみましょう。
Albedo Sarasvati
TL072を2つ搭載。昇圧されています。こちらも大型ポテンショメータ、1/2Wカーボン抵抗、高品位フィルムコンデンサ、タンタルコンデンサ等を使用。コントロールはLevel、Tone、Drive。最初期ケンタウロスっぽい雰囲気があるとのことです。
Anasounds Savage
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Ceriatone Centura
内部構造まで再現。
CenturaはCeriatoneが所有するモデルを元に制作される初期回路のEarly Ver.と、よりオリジナルのロングテールに近づけた通常モデルがあります。カラーも多彩ですね。
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Ceriatone Horse Breaker
右側がブルースブレイカー、左側がケンタウロスとなっています。
ブルースブレイカーはVolume、Gain、Toneコントロール、ケンタウロスにはOutput、Gain、Trebleコントロールを搭載し、ケンタウロス側にはバッファのON/OFFスイッチ、右側にはオーダー、つまり接続順の切り替えスイッチがあります。
バッファはバイパス時のもので、ケンタウロス側のみにあるものです。通常はバッファードバイパスですが、トゥルーバイパスにすることができます。
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Electro-Harmonix Soul Food
KLONE系が一般的に”許される“始まりとなったモデル。
コントロールはVol、Treble、Drive。そして内部にはBypassモードスイッチがあり、これでトゥルーバイパスとバッファードバイパスを切り替えることができます。
toy-love.hatenablog.com
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Electro-Harmonix Soul POG
Soul Foodと、上下にオクターブを追加できるNano POGをセットにしたペダルです。Soul FoodセクションはVOL、Treble、Driveコントロール、POGセクションはDRY、Sub Octave、Octave Upコントロール、MODEスイッチを搭載。オリジナルNano POGにはないMODEスイッチによって、違ったオクターブサウンドを作ることも可能とのことです。
さらにPOG/SFスイッチを搭載し、接続順を入れ替えることができます。また、その間に他のエフェクトを接続するためのエフェクトループも搭載。DryとEffectを個別に出力することもできます。
単純に接続順を入れ替えるだけでも、上下オクターブを加えた音にオーバードライブをかけるのか、オーバードライブをかけた音に上下オクターブをかけるのかで音が変わるのが分かると思います。ドライだけを個別に取り出すことも出来るので、様々な音を作ったりシグナルルーティングを構築することができます。
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Foxpedal Kingdom
コントロールはV(Volume)、G(Gain)、T(Treble)。よりハードなクリッピングを選べるCLIPスイッチと、透明なトーンとスムースなトーンを選択できるODスイッチを搭載しています。
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Fredric Effects Golden Eagle
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Fredric Effects King of Klone
内部の2つのKLONE回路は、それぞれ個別に昇圧回路とバッファを搭載。つまり、単純にケンタウロスを2台直結した状態が1つのペダルになっています。バイパス時にはバッファを2つ通りますし、後段をONにするとバッファ後にケンタウロス、前段をONにするとケンタウロスの後にバッファとなります。もちろん両方をONにすることもできます。
各チャンネルごとにOutput、Treble、Gainコントロールを搭載しています。
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JRAD ARCHER
Output、Gain、Trebleコントロールを搭載し、コンパクトサイズで製作。フットスイッチはバッファードバイパスで、KTRよりもCentaurに近いモデルとなっています。
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JRAD ARCHER CLEAN
J.Rockett Audio Designs ARCHERのバリエーションモデル。ケンタウロスを元にしたローゲイン、クリーンブーストペダルです。
コントロールはOoutput、Treble、Color。Colorコントロールはミッドレンジを中心にコントロールできるということです。ちゃんとゲルマダイオードによるクリッピングも付いて、ゲインを大きく可変することなく音色を調整できるということです。
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JRAD ARCHER Ikon
こちらはゴールドバージョン。基本的には通常のArcherと同じですが、内部を少し変更。ダイオードが「Rare Russian Diode」となり、コンプレッションが強めのサウンドとなっています。
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JRAD Jeff ARCHER
Archerのカスタムモデルです。ジェフベックのツアーで使用されているものと同じモディファイを施したものとなります。
操作系などは同じ。Treble、Gain、Outputコントロールのオーバードライブですね。
内部のパーツを一部変更してサウンドの傾向を変えたということで、より音抜けをよくするようカスタムされています。
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Mojo Hand FX Sacred Cow Overdrive
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MOSKY Golden Horse
「手頃なKLONE」として有名なモデルです。中国のエフェクターブランド、MOSKYによるKLONEペダルですね。GAIN、TREBLE、OUTPUTコントロールを搭載したモデルです。フットスイッチはトゥルーバイパスです。
