すさまじいこだわりで作られる「Rat」系ディストーションペダル、「6 Degrees FX R3 Distortion」を弾くことができましたので、レポートしたいと思います。これは久々にとんでもないディストーションが出てきたと思います。
では、いってみましょう!
【ディストーション】6 Degreens FX R3 Distortion |
6 Degrees FX R3 Distortion
6 Degrees FX / R3 Distortion【送料無料】 |
カナダのハンドメイドエフェクターブランド、6 Degrees Fxは、細部までこだわったエフェクトを作るブランドですね。全てのペダルをタレットボードで組み上げ、レアなパーツやヴィンテージパーツを盛り込んだエフェクトを制作しています。
ラインナップする全モデルに以下のような共通項があります。
基板は全て、こんな感じにポイントtoポイントで、タレットボードで組み上げられます。耐久性が高い形で、「クラシカルでオールドスクールな外観を美しいと考え、そう感じるが故にポイントtoポイントを採用」しているということです。
トゥルーバイパススイッチには頑丈で信頼性の高いハイグレードのスイッチを採用。配線には「20AWGのソリッドコアヴィンテージクロスワイヤー」が使われていると言うことです。
ポットはハイエンドオーディオ等に使われることが多いというBourns社製のオーディオポテンショメーター。高耐久性でスムースな可変ができるとのことですね。
抵抗はカーボンコンポジション。「ヴィンテージなルックスとハイワッテージレーティングが好み」だから使っているとのことです。
コンデンサも拘りを持って選択。基本的に「多くのハイエンドキャパシタをテストし、比較を重ねた結果、3つの違ったメーカーによる3種類のキャパシタ」を使用するとのこと。
基板は耐水性が高いというグラスファイバー製。おもしろいのが、ここに取り付けるタレットのターミナルを自社製作している点です。「トップグレードの真鍮と錫」を使い、導電性を向上させているということです。
ここまでが共通する部分です。実際、このR3 Distortionも同様の作りで組み上げられています。
こちらが内部。これを見てRATだ、と思う人はそうそういないと思いますw
Level、Tone、Gainコントロールに加え、3モードのクリッピング切替スイッチ(G.A.Sスイッチ)を搭載。Gはゲルマニウムダイオード、Aはアシンメトリー(非対称)、Sはシリコンダイオードの選択となるようです。また、内部にミッドの強さを調整するトリムポットと、コンプレッションの強さを調整するトリムポットが付いています。
なぜこんな凝った作りをする必要があるのか。それに対するブランドのスタンスが個人的に好きなので、紹介したいと思います。
※ポイントtoポイントはPCBよりも良いのか
この議論には終わりがありません。6 Degrees Fxではポイントtoポイントをエフェクターに採用していますが、PCBメイドのエフェクターを否定するつもりは全くありませんし、その意味も無いでしょう。
エフェクターの音色は一般的に、その工法よりも回路設計とコンポーネンツの値の方が大きく影響すると言われています。回路設計は、音色全体に影響する基本的なものであり、それが音色に最も大きな影響を及ぼすのは当然のことです。
ポイントtoポイントは、特にノイズを抑制できるという観点で高い評価を得ていますが、それは特にローボルテージオペレーションで言えることです。
ポイントtoポイントとPCBは、“正しく設計すれば”どちらも正確に動作します。どちらの方が優れていて、どちらの方が劣っているということはありません。
6 Degrees Fxは、クラシカルでオールドスクールな外観を美しいと考え、そう感じるが故にポイントtoポイントを採用しています。数あるポイントtoポイントの手法の中で、特に高耐久性のタレットボードによる工法を選びました。
PCBによるエフェクトビルドを選択した、世界中の偉大なメーカーやビルダーに、6 Degrees Fxは敬意を持っています。6 Degrees Fxのペダルに魔法はありません。全て純粋な情熱により制作しています。
ここは公式説明からの引用です。ポイントtoポイントにこだわるブランドは時々、「そうでないと音がロスする」等といった説明をすることがあります。それはもちろん1つの理論ですし、そこまでこだわっているということを見せるという意味ではたしかに必要なことかもしれません。ですがこのブランドは、何よりも「クラシカルでオールドスクールな外観を美しいと考え」るからこの形をとっている、つまり好きだからやってるんだよ、というこのスタンスがとても良いですね。好きだからとことんまでこだわる。でもそれだけが正解じゃないこともしっかり伝えているブランドというのはなかなか無いように思います。
