PAF。そのまま口に出すとちょっと間抜けなこの言葉は、ギター、特にGibson系ギターにとっては畏怖の対象といえるほどの伝説があります。
エレキギターのピックアップにはいくつかの種類がありますが、中でも特に主流といえるのが、マグネティックピックアップという、磁石とコイルを使ったピックアップです。ピックアップは、マイクと呼ばれることもありますが、実際その構造自体はいわゆるヴォーカルマイクと似たところがあります。役割はどちらも、振動を電流に変換するというものですね。
マグネティックピックアップは、磁石を中心にコイルが巻かれており、そのすぐ側にある金属の弦振動により電流を発生させるという仕組みです。これは電磁誘導という効果で、この電流がギターから出力され、増幅されてアンプから出力される。その音の入り口となるのがピックアップです。
さて、このピックアップ・・・マグネティックピックアップには、大きく分けて2種類のタイプがあります。1つはシングルコイル、もう1つがハムバッキングピックアップです。シングルコイルはその名の通りコイルが1つしかなく、シンプルな作りです。対してハムバッキングピックアップです。は、コイルが2つあります。2つのコイルを逆向きに組み合わせることで、ギターを弾いていない時の余計なノイズ・・・ハムノイズを2つのコイルが打ち消し合い、抑える効果があることから、ハム・バッキング・ピックアップと言います。縮めてハムバッカー、またはハムと言われることもあります。古い雑誌なんかでは、ハンバッカーやハンバッキングと呼んでいたりもしますね。あとダブルコイル、という言い方もあります。
今では他にもいろいろな種類、構成のピックアップがありますが、基本的にはこの2種類と言えます。
1950年代初期にソリッドボディのギターが登場して以来、エレキギターは急速にその人気を高めていきます。同時に、ギターが出すノイズの問題は、レコーディングの現場を中心に大きくなっていくことになります。
1953〜54年頃、Gibson社内で、このノイズを取り除くことの出来る新しいピックアップの開発がスタートしようとしていました。開発者は有名なセス・ラヴァー。彼はいくつかの方法を開発して特許を申請しますが、受諾されたのは1つだけでした。ピックアップを改良してノイズを減らす、というアイディア自体は、当時の多くのエンジニアが様々な発想で「発明」を繰り返しており、他の方法はそれらと重複していたということです。
そして1955年に試作機が完成。6月22日に特許の出願を行います。その試作品が実際にどう機能し、どういう音を出すか・・・それを確かめるために使われたのが、当時のGibsonギターの中で最も音の解像度が高い、ソリッドボディのレスポールモデルでした。
▲プロトタイプのハムバッカーが載せられたレスポール。レスポール大名鑑1915〜1963より。
ピックアップにはカバーがかぶせられ、またピックアップのキャビティにもシールド加工を施して出来る限りノイズを減らそうとしていたとのことです。現在も、Gibsonのピックアップキャビディには導電塗料などが塗られています。
さて、このピックアップ、たしかに見慣れたハムバッカーっぽいですが、何か違いませんか?