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MXR Sugar Drive
コントロールはVOL、TONE DRIVE。「オリジナル」同様、内部に昇圧回路を備え、またDRIVEコントロールにはクリーンミックスを同時に行うスタイル。バイパスは側面のスイッチでトゥルーバイパスとバッファードバイパスの切り替えが可能となっています。
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MXR Fat Sugar Drive
DRIVEコントロールはクリーンミックスを同時にコントロールする形となっています。
Mythos Pedals Mjolnir
高域と中域を少し抑え、明瞭かつざらっとしたサウンドを加えたモデル。OUTPUT、GAIN、TABLEコントロールを搭載し、バッファードバイパスとなっています。
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NORDVANG CUSTOM '83 DRIVE
デンマークのエフェクターブランド、NORDVANG CUSTOMによるオーバードライブ。ケンタウロスとBlues Breakerの2つのオーバードライブを1台にまとめたペダルです。
ペダルの右側がケンタウロス、左側がBlues Breakerとなっています。ケンタウロスはGain、Treble、Outputコントロールとクリッピングスイッチを搭載。ゲルマニウムダイオードとショットキーダイオードを切り替えることができます。
ケンタウロス側はバッファードバイパスとなっています。
左側はBlues BreakerでGain、Tone、VolumeコントロールとLowsスイッチを搭載。
こちらはトゥルーバイパスで、Lowsでローエンドの出方を切り替えます。
また、中央のスイッチで左右のオーバードライブの接続順を切り替え可能。それぞれ2つのフットスイッチで各オーバードライブのON/OFFができます。
そして内部には4つのDIPスイッチがあり、ゲイン、ソフトクリッピング、対称/非対称クリッピング、ハードクリッピングのモードを設定することができます。
Paperboy Goat
GAIN、TREBLE、OUTPUTコントロール。完全再現ではなく、よりフラットな方向に調整されたモデルとなっています。
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RYRA The KLONE
GAIN、TONE、OUTPUTコントロールを搭載し、ペダル自体のスタイルもオリジナルモデルを思わせる形となっています。
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Sunfish Audio Lycoris
Vol、Treble、Bass、Gainコントロールとゲイン切り替えスイッチ搭載。2バンドEQで、よりモダントーンに調整。シリコン、ゲルマニウムの二種類のダイオードでクリッピングをしています。ゲインが上がるとシリコンクリッピングになります。よりダイナミクスを拡げるためにこうしたとのこと。バッファードバイパスです。
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TC Electronic ZEUS DRIVE
TC ELECTRONICの手頃なKLONEペダル。
ギリシャ神話に登場するケンタウロスではなく、最高神ゼウスの名を冠したモデル。
コントロールはVOLUME、DRIVE、TREBLEとFATスイッチを搭載。DRIVEはクリーンミックスを同時にコントロールするスタイルなのもKLONE系のスタイルならでは。ですが単にクローンではなく、FATスイッチでローエンドを付加するモードを追加するなど、オリジナリティも加えられたモデルとあんっています。
内部電圧は昇圧されています。内部スイッチでトゥルーバイパスとバッファードバイパスを切り替えることができます。
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Wampler Pedals Tumnus
Gain、Level、Trebleコントロールを搭載する金色のペダル。電池駆動は出来ず、バッファードバイパスで高品質なパーツを使用したモデルとなっています。
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Wampler Pedals Tumnus Deluxe
コントロールはLevel、Gain、Bass、Mids、Treble。そしてNormal/Hot切り替えスイッチと、側面にトゥルーバイパス/バッファードバイパス切り替えスイッチが付いています。より幅広く音を作ることができるようになったペダルです。
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WARM AUDIO Centavo
多くのヴィンテージスタジオ機器やハイエンドマイクなどをより手頃に制作。2020年にはギターペダルにも参入したWARM AUDIOのKLONEペダルです。
オリジナルのスタイルまで再現したモデルです。
コントロールはGAIN、TREBLE、OUTPUT。
回路も丁寧に再現し、パーツはTL072オペアンプ、1N34Aゲルマニウムダイオード、カーボン抵抗、チャージポンプ電圧レギュレータを使用。もちろんバッファードバイパスとなっています。ペダル奥にスライドスイッチがあり、MODモードにするとローが強くなります。
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Zahnrad ZVKC
最初期シリアルのCentaurのサウンドを再現するペダルですね。
3つのノブはもちろんVolume、Treble、Gain。細部まで手作業で組み込まれたモデルです。
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マキノ工房 Scylla X
OUTPUT、TREBLE、GAINコントロールを搭載。マキノ工房が考える”アタリ”のロングテールCentaurサウンドを再現したモデルです。ちなみにこのXはバージョン10という意味です。(下の動画はIXです。)
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ということで、こんな感じです。
もちろんこれで全部ではないんですが、全て網羅は無理なので、今日本のよく知られる楽器店で扱われているものを主に載せている感じです。それでもけっこう珍しいモデルとかもあったりして、自分の好みやデザインから選んだりするのも楽しいですね。
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