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ヘッドフォン・イヤフォンの「読み方」と「選び方」

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周りの音に邪魔されず、近所や家族を邪魔せずに大音量で音を聴く。
そんな時に欠かせないのがヘッドフォンやイヤフォンです。
それこそ100均から数十万円のモデルまで、様々なヘッドフォンやイヤフォンが発売され、たいていの人が何かしら1つは持っているものでありながら、意外とその“スペックの読み方”が分かりにくいものだったりしますね。

今回はヘッドフォンやイヤフォンは一体どういうものなのか、ということをいろいろまとめてみたいと思います。
どちらかというと音楽制作やプレイヤーとしての視点からの話が多めになります。オーディオ系、リスニング視点はあまり入っていません。

  • ヘッドフォンはスピーカーである

スピーカーとヘッドフォンは対になる形で書かれることが多いです。ですが、まず忘れてはいけないのがヘッドフォンはスピーカーの1種ということ。
スピーカー(正確にラウドスピーカー)とは、電気信号を音に変える装置のことです。スピーカーと一言で言うとキャビネット(箱の部分)全体を指すこともあれば、1つ1つのスピーカーユニット自体を指すこともあります。スピーカーユニットはドライバーとも呼ばれます。
ヘッドフォンやイヤフォンでは音を作る部分をドライバーと呼びますが、つまりヘッドフォンやイヤフォンの中にもスピーカーユニットが入っている、という意味でスピーカーの1種です。
ちなみに一般的に家庭などで音を聴くオーディオとしてのスピーカーは近距離で聴くことを目的にしたニアフィールドスピーカー。ライブハウスとかクラブとかスタジオとかに置かれている大きなスピーカーはラージスピーカーといいます。ヘッドフォンやイヤフォンは、ニアフィールドよりもさらに近距離、耳をほぼくっつけて使うことを前提にした構造のスピーカーとなっています。
なぜこんなことを書いたかというと、ヘッドフォンに記載される”スペック”はスピーカーとしてのものと共通するからです。

  • ヘッドフォンとイヤフォン

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ヘッドフォンとイヤフォンの違いはシンプル。頭に載せ、耳を外側から覆うように装着するのがヘッドフォン、頭に載せるのではなく、耳に入れて装着するのがイヤフォンです。
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中にはこんな感じで、耳に掛けて使うイヤフォンとヘッドフォンの中間みたいな”耳掛け型”ヘッドフォンもあったりします。もちろんモノによりますが、このスタイルの違いは構造も異なってきます。必然的にヘッドフォンはイヤフォンよりもドライバーが大きくなります。スピーカーでも口径が大きくなるとローが出やすくなりますが、同様にヘッドフォンとイヤフォンを比べるとヘッドフォンの方が低域がしっかりと出やすい傾向があります。ドライバー自体の構造でも、ヘッドフォンは1つのドライバーで上から下までを出すフルレンジ型が多いのに対し、イヤフォンは(特に高級モデルでは)複数のドライバーを使用して帯域ごとに音を出すマルチウェイ型となっていることも多いですね。
また、音漏れはイヤフォンの方がヘッドフォンより少ないですね。
ヘッドフォンでマルチウェイだと、LRのステレオではなくサラウンドヘッドフォン(5.1chとか9.1chとかのヘッドフォン)になったりします。まぁほとんどのサラウンドヘッドフォンはLRステレオをエフェクトでサラウンド化しているので、片側複数のドライバーを持つヘッドフォンは一部を除きほとんど無いと言っても良いのかも知れません。

  • ヘッドフォンの種類

ヘッドフォンは、まず大きく2つのタイプに分かれます。それが密閉型と開放型。
密閉型はドライバーの背面(つまりヘッドフォンの外側)が密閉されていて、音漏れが少ないタイプ。密閉されている分、開放型と比べて音場が狭くなる傾向があり、同時にパワフルな音を作りやすい傾向があります。この辺は設計とかいろいろな要素があるのであくまで傾向です。
開放型はドライバーの背面が開放され、より広い音場と自然な音色を得意とする傾向があります。その分音漏れは大きいので、「隣にいる人に配慮して使う」ものではなく、「家/部屋から音が漏れなければいい」程度の使い方に向いています。公共交通機関とかでヘッドフォンを使うなら密閉型を選びましょう。
なお、開放型ヘッドフォンは音漏れが大きいですが、逆に外の音がヘッドフォンの中に入ってくるのもあります。なのでうるさい環境で開放型ヘッドフォンだと音に集中できなかったりします。高いこだわりを持つ人だと、エアコンの音が気になってしまうということもあるほど。真夏にエアコン切ってヘッドフォンとかだとまた別のものが気になってきそうですが、そうしてでも良い音を聴きたい、という世界もあるわけです。逆に、エアコンを効かせた部屋でも静粛な中に流れる音を聴きたいから密閉型を選ぶという考え方もあるわけですね。

