今回は、ワウペダルのレビューいきたいと思います。私の持っているワウペダルは、Dunlop CRYBABY GCB-95という非常に一般的なものでしたが、それを今回はsoulpowerのさいとうさんにモディファイしていただいたので、元のクライベイビーとの比較も兼ねて書いていきたいと思います。まさにフルスペック!なワウペダルに仕上がりましたので、ワウのモディファイに興味がおありの方は是非、読んでいただけたらと思います。
Jim Dunlop/GCB-95 (Original Crybaby) |
クライベイビーの特徴
クライベイビーのワウサウンドといえば、「えげつない」というイメージがあると思いますが、その通り!私の使っていたクライベイビーも、えげつない系のワウサウンドで、非常に気に入っていました。
しかし、残念なことに、古い構造のエフェクターということもあって、使いにくい点もいくつかありました。
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- 音痩せ
最近のハンドメイド系等のハイエンドワウペダルはトゥルー・バイパスになっていますのでそういった問題は少ないのですが、このCRYBABY GCB-95は、トゥルー・バイパスではないため、繋ぐだけで音が痩せてしまいます。これは非常に残念な点です。
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- LEDがない
古いエフェクターでは当然ですし、また、現代のものでも、筐体スペースの問題や、「LEDがない方がヴィンテージサウンドに近づく」といった考え方から、ワウペダルにはLEDが付いていないものが多いです。
しかし、気付かないうちにONになっていたせいでクリーンサウンドがやたらキャインキャインして使い物にならなかった経験がある私としては、ON/OFFを示すLEDインジケ−タは是非とも欲しいところでした。
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- ACアダプタが挿し込みにくい
CRYBABY GCB-95は、スイッチ、ポットを除く全ての部品が基盤に直付けされていまして、そのせいでACアダプタの端子が奥に引っ込んでいるんです。そのため、Ibanez DC5のようなアダプタ分岐ケーブルを使用したりすると、挿し込むことができない、といった問題点もありました。
さて、これらの問題点を解決するとともに、さらにこのクライベイビーの持つワウサウンドの幅を広げるべく、さいとうさんにモディファイをお願いしたわけです。では、そのモディファイの中身を見てみることにしましょう。
モディファイ内容
見ての通り、たくさんのスイッチが追加されているのが分かるかと思います。こういったスイッチによって何ができるのか、およびその他のモディファイ内容をまず見てみましょう。
- LED付きのトゥルー・バイパス化・・・3PDTのフットスイッチによってLEDインジケータを付けたトゥルーバイパススイッチになっています。
- ACアダプタジャック交換・・・上記の挿し込みがしにくいという点を改良してあります。
- ジャック交換・・・基盤直付けのジャックを、スイッチクラフトのものに変更してあります。
- ワウの可変帯域コントロールを追加・・・ワウペダルの効く範囲を6種類から選択できます。
- ヴォリュームコントロール追加・・・ON/OFF時の音量バランス取り、および少しのブーストが可能となっています。
- Qコントロール追加・・・エフェクトの周波数幅を設定します。Dunlop CRYBABY GCB-95Qにも搭載されていましたね。
- Colorコントロールを追加・・・ワウサウンドのカラーを調整します。
- ミッドブースト搭載・・・よりマイルドなワウサウンドにすることができます。
- JH-1モード搭載・・・ジミ・ヘンドリクスシグネチャーワウ、Jimi Hendlix JH-1のサウンドにすることができます。
- インダクタ切り替え・・・インダクタを一つ追加し、2種類のインダクタからサウンドを切り替えることができます。
- インプット/アウトプットバッファ搭載・・・もともとインプットバッファは搭載されていますが、さらにアウトプットバッファを追加し、それぞれのON/OFFと、アウトプットバファの音量調節が可能になりました。
- サウンドのハイファイ化・・・より高品質な部品を使用することで、ワウサウンドをさらに上質なものへと進化させました。
こうして改めて見ると、どえらいモディファイしましたね・・・フルスペック仕様ですw
それでは写真を使って細かい説明をしていこうと思います。
インプット側の側面です。左から、JH-1モード切替スイッチ、ミッドブーストスイッチ、Colorコントロールポット、可変帯域切り替えロータリースイッチ、となっています。JH-1モードにすると、ワウのサウンドが全体的に低域に移動します。レスポールのようなギターだと、オクターヴファズとの相性はよさそうですが、普通のファズや、歪み系だとこもりがちになります。ですが、うちのストラトだといい感じでしたよ。また、EMGピックアップとの相性がいいらしく、ザック・ワイルドが以前は使っていたこともありましたね。