現在のレスポールモデルのハムバッカーと比べればすぐに分かります。そう、アジャスタブルポールピースがありません。この時点ではまだ完成していなかったアジャスタブルポールピース。Gibson初のハムバッキングピックアップ発売まで、あとはその部分の開発のみとなっていました。
それ自体はすぐに完成したようで、製品にハムバッキングピックアップがマウントされるのはすぐのことです。1955〜1956年頃、Gibsonが発売していた、「エレクトラハープ」という8弦のラップスティールギターが、ハムバッキングピックアップがマウントされた初めてのGibsonの製品となりました。
同時期、1956年にはGretschがフィルタートロンピックアップを発表し、ラップスティールギターではなくエレクトリックスパニッシュギター、いわゆるエレキギターにハムバッキングピックアップをマウントしています。そして1957年、Gibsonはハムバッキングピックアップを載せたエレキギターを発表。レスポールモデルやES-175などに出来たばかりのハムバッキングピックアップを載せて発売します。
1957年後半ごろからは、このピックアップの裏面にPatent Aplied For(特許出願中)のシールを貼って出荷するようになります。この頭文字を取って、この頃のハムバッキングピックアップは「PAF」と呼ばれるようになりました。余談ですが、同時期にハムバッキングピックアップを製作したGretschも、フィルタートロンピックアップの裏面に同様のシールを貼っており、このころのモデルはPAFフィルタートロン等と呼ばれることがあるようです。
なお、前述のとおり本当の最初期のハムバッキングピックアップにはPAFシールは貼られていなかったため、「PAF以前」のハムバッキングピックアップも存在していることになります。
ピックアップの仕様自体はこの後も変わっていませんが、1959年に特許が認可されると、1960年代初期には裏面のシールがPat Pend.となり、その後特許番号の2737842を併記したバージョン(ナンバードPAFと呼ばれます。)が出回ります。有名な話ですが、実はこの特許番号はハムバッキングピックアップの番号ではなく、レス・ポール氏が開発したトラピーズ・テイルピースの特許番号で、ハムバッキングピックアップの番号は2896491です。間違えた、というよりもわざとその特許番号を載せないことで、技術が漏れるのをできるだけ防ごうとしたのではないか、という見方が一般的です。
さて、1957〜1959年ごろ、レスポールモデルの人気はそれほど高くはありませんでした。かつてトップアーティストだったレス・ポールも、台頭してきた「ロック」というジャンルに追いやられ、その人気にもかげりが出始めています。人気の無くなったアーティストのシグネチャーモデルの人気が落ちる・・・これはとても自然なことですね。実際、レスポールモデルは1960年頃に生産終了となり、後継モデル、SGへとその地位を譲ることになります。
しかし、60年代後半に入ると、主に英国のギタリストが「太い音が出る」レスポールモデルをこぞって探し回ります。エリック・クラプトンがマーシャルアンプで極上の歪みを作り、LED ZEPPELINのジミー・ペイジはステージでレスポールとマーシャルを使い、Rolling Stonesのキース・リチャーズもレスポールを弾きました。当時レスポールモデルはすでに生産されておらず、彼らは主に1957〜60年頃のPAFピックアップが付いたレスポールを使うことになります。レスポールモデルの需要に気付いたレス・ポールとGibsonは再契約を行い、1968年にレスポールモデルが再販されるようになりますが、この最初期の1957〜60年頃のハムバッキングピックアップを搭載したレスポールモデルは伝説となり、今では楽器というよりも投機対象というような価格で取引されるようになっています。
そんなギターに付いているピックアップですから、それが伝説になるのも当然。ギターのサウンドは1つの要因では決まりませんが、ピックアップはその中で大きなウェイトを占めることは事実なので、その時代のピックアップ・・・PAFピックアップを求めるプレイヤーは多くなり、自然と、「PAFサウンドを再現」したピックアップが作られるようになります。
さて、長い前段がようやく終わりました。ここからは、そんなPAFサウンドを再現したいろいろなピックアップを見ていきたいと思います。では、いってみましょう!
※ピックアップにはカバードやオープン、カバーのカラーやボビンのカラーなどのラインナップがありますが、それらまでご紹介すると膨大になってしまいますので、同じモデルのピックアップはその中から1種類のみご紹介する形とします。また、バリエーションモデルやアーティストモデルは数が多すぎるので今回は割愛します。
- Gibsonのピックアップ
まずは、本家GibsonのPAF再現系リプレイスメントピックアップを見てみたいと思います。Gibsonのハムバッカーは基本的に、Dirty Fingersのようなモデルを除き、だいたいがPAF再現系ですが、その中でも特にヴィンテージPAFを意識したモデルを載せたいと思います。
Gibson 57 Classic
Gibson Original!!Gibson57 Classic [4Conductor/Potted] (Nickel Cover) |
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Gibson Burstbucker
続いて、Burstbuckerです。こちらはレスポールモデルを中心に標準搭載されているモデルとなっています。57 Classicモデルよりも新しく、よりヴィンテージPAFに近づけたモデルです。Type1、Type2、Type3の3種類があり、Type1は出力を抑えめで甘くクリアなサウンド、Type2はオールマイティ、Type3は出力を少し高めたタイプのモデルとなっています。
57 ClassicとBurstbucker(1/2)の比較
Gibson Burstbucker Pro
【ピックアップ】Gibson Quick Connect Burstbucker Pro (Chrome) |
57 Classic、Burstbucker、Burstbucker Proの比較
Gibsonのモデルはこんな感じです。もちろん、57 Classicを発展させた490R/498T等のモデルもありますが、特にヴィンテージPAFを意識したのはこのあたりではないかと思います。また、最近はGibsonピックアップにも4コンダクタケーブルのモデルやQuick Connect Seriesといったモデルもあるので、それぞれのギターに合わせて選べるようになっています。
では、続いてGibson以外のPAF系リプレイスメントピックアップを見てみたいと思います。ブランド名順に見ていきたいと思います。
- Gibson以外のPAF系リプレイスメントピックアップ