ドライバーのタイプにもいろいろあります。こちらもまず大きく分けてダイナミック型と静電型(コンデンサ型)。スピーカーの構造はざっくり言ってマイクと共通します。ダイナミックマイクとコンデンサマイクがあるように、ヘッドフォンにもダイナミックとコンデンサがあります。世にあるヘッドフォンの大多数はダイナミック型です。コンデンサ型はSTAXが特に有名ですが、他のメーカーでも一部発売されているものもありますね。コンデンサ型はダイナミック型よりもより音源に忠実な再生ができる傾向があります。マイクでもそうですけど、コンデンサ型は駆動に電源が必要となるため、専用の電源供給機能を備えたヘッドフォンアンプが必要となります。そのため基本的に高級モデルにしかラインナップされていません。

ダイナミック型のドライバーのほとんどはドーム型といって、一般的なスピーカーでも多く使われているスタイルのものです。そんな中、最近ハイエンドモデルを中心に出てきているのが平面駆動型というもの(技術自体は昔からあります)で、ドライバーの振動部を平面にしてより均一に振動させることで音自体をくっきりとさせるものがあります。駆動にパワーが必要となるため大きく重くなりやすい、という欠点もあります。

  • イヤフォンの種類


イヤフォンもヘッドフォン同様いろいろな種類があります。どちらかというと音漏れをなくしたいからヘッドフォンよりイヤフォンが選ばれることが多いのでほとんどが密閉型ですが、開放型もありますし、大きくなりがちな平面駆動型、専用アンプが必要なコンデンサ型も少数ながらあります。

ですがイヤフォンの場合はむしろスタイルで分けられることの方が多いですね。大きく分けてインナーイヤー型とカナル型。インナーイヤーは多くのイヤフォンに見られる、耳の穴の外側に入れて使うもの。カナル型は耳栓型で、インナーイヤーよりもより奥、外耳まで挿入して使うタイプです。インナーイヤー型は気軽に装着でき、外で使う時にも外の音が小さく聞こえる分、あまり大音量で聴くと音漏れもしやすいという傾向。カナル型は耳の奥まで入れるので、取り付けると周りの音がほぼ聞こえなくなり、大音量でも音漏れしないので没入感が得られる反面、合うものを選ばないと装着感が悪いということがあり得ます。かゆくなる程度ならよくありますが、場合によってはずっと付けてると痛いものもあったりしますね。個人差ありますけど。ただあの没入感は普通のインナーイヤー型では得られないので、合うものが見つかれば楽しいかもしれません。学生時代は電車の通学中カナル型で爆音で聴いてました。帰るときとか、電車の扉の前に立って、夕陽に照らされた街を見ながら爆音で音楽を聴くのが楽しかったです。

  • カスタムイヤーモニター


ある意味でカナル型の極致の1つとも言えるのが、プロがステージなどでも使用しているイヤモニ、カスタムイヤーモニターです。
まぁイヤフォンでモニターできればイヤーモニターには違いないですし、カナル型のイヤフォンもイヤモニに入ることもありますが、プロ仕様のものは、個人の耳の形に合わせ、カナル部がすっぽりと耳に入って覆うようにカスタムメイドで作られます。誰もがそれを使っているわけではありませんが、トッププロだとカスタムのイヤモニを使っていることが多いですね。
耳の形に合わせているので無理に外耳に負担をかけすぎず、快適に付けることができます。