例えばエフェクターの筐体だったりはんだだったり、全て「音が変わる要因」になるものです。さらに上位の域に達すれば、エフェクターを置く場所(接続順ではなく)によっても音が変わると言います。でもシングルコイルのギターとハムバッカーのギターを持ち替える方が音の変化が大きいことは言うまでもありません。言うまでも無いから伝えない、それは分かる人にしか聞いて欲しくないという意志もあるのかもしれませんが、場合によってあたかもそれだけが真理というような書き方になってしまっている(その意図がなくとも)ことがあり、そういうのは個人的にちょっとどうなのかな、と思ったりすることもありました。なのでこういったところをちゃんと伝えられるというのは大事じゃないかな、と個人的に思います。まぁ逆に、だからといってそういうこだわりを前面に押し出すペダル自体の評価が変わることもまた、ありませんけどね。結局良いと思ったものは良いんですから。
ということで、R3 Distortionのレポートいきたいと思います。
セッティング
Fender USA American Standard Stratocaster
【エレキギター】Fender USA American Standard Stratocaster Upgrade (3-Color Sunburst) |
【ディストーション】6 Degreens FX R3 Distortion |
Roland JC-120
いつものセッティングです。
- 操作性
各ノブやスイッチにラベルが無いので、すぐにはノブの名前などが分かりませんが、使えば分かります。中央がToneとなっていて、逆回しのFilterではないので、通常のRatよりも使いやすいようには思います。まぁこのペダルを買おうと思う人がそこを気にすることは無いと思います。
- サウンドレポート
では、音について。
久しぶりに、弾いた瞬間におぉ、と思う音でした。
だいたい全部真ん中で音を出してみたんですが、とにかく音が分厚い。厚みがあって、ミッドが気持ち良く出て、ローエンドが失われず、トップの倍音も豊かで、かといってレンジが広すぎて扱いきれないことも無い。見事なバランスで作られたペダルです。
おそらくベースとなった回路は違いますが、音が似ていると思ったのはLandgraff Distortion Boxです。個人的にフェイバリッとなディストーションペダルで、常に安定した音を出せるペダルなんですが、このR3も同様の特性があると思います。
ミュートしての刻みはガシガシ出るし、リードはものすごく伸びるし、音が前に出る上に厚みがあって、平べったいような音にならない。ゲインはおそらくそこまでハイゲインではなくスタンダードなディストーションという感じですが、これで十分。あとはノブの設定とフレーズだけでクラシックロックからパンク系、そしてメタルまでこなせます。使い方次第ではブルースも行けるほどですね。
音自体は全体的に明るい感じ。ブライトというわけではなく、どちらかといえば乾いた雰囲気でLA系の音と言えるかも知れません。作っているのはバンクーバーなのでLA関係ないですけどw
また、各ノブの可変がとても上質です。ノブを動かして、それについてくる音の変化の質感がとても高い。実際オーディオ系のポットを使っているそうですが、そういう高級オーディオのノブを動かしたような重厚感のある音の可変をします。そしてノブは最小から最大までフルに使うことができ、どんな設定にしても音が全く破綻しません。
クリッピングの切替は味付け程度です。大きく音が変わることはありませんでした。なので逆に、積極的に好みの設定を選んで使うことが出来ます。「このモードはこの時は使えるけどそれ以外は」というようなこともありません。そういう意味では安定感、質感など個人的な印象としてはLandgraff以上に好みかもしれません。
とてつもないペダルです。中身のこだわりがやたらとすごいペダルって、時に音は良いけど扱うのが大変だったり、あまりにもハイレベルすぎて使えるジャンルが限られてしまったりすることがありますが、このペダルは違いました。さすがに価格面から薦めることはありませんが、初心者の人が弾いてもこれは良いと分かるペダルではないかと思います。このペダルの音が好きじゃないということはあっても、嫌い、という人はそうそういないんじゃないかと・・・そのあたりはLandgraffにも言えることですが、絶妙にバランスされて、その全てがハイレベルです。そして使いやすい。つまり入り口が広くて奥が深いペダルということですね。そういうペダルは名機と呼ばれることが多いです。
あえてマイナスな要因を述べるとすれば筐体が大きいことくらいです。それ以外は何も言うことがないですね。すごすぎて、なかなか言葉にしづらいペダルでした。
久しぶりにここまでのペダルを触りました。これは本気で欲しいと思います。なかなか売っていないのが難点ではありますが、もし見かけたら是非試してみてください。
サンプルムービー
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