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Amber Pickups Classic 59 Crosspoint Nickel エレキギター用ピックアップ[アンバーピックアッ... |
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究極のPAFクローン、ベア・ナックル!Bare Knuckle "Stormy Monday" Nickel Aged Set |
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Bare Knuckle Mule
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DiMarzio PAF 36th Anniversary
ディマジオのピックアップ!【お取り寄せ商品】【G-ACC-DIM442】ピックアップ ハムバッカー DiM... |
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HystericBar Vintage Replica PAF Pickup "Hysteric PAF"
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Lindy Fralin 59 Standard
Lindy Fralin 59 Standard Humbucker Set |
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Lindy Fralin Pure PAF
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Lollar Pickups Imperial Humbucker Pickup
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Montreux 1959 The PAF Clone
【2万円以上で送料無料!】【代引き手数料無料!】Montreux モントルー 1959 The PAF Clone ピ... |
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Seymour Duncan Antiquity Humbucker
リプレイスメントピックアップの名門セイモア・ダンカン!Seymour DuncanANTIQUITY Humbcker(Neck) |
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Seymour Duncan SH-55 Seth E.Lover
セス・ラヴァーとセイモア・ダンカンが協力して開発したモデル。SeymourDuncan SH-55b Ni Seth ... |
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Seymour Duncan SH-18 Whole Lotta Humbucker
【ハムバッカー・ピックアップ】Seymour Duncan SH-18 Whole Lotta Humbucker |
ワイヤーには42ゲージのプレーンエナメル、マグネットはラフキャストアルニコ5マグネット、という組み合わせで、70年代の英国で使われた音を作り出す、とのことですね。
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Sheptone PAF Tribute
【新商品】【正規輸入品】【即納可能】Sheptone PAF Aged Tribute単品(ブリッジ側/ネック側) |
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Throbak SLE-101
【新商品】【正規輸入品】【送料無料】【代引き手数料無料】ThroBak Electronics SLE-101 Plus... |
このSLE-101はアンオリエンテッドのアルニコ5マグネットを用いた最もスタンダードなモデルです。
本物のPAFとの比較
Throbak DT-102
【新商品】【正規輸入品】【送料無料】【代引き手数料無料】ThroBak Electronics DT-102 MXV P... |
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Tom Holmes H-450
PAFレプリカの最高峰!Tom Holmes 《トム・ホームズ》 H-450 Antique [2con/potted] |
Tom Holmes H-455
PAFレプリカの最高峰!Tom Holmes 《トム・ホームズ》 H-455 Nickel [2con/potted] |
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Vanzandt VZTrubucker
VanZandt TRU BUCKER |
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Voodoo HB-57s
VooDoo HB-57s NI ピックアップ |
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Voodoo HB-59s
【送料無料!】【代引き手数料無料!】【完全ハンドメイド!】Voo Doo Pickup ヴードゥー・ピッ... |
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Wizz Plemium PAF Clone
送料... |
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Wolfetone Marshallhead
Wolfetone Marshallhead covered ブリッジ用ハムバッカー ピックアップ |
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と、いうわけで今回は様々なPAF再現系ピックアップを見てきました。
見ての通り非常に多彩なモデルが出ていて、このサウンドを求めるプレイヤーがそれだけ多いことを示しています。ピックアップはギターと合わせてこそその音色に意味がありますし、だからこそ付けてみるまでどんな音か分かりにくいので選ぶのが大変なんですが・・・そんな時に少しでも助けになれば、と思います。
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