  • イヤフォンかヘッドフォンか

これは使う場所、場面によってどちらが良いかは異なると思います。音漏れを絶対にしたくないけど大音量で聴きたいならカナル型イヤフォンでしょうし、そこまで大音量でなくても出先で使うならコンパクトなイヤフォンの方が使いやすいことは多いと思います。自宅でゆっくりコンサートホールみたいな音を聴きたいなら開放型ヘッドフォンの方が有利です。ヘッドフォンの方が上から下まで帯域が広い、特に低音がしっかり出る傾向があるので、音楽制作ならヘッドフォンの方が向いていると言えます。
では、より深く、ヘッドフォンやイヤフォンの「スペック」にまつわる部分を見てみましょう。

  • 電気信号を音にするために

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そもそも、メディアに記録されたりストリーミングでダウンロードされた音源というのは電気信号です。今ならそのほとんどはデジタル信号ですね。もちろんアナログレコードとかカセットテープはアナログの電気信号ですけど。また、エレキギターや電子楽器が生み出す信号、歌をマイクで拾った信号も電気信号です。これらの電気信号が音に変わるとき、必要な流れというのは基本的に同じです。
それが、電気信号をまずアナログにしてアナログ信号をアンプで増幅し、スピーカーやイヤフォン、ヘッドフォンを鳴らす、という形。これはパソコンのイヤフォンジャックであっても、ギターアンプであっても、オーディオルームであっても変わりません。(デジタル・アナログ変換の有無くらい。アナログ変換後は同じです。)そのことをまず基本として念頭に置いておくと、いろいろなスペックが分かりやすくなります。

  • ヘッドフォン・イヤフォンのインピーダンス


▲ハイエンド開放型ヘッドフォンを代表するSENNHEISER HD800Sのインピーダンスは300Ω。

イヤフォンやヘッドフォンで出てくるスペックで、まず出てくるのがインピーダンスです。インピーダンスの単位はΩ。インピーダンスというのは交流抵抗で、基本的に大きいほど電流が流れにくい=大きな音を出すのにパワーが要る、ということです。
だいたいスペックの最初に書いてあるので、これでヘッドフォンの質や音の傾向が知れるのでは、と思うかも知れませんが、それは全く関係ありません。ただ一種の方向として、高級モデルの方がインピーダンスは高めのことが多いです。なぜなら音がクリアになりやすいから。抵抗が大きくなることで微弱なノイズ成分が少なくなる傾向があり、歪み(オーディオ機器では歪みは少ない方が綺麗な音です。ギターの歪みとかとはまた別の話)も少なくなる傾向があります。
そのため、高級モデルではインピーダンスはある程度高めに設計されることが多いです。インピーダンスが高くなる=パワーが要るので、別途ヘッドフォンアンプを使用する必要があったり、使用した方が良い結果となる、ということが多くなってきます。スマホとかに直接接続することを前提としたモデルはインピーダンスは低くなります。だいたい30~40Ωなら低め、それ以上なら高めです。つまり、30~40Ωのヘッドフォンなら、スマホとかPCの「イヤフォン端子」に直接挿しても十分なパワーが出ます。
40~60Ωくらいになると、イヤフォン端子では若干パワー不足になってきます。パワー不足になると音量が下がるということですが、これは普段から音量最大で聴くような真似でもしていない限り、音量を上げればたいてい十分です。ただ、音が暗くなったり、ちょっと遠くに感じたりする、それがパワー不足の結果です。このあたりでは別途ヘッドフォンアンプを使う方がより音をしっかり鳴らせるようになります。それ以上…3桁Ωとかだと、ヘッドフォンアンプはほぼ必須となってくるでしょう。
ヘッドフォンのスペックに於けるインピーダンスは、こんな感じで接続する機材に対して間にヘッドフォンアンプを入れるか入れないか、入れた方がいいか入れなくても良いか、という違いを見るためのものと思うと良いです。なので、ワイヤレスモデルとかだとそもそもインピーダンスの記載がないことも多いです。