ミッドブーストは、私の好みからいって、最高でした。ONとOFFでは全くキャラクターが違って、ONにすると本当に甘いサウンドになります。逆にカッティング等でクールにいきたいときはOFFにするといい感じです。
カラーコントロールは、メロウなワウサウンドからブライトなサウンドまでをカバーでき、曲の雰囲気に合わせてコントロールすることができます。
そして可変帯域の切り替えスイッチですが、ワウペダルの動きによって変化する帯域が、低域よりから高域よりまで6種類の切り替えが可能です。低域よりにすると非常にエグく、高域よりにするにしたがって爽やかな雰囲気に変わっていきます。
こちらはアウトプット側の側面です。左から、ヴォリュームコントロール、Qコントロールとなっています。ヴォリュームコントロールは機材の組み合わせによって調整するといいと思います。そしてQコントロールですが、これはワウの可変する上限が変化します。MAXにすれば、クライベイビーらしい可変の大きなワウに、少し絞ればVOX風、さらに絞ればBUDDA Wahのような変化は少ないけれどマイルドで上品なワウにまですることができます。また、よりせり出したACアダプタジャックと、白いカバーをかぶったLEDが見えると思います。
LEDを点灯した様子です。よくワウのモディファイで、LEDをBOSS等と同様、ペダルの奥側に付けているのを見ますが、今回は私のこだわりで、側面につけてもらいました。この方が見やすいと思います。
それでは、内部の様子を見ていきましょう
オリジナルの中身を知っている方は笑っちゃうかもしれませんね。面影が全くないんですからw
もともとの中身は、さいとうさんのブログの、こちらの記事を見ていただいて、ビフォア/アフターを比べてみると、その中身の変化がお分かりいただけるかと思います。
それでは、内部のモディファイについて、上で書きましたモディファイ内容の12番、「サウンドのハイファイ化」の中身を書いてみます。
- コントロールポットの交換・・・ワウのサウンドを作る2大要素は、インダクタとポットだと言われています。今回はそのポットを、非常に評価の高いFULLTONE CLYDE WAH POTに交換しています。
- 配線材を交換・・・内部配線には、WE(Western Electric)の単線22AWGを使用しています。
- トランジスタを交換・・・古くからのワウに使われていたBC109Cというシリコントランジスタに交換しています。
- コンデンサを交換・・・セラミックコンデンサをマイカコンデンサに、そして電解コンデンサにFineGoldのものを、さらにPCI E.W.S. GBC-95 Mod.と同様、マロリー製のコンデンサを使用しています。
- インダクタを追加・・・もとのGCB-95のインダクタに接触不良があった為、JH-1のインダクタ(GCB-95と共通、ただし年式のみ違います)に交換、それに加えて、有名なFaselのインダクタ(赤)を追加し、それぞれをスイッチでセレクトできるようになっています。
- 抵抗を交換・・・音の信号が通過する部分には、TRW製メタルフィルム抵抗に交換しています。
- ユニバーサル基盤によるポイント・トゥ・ポイント配線・・・プリント基板ではなく、ユニバーサル基盤で完全に作り直しを行っています。
と、中身をほぼ完全に入れ替えてもらいました。もはや元のパーツは筐体と、音の信号に関係ない部分のいくつかの抵抗のみとなってしまいました。あ、あと電池スナップもw
基盤部分の拡大です。左側がペダル奥となっています。内部のスイッチは、左からインプットバッファのON/OFF、インダクタ切り替え、アウトプットバッファのON/OFFとなっています。中央にある可変抵抗は、歪み量の調整。このワウは歪み系エフェクタの回路を使わずに微妙に歪ませることができるのですが、その量の調整です。効きは微妙だ、とさいとうさんは言っておられます。右の白い可変抵抗はアウトプットバッファの音量調整に使います。最大で原音と同じゲインになっています。
ポット、およびフットスイッチの部分です。トゥルー・バイパスであることが分かります。
さいとうさんの、「Soul Power Instruments」のシールは、裏蓋の裏側(分かりにくいw)に貼ってあります。
それでは、サウンドレポート、行ってみましょう。
サウンドレポート
まだ手元に来てからそんなに日が経っていないので、スタジオ等で、大音量でのプレイはしていないのですが、うちにあるアンプとギターを使って音出しをしたので、そのレポートを書きます。
それでは、試奏レポート風に、まずはセッティングから行きましょう。
Gibson LTD Les Paul Studio Faded
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Z.VEX BOX OF ROCK
↓
Soul Power Instruments GCB-95 CRYBABY mod.