  • ヘッドフォンアンプとは

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ヘッドフォンアンプ。もしあなたがオーディオ用ヘッドフォンアンプを持っている・使っているなら、一般的に見れば相当な”オーディオマニア”に見られているかもしれません。
実際それくらい、一般的な、音楽は好きだけどオーディオは別にこだわらない、という人から見ると謎の機材。それがヘッドフォンアンプです。
ヘッドフォンアンプとは、その名の通り、ヘッドフォンを鳴らすためのアンプです。先ほど電気信号が音になるまでで、シグナルを増幅してスピーカーに出すという工程がありましたが、そのシグナルを増幅する部分です。
単に「ヘッドフォンアンプ」というと、それ自体が独立した機材となっているものを指しますが、イヤフォン端子やヘッドフォン端子には必ずヘッドフォンアンプが付いています。ないと音が鳴りません。
じゃあ個別のヘッドフォンアンプがなぜ存在するのか。それはまず出力の違いがあります。いわゆる普通のイヤフォン端子やヘッドフォン端子のヘッドフォンアンプは、出力が弱いのです。
例を挙げると、オーディオインターフェイスの定番、Steinberg URシリーズの多く(一部除く)のヘッドフォン端子は35mW+35mWのステレオで、出力としては70mW(@40Ω)です。この@40Ωというのは、ヘッドフォンのインピーダンスによって出力が変わるから。インピーダンスが低いほど出力は上がり、高いほど下がります。(フルチューブヘッドフォンアンプはインピーダンスに依存しないものもありますが、接続できるインピーダンスが限られていたりもします。というか今フルチューブヘッドフォンアンプはほとんどありませんけど…)
これが、例えば定番の”ポタアン”ことポータブルヘッドフォンアンプ、Fiio Q3なら300mW(32Ω)。据え置き型でそこそこ手頃な本格モデル、Fostex HP-A4なら 100mW+100mWの200mW(32Ω)。まぁヘッドフォンに限らず、どんなアンプでも出力=音量が確実に決まるわけではありませんが、よりパワーのある音が出せるというのは分かると思います。パワーがある=音量だけでなく、音質もよりクリアでダイナミクスレンジが広くなる(強い音はより強く、弱い音はより弱くなる)ということになります。この辺はもちろんアンプ自体の音質の傾向などもあります。高級モデルだから誰にとっても良い音かというとそういうことはもちろんありません。ありませんが、価格が数倍違うと、基本的に音質的にも良い傾向になるのもまた確かです。
ちなみに、うちで使っているFostex HP-A8は700mW+700mW(32Ω)のパワーがあり、3桁Ωのヘッドフォンも十分に駆動できるモデルとなります。つまり、「基本的に」高いインピーダンスのヘッドフォンをちゃんと鳴らすために使うのがヘッドフォンアンプということです。ただ、音が元気になったり、多少…ほんの少しですが味付けもあるので、低インピーダンスのヘッドフォンに使ってもまた効果はあったりします。
まぁ、考えてみれば分かると思うんですけど、一般的なPHONES端子とかに内蔵されてる小さなヘッドフォンアンプと、それ自体がそこそこのサイズになる個別機材のヘッドフォンアンプ、どっちがコストかかっているかといえば…。もちろん高ければなんでもいいってわけじゃないですけど、コストがかかっている分音質が良くなる可能性は高いと言えるかと思います。

ちなみに、同じアンプの出力で実際に聞こえる音量の大きさは、ヘッドフォンごとに異なります。これは感度とか能率とかいう言葉で表記されているもので、dB/mWの単位。コレ見れば分かりますが、ある出力に対して実際に出る音量、という数字です。でかいほど音が大きいヘッドフォンになります。例えばモニターヘッドフォンとして有名なMDR-CD900STはインピーダンスが63Ωと高めですが、感度が106dB/mWと、かなり大きな音を出します。同じモニターヘッドフォンというジャンルでも、Shure SRH1540の場合、インピーダンスは42Ωですが感度が99 dB/mWとなっていて、実際に同じ設定のヘッドフォンアンプで出すと900STの方が音量が大きく聞こえる、ということもあります。

  • アンプの出力とインピーダンス、音量、音質の関係

基本的にアンプは出力が高いほど音量は大きくできます。そして、インピーダンスは低いほど音量は大きくなる傾向があります。
これだけを見ると、低インピーダンスかつ高出力アンプの組み合わせがとても”強そう”に見えますが、じつは一概にそうではありません。もちろん機種間によって多少の差異はあるものの、アンプの特性による「ある音量」と「音質」の関係は、インピーダンスに関係なくある程度相関するのです。
例えば、あるヘッドフォンアンプは、ある出力を越えると音が歪み始めるとします。これは「ボリュームコントロールの位置」ではなく絶対的な「出力」の話。そして、インピーダンスが低いほど、アンプの出力は高くなります。つまり…低いインピーダンスほど、音が歪みやすくなる、ということを示しています。
どの程度の出力で、どの程度歪みが起こるかはアンプの設計により異なります。これが上で書いた「コストのかけ方」です。つまり、上質な(=高級な、とは限りません)ヘッドフォンアンプほど、高出力でも歪みが少なくなります。高出力で歪まないということは、低出力ではもっと歪まない。
オーディオに於いて歪みが少ない=音がクリアでちゃんと聞こえる、解像度が高いということになります(音の暖かさとか硬さとは別の話)。だから低いインピーダンスのイヤフォン・ヘッドフォンでも、別途個別のヘッドフォンアンプを使う意味はあります。
そして、高級モデルのヘッドフォンにインピーダンスが高いモデルが多い理由は、それだけ音を歪ませないよう設計したら「結果的に」そうなる傾向がある、ということです。逆に低価格なモデルは、音質を多少犠牲にしてでも音をちゃんと「聴く音量で」出すことを目的としていることが多いため、低いインピーダンスのモデルが多くなる、ということですね。

  • DACヘッドフォンアンプ


今、ヘッドフォンアンプ、特に数万円~のモデルなどを見ると、だいたいDACが付いています。DACとはデジタル・アナログ・コンバーター。つまりAD/DAのDAの部分ですね。ヘッドフォンアンプ自体はアナログ信号を増幅するものなので、アナログ回路です。ですが、DACを内蔵することで、ヘッドフォンアンプにデジタル信号を直接流し込み、内部でアナログに変換してアンプを通し、出力する、ということができます。これがDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。
単にDA変換のみでもDACですが、DAC内蔵というと、だいたい”ハイレゾ”対応です。よほど特殊なモデルでない限り、DAC内蔵=ハイレゾ音源対応と思って良いです。(対応する音源のコーデックは機種ごとに違いがある場合があります。)
DACヘッドフォンアンプの力を最大限に発揮するなら、USBでPCと接続するか、デジタルアウトからデジタルシグナルを入力する形になります。USBでPCと接続するとオーディオインターフェイス(出力のみ)として扱われるため、既存のオーディオインターフェイスを使っていると切り替えが必要となってしまうという点はどうしてもありますね…。音楽制作も行うなら、デジタルアウト搭載のオーディオインターフェイスとの組み合わせが一番良いのかなと思います。(といいつつ、うちのオーディオインターフェイスにデジタルアウトがないので、私のヘッドフォンアンプはDAC内蔵にもかかわらず専らアナログヘッドフォンアンプになってます…。)

  • バランス接続

ヘッドフォンアンプで、ここ数年くらいメジャーになってきた用語、バランス接続。楽器をやっていればXLRバランス接続とTSフォンのアンバランス接続という言葉を聞くことがあると思いますが、実はヘッドフォンでのバランス接続と、楽器系のバランス接続は意味が異なっていたりします。

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先に楽器系のバランス接続について書きます。この「バランス接続」はDIなどのXLRアウトが多いですが、TRS端子(ステレオフォン)を使うこともできます。仕組みはシンプルで、まず出力するオーディオシグナルを2つにスプリットします。続いて、スプリットした片方の位相を反転します。そのままケーブルを通し、接続先の入力で、反転した片方の位相を元に戻して2つのシグナルを混ぜます。
こうすることで、「機材の出力から入力の間に加わった信号を打ち消す」ことができます。(2つのシグナルラインに同じ位相で加わったシグナルは、後で片方を反転して混ぜ合わせるすることでその部分だけを消せるという仕組み。)出力から入力の間に加わった信号…すなわち、ケーブル部に乗ったノイズ成分です。長いケーブルを使うときには特に有効です。ただしこれはアンプ前のインピーダンスの高い、ノイズが乗りやすい信号だからこそ有効なわけです。(ギターではエフェクターやバッファを通せばローインピーダンスと言いますが、このバッファを通した程度のギターシグナルの「ローインピーダンス」はオーディオシグナル視点で見ればかなりのハイインピーダンスシグナルです。)