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ROOT20 BOD-2 mod.
↓
Marshall Valvestate VS-15
イメージ検索
というセッティングで行いました。前後に歪みを入れたのは、どちらが効くか試すためです。まずはクリーンで音出しをします。ワウのスイッチは、ミッドブーストON、インダクタにFasel、イン/アウトプットバッファ共にOFFで、外側についたコントロールをいろいろ弄くります。
・・・これは素晴らしい。まず、出音が「ワウワウ」いいます。本当に。可変帯域を変えると、アウアウになったり、ワオワオになったりしますw個人的にはちょっと高域よりが好きですかね。次にQコントロールでマイルドな変化から最大変化まで試します。これは曲に合わせていろいろ変えるとよさそうですが、ギター1本で遊ぶにはやはり最大変化が楽しいですね。そしてカラーコントロール。ブライトにした明るいワウサウンドも最高ですが、個人的にはカラーを絞ったメロウなワウサウンドがたまりません。というかこれだけで無限にワウサウンドが作れますね。他のワウにはない、圧倒的な音の幅です。そういえばこのセッティング、PCI E.W.S. GBC-95 Mod.に一番近い音になってるはずですね。艶のある音、ということですが、たしかに!これは非常に奥行きのあるいい音ですね。
ただ、ちょっとマイルド気味です。ヴィンテージサウンド向け、といった雰囲気ですね。そこで、内部のバッファをONにしたりOFFにしたりしてみます。
・・・うん、全然ちがいますね。バッファを通るか通らないかで出音は全く変わってきます。インプットバッファを通すと、より元気のあるサウンドになって、私にはこれが好みですね。そしてアウトプットバッファですが、理論上は変わらないはずなのに、やはりニュアンスが変わってきます。バッファアンプらしい、ちょっとブライトなサウンドになりますが、私はアウトプットバッファはOFFの方が好きかなぁ。でもこれはワウの後ろにもっと多数のエフェクトをつないだりするときにはONにする必要があるでしょうし、その方がいいと思います。
歪みとの相性は、歪みの後よりも前の方がよさそうですね。後だとちょっとえげつなすぎる部分があります。ただ、これがファズとかを繋ぐとまた変わってくるんですけどね・・・。
では、インダクタをGCB-95に変えてみましょう・・・おぉ!これぞ現行のクライベイビーサウンド!Faselに比べて安っぽいぞwでも、これでQコントロールやカラーコントロールをいじくってえげつないセッティングにすると、変態ギタープレイにも使えそうなサウンドになりますね。インダクタは機材ごとに相性があるらしいので、逆にFaselだとマイルドすぎてダメな場合に、こちらに切り替えるといいことがありそうですね。
あと、全体に言えることですが、ペダルがすごく軽いです!ポットの交換によるものだと思いますが、今までなんかネバーっとした抵抗感があったペダル操作が、ものすごく軽くなりました。好みによると思いますが、これはいいですよ!
いやー、今回のモディファイは非常に重厚でした。今まで音痩せと使いにくさから、あまりつかってこなかったワウですが、これを機に、曲の中にもっと取り入れていこうと思います。それにしても、ここまで音作りの幅があるワウペダルは見たことがないですね。ファズを搭載してるとか、そういうのはありますが、このペダルは完全にワウのみですから。
同じものが欲しい、という方はsoulpowerにてさいとうさんに問い合わせてみてください。ただし、個人の方ですし、さいとうさんもお忙しいですから、確実にやっていただけるという保証はありませんし、パーツ代以外に明確な価格というのも今のところは考えておられないようです。問い合わせをされる際にはそのことを念頭においてお願いします。
また、こちらで、今回のモディファイの記録を読むことができます。
さて、今回はワウペダルを見てきましたが、いかがだったでしょうか?ワウのモディファイはこのところ流行っているのか、よくやっておられるサイトさんを見ます。この記事を読んで、そんなモディファイをやってみたい!という方に参考になれば嬉しく思います。