一方、ヘッドフォンのケーブルは長くても3mくらいですし、そもそもがアンプを通したローインピーダンスシグナルのため、この楽器系のハイインピーダンスシグナルで用いるバランス接続をしてもほぼ効果はないと言えます。(例えばギターアンプを例に取ると、アンプからキャビネットに接続するスピーカーケーブルはシールディングされていないですよね。それはノイズに強いローインピーダンスシグナルで、むしろシールディングによる音の変化の影響の方が大きいからです。ヘッドフォンもアンプ以降のシグナルがくるものですから、ケーブルに乗るノイズを気にすることはほぼありません。)

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では、ヘッドフォンに於けるバランス接続とは何でしょうか。
ヘッドフォンはステレオですよね。一般的なTRSステレオ端子は、Tip・Ring・Sleeveという部分があり、それぞれで3つの信号を通します。このうちTipとRingがLとRの音になる信号で、Sleeveはグラウンド、つまりヘッドフォン側からアンプに戻る電流です。ところが電流ってのはやっかいで、逆流するんです。このグラウンドのシグナルはLとRのシグナルを混ぜて戻します。つまり、グラウンドでLとRが混ざった部分が逆流して、クロストークと呼ばれる音成分が再生音に混ざってしまいます。
これを回避するため、LとRそれぞれのグラウンドを分けてアンプに戻すのが、ヘッドフォンでのバランス接続です。つまりデュアルモノのように扱う、ということ。
なのでヘッドフォンのバランス接続は4ピン端子を使います。4ピンのXLRだったり、4ピンジャックだったり、SONY方式だと5ピンジャックを使ったりしますが接続はいわゆるデュアルモノです。こうすることで、クロストークをなくし、より高い解像度で音を出す、というのがバランス接続。なお音楽は感覚的なものがありますので、バランス接続をした方が必ず良くなる、というわけでもないのはまた別の話です。
バランス接続を行うためには、バランス接続対応のヘッドフォンアンプと、バランス接続対応のヘッドフォンを使う必要があります。なのでこれをやりたいなら、対応するものを選びましょう。

  • リケーブル


オーディオ系でよく行われるのがリケーブル。リケーブルとは、ケーブルを替えるということです。ギターとか楽器でもそうですけど、ケーブルが変わると音が変わります。ヘッドフォンは(特に高級モデルは)ケーブルが取り外せるようになっていて、そのヘッドフォンの端子に合わせた別ケーブルが販売されていたりします。付属のケーブルでは満足ができない、よりハイファイな(オーディオ系だとだいたい高級モデル=ハイファイ傾向)音を聴きたい、というときにリケーブルしたりします。まぁギターのケーブルと比べればその差は小さいですし、「付属のケーブルで十分」という考え方もあれば、「せっかくのいいヘッドフォン、付属ケーブルじゃもったいない」という考え方もあったりします。どっちが正解とかはないですね。ただ、特に高級モデルになるとリケーブルは当たり前にされる(する/しないは自由ですが)ことを想定して作られていたりもします。

  • 再生可能周波数

もう1つ、ヘッドフォンのスペックで記載されるのが再生可能周波数。上から下までどれだけの範囲の音を出せますよ、という表記です。たいていがHzでその範囲を表示しています。一部それと別にdBの表示があることがあります。周波数特性は、そこに記載され「ていない」周波数になると完全にブチッと切れるわけではなく、ある程度なだらかに落ちます。dB表記は、それが○dB以上の範囲でどの程度の周波数帯を再生できるか、という意味ですね。
この辺はメーカーの考え方などもあったりするんですけど…ある程度の指標にはなるのと、同メーカーのモデル間であれば通常は同じ指標で表示されると考えてよいかと思います。そういう表記の違いが多少あるとはいえ、再生可能周波数は広いほど、狭いモデルで聞こえなかった音が聞こえます。ただし、「音の好み」「音の特性」とはまた別の話で、単純にどれだけの周波数間を再生できるか、というだけなので、広ければ良い、狭ければ悪いとは限りません。一方、できる限り音源に忠実な再生をするためには広い方が望ましい(つまり聞こえない部分がない方がリアルに近い)のも確かなので、高級モデルほど広い周波数帯を再生できるように作られているという傾向もあります。

  • “ハイレゾ”と周波数


ハイレゾとはハイレゾリューション=高解像度という意味です。音をより高い解像度でくっきりと再生できる、という意味で、デジタル音源の用語です。アナログレコード等のアナログ音源にはハイレゾという概念はありません。
一般的に、ヒトの可聴域は20-20kHz程度と言われています。もちろん個人差がありますけど。CD音質、すなわち16bit/44.1kHzではこの約20kHzより上がカットされます。
ハイレゾ音源は24bit/96kHz以上のものを指し、これは40kHzより上がカットされています。この40kHzに対応していることが、ハイレゾ対応の条件です。(ちなみに44.1kHzとか96kHzはデジタルサンプルする速度、20kHzとか40kHzは再生できる音の高さで、単位は同じですが別の意味です。音、というか波形を変えないためには再生限界の周波数の2倍程度でサンプリングする必要があるためです/サンプリング定理)
もちろん周波数範囲だけでなく、真のハイレゾ音源(この辺書くと長くなるので割愛しますが、レコーディングから全てをハイレゾ対応の音質で行ったものを真のハイレゾ音源と言っています。そこまでのものはあまり存在しなかったりします)であれば他の帯域の解像度も高まります。

ちなみに、音楽制作をしているならハイレゾ音質とCD音質の違いは簡単に分かります。DAWのプロジェクトのフォーマットを24bitとか32bitとかに設定して音を作り、それを16bitで書き出すと音が少し変わりますよね。このときDAW上でのプレビューがハイレゾ音質、16bit書き出しがCD音質です。ハイレゾ対応機器であればより分かりますが、そうでなくても違いが分かります。そして、「違う」のは分かるとしてもそのハイレゾサウンドが必ずしも必要かというと、ハイレゾの方が良いこともあれば、別に気にならないこともある、というのもまた分かると思います。

何が言いたいかというと、「ハイレゾ対応」ヘッドフォンは、かなり広い周波数帯を再生できるヘッドフォンという意味でもありますよ、ということ。ハイレゾ音源を聴かない場合でも、ハイレゾ対応ヘッドフォンの方が解像度が高く聞こえる、という傾向があります。

  • ノイズキャンセル


ヘッドフォンやイヤフォンには、ノイズキャンセルが付いているものもあります。ノイズキャンセルとは、環境音をヘッドフォンやイヤフォンが感知して、それと逆位相の信号を加えることで、環境音からの影響を排除する技術。アクティブなので電源や充電が必要となります。ノイズキャンセル機構のあるモデルは、基本的に中価格帯までのモデルとなっています。また主にカジュアルなリスニング用途向けのものが多いため、あまり音楽制作向けとかピュアオーディオ向けではないのかもしれません。開放型のヘッドフォンとかに組み合わせた面白そうだと個人的には思うんですが、まぁピュアオーディオ系の人は嫌がるだろうなと…余計な信号を混ぜないでくれとなるのかなと思います。

  • ワイヤレスヘッドフォン・イヤフォン


ノイズキャンセルと同じく、どちらかというとカジュアルなリスニング向けのモデルに使われるスタイルです。Bluetooth接続がほとんどですが、Wi-Fi接続でハイレゾや高音質対応したモデル(Bluetoothは基本ハイレゾ非対応、ただしWi-Fiはルータが必要)や、送信機を組み合わせて無線伝送方式(ギターとかのワイヤレスと同じ方式)でレイテンシをなくしたモデルなどもあります。
BluetoothとWI-Fiの音質・ハイレゾについてはこちらの記事がわかりやすいです。
www.pioneer-itstore.jp

この辺も音楽制作の視点からだとあまり使うことはないかもしれません。

  • コーデック

音楽制作視点ではあまり使わないと書いたワイヤレスですが、ついでなのでワイヤレスヘッドフォンで出てくるスペックを。
ワイヤレスヘッドフォンやイヤフォンの構造は、基本的にデジタルシグナルを受信し、それを内部で変換、ドライバーを駆動できるパワーにして出力しています。つまり、DAC内蔵ヘッドフォンアンプがヘッドフォンやイヤフォンの中に入っているような構造です。DACはデジタル信号をアナログに変えるものですが、対応する信号のコーデックでないと正しく変換ができません。なので、ワイヤレスのヘッドフォンやイヤフォンには、「このコーデック(mp3とかaacとか)が使えますよ」ということが書かれています。

  • ヘッドフォン/イヤフォンが目指すものを知る


ということで、ここまでイヤフォンやヘッドフォンにまつわるいろいろな用語やら話を載せてきました。膨大な数が発売されているイヤフォンやヘッドフォンは、それぞれのモデルが目的を持って作られています。
重さなんか関係ない、ただただ最強の解像度を目指したモデルや、快適に付けられてハイエンドなサウンドを求めるモデルもあれば、より手軽に使えて気軽に持って行けるモデル、とにかく安く作られたものや、値段にこだわらないもの。部屋からや建物から音が漏れなければOKなものもあれば、満員電車で大音量で音を聴きたい人のためのもの…音楽制作でも、レコーディングでの小さなミスやノイズを見つけるためのモニターもあれば、定位やバランス、広い音域に対応してミックス時にもある程度使えることを想定したものなど、それぞれの目的に合わせ、決められた価格帯の中でできる限りの技術を投入して作られています。
このヘッドフォンはこういうためのものだから、自分にとって必要か不要かを考えるためにも、イヤフォンやヘッドフォンの説明やスペックが何を意味しているのかを知るのは良いと思います。

  • 自分が必要とするヘッドフォン/イヤフォンを知る

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ヘッドフォンやイヤフォンがどういう使い方を目指して作られているのかがわかり、さらに自分が必要としているものが分かれば、どのモデルを選ぶかを絞るのは難しくありません。
例えば「良いヘッドフォンが欲しいけどどれがいいだろう」となった時、価格帯も含めて、自分がどんなものが欲しいかを考えることも重要になってきます。
もちろん、見た目も含めて。大事ですよね、デザインも。

  • 「おすすめ○○選」を見る前に

ヘッドフォンやイヤフォンは、「オススメ○○選」みたいなページがたくさんあります。
大きな特徴として、「動画で直接の比較」ができないのもヘッドフォンやイヤフォン。なぜなら、そこから出ている音を録るのがとても難しいからです。

こういうパイノーラルマイクにヘッドフォンをかぶせればもしかしたら音の違いとかは録れるかもしれませんが…結局聞こえる音と違ってたり。楽器とかエフェクターだったら、こういう音が出ますよ、という参考を動画で見つけることができますが、そういうのがないので、文字情報に頼ることになります。
もちろん実際に大きなショップに行って試聴するのは良い手。でもこれだけ膨大にあると、なかなか目的のモデルが置いていなかったりしますね。

だから、ヘッドフォンやイヤフォンがスペックで何を言っているのか、どういうことを伝えようとしているのかを理解できるようになるのはとても良いと思います。
その上で、最後にそのモデルのレビューだったり、オススメとか定番モデルを見て参考にしてみるのが良いと思います。
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例えば、冒頭にも載せたこの画像のMDR-Z1Rですが、これ最近買いました。2年ほど、ハイエンドなヘッドフォンが欲しいなと思っていて、だらだらと見ていたんです。それこそオススメとか定番とか。
ところが結局分からなかったんですよ。何が自分に合っているのかが。
帰省した際に大阪のeイヤホンに行って試聴とかもしたんですけど、それもやっぱりよく分からん。父親がオーディオ好きで実家にSENNHEISER HD800はあったので聴いてみたらすごく良かったんですけど、どっちかと言えばクラシックのリスニングに向いている感じで、ロック系の制作向けではなさそうでした。また、うちの環境的に開放型より密閉型の方が良さそうだと思ったりして…いろいろ悩みました。

で、よく考えたらヘッドフォンのこと、あんまりよく分かってないことに気付いて、まずは基本的なスペックの読み方から調べてみました。そしてある程度候補を絞り、自分にとって必要なのはある程度ミックスでも使えること…すなわち音の定位がしっかり見えることと判断し、最終的にレビューで見かけた「定位が最も良く見える(候補だった他モデルと比べて)」というのがあり、決めました。

このヘッドフォンについてのレビューとかはそのうちですが…ちゃんと考えると2年悩んでいた答えが1週間で見つかるものなんだなと思ったので、この記事を書いてみました。
 
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