最初期のディストーション、Distortion+(The EFFECTOR BOOK Vol.54 でも触れられます)から、DS-1、80年代を代表するRATや、“マーシャル系”ディストーションGuv'nor、メタルディストーションMT-2など、多数の人気ペダルが発売されてきました。
もちろんディストーション自体はずっとエフェクターのメイン分類に鳴り続けてきましたが、特に2000年代後半ごろ、ハンドメイドエフェクターブランドが多数出てくる頃にはTS系を中心にオーバードライブが席巻し、ディストーションの人気は少し陰りを見せ始めました。
また、同時にファズの人気も高まり、ことビッグマフ系ペダルはそれまでのディストーションの人気を置き換えるような使い方がされるようになってきました。
一方、デジタルアンプシミュレーターの発達により、特にハイゲインメタルサウンドはアンプシミュレーターの方がどうしてもノイズ成分などでの強みがあったり、より手軽に高価なアンプに近い音色が作れたりで、コンパクトなメタルディストーションはあまり見かけなくなっていきました。
オーバードライブ、ファズ、そしてアンプシミュレーター。ここ数年のディストーションはこれらのエフェクトに少し隠れた存在だったことは否めないと思います。ですが今年になって、ディストーションペダル復権というか、多くのディストーションペダルが発売されています。今回は2021年から今までで発売されたディストーションをまとめてみました。
ではいってみましょう。
ブランド名順に載せていきます。
Alexander Pedals Jubilee Silver Overdrive
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Altero Custom Guitars Mag -Distortion-
Volume、Gain、Tone、Presenceコントロールを搭載。ギターのサウンドを生かし、ハイゲインだけでなくローゲインでもバランスの良いトーンを作るペダルです。
ゲイン設定に応じた可変フィルタ、ローがしっかりと出つつ弦のきらめきも出し、それでいてハイとローが強すぎないように調整されたというペダルとなっています。
アルミ削り出し筐体を用い、レーザー刻印で摩耗しない特性のデザインとなっています。
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Animals Pedal PUSH & PULL DISTORTION
コントロールはシンプルにLEVEL、TONE、DRIVEとなっています。
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Blackstar DEPT.10 DUAL DISTORTION
Ch1はクリーンとクランチ、Ch2はOD1とOD2の切り替えが可能。中央にCab Rigスイッチもあります。インプット、アウトプット、Cab Rigアウトが側面に、背面にはエフェクトループ、USB、XLRがあります。
両モデルラインドライバー、バッファを内蔵しています。
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BOSS HM-2W Heavy Metal
コントロールはLEVEL、L、H、DIST.。LとHはローとハイで、まとめてCOLOR MIXというトーンスタックという位置づけです。モードスイッチをトップパネルに置かないことで、オリジナルのデザインも継承。
Sはスタンダードで、オリジナルのアナログ回路をそのまま再現しつつ、オリジナルでは少し音量が小さかった点を改善しています。
Cはカスタムモードで、さらに攻撃的なトーン、ゲインを上げ、アタックを強調し、ミッドとローを再調整したモードということです。
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Comodoro RAT BASS
DISTORTION、FILTER、VOLUME、BLENDコントロールと中央にクリッピング切り替えスイッチを搭載。
ベース用らしくクリーンブレンドが追加され、LEDとシリコンダイオード、およびクリッピングなしを選択することができます。
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Cusack Music Meta Plexi
BypassとLeadフットスイッチがあります。
Vintage/Modernスイッチはサウンドをヴィンテージプレキシとモダンなマーシャルスタイルで切り替えます。LEADフットスイッチはアウトプットブーストで、Lead Levelスイッチを使って3、6、9dBのブーストができます。
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D-Sound Fisherman
ブリティッシュサウンドを作るディストーションで、6つのコントロールノブを搭載し、細かく音を作る事のできるペダルです。
コントロールはVolume、GainとTreble、Bass、Pres、Tight。
高域と低域の2バンドEQに加え、さらに上を調整するPres(プレゼンス)とさらに下を調整するTightコントロールを搭載。
ミッドをいじらないスタイルなのも良い感じです。
ミッドを上げたりカットするのではなく、上下を細かく操作できることで音色のバランスを取るスタイルとなっています。
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Electro-Harmonix Nano Metal Muff
これまでの最上位モデル同等の機能を持ったスタイルとなっています。コントロールはVOL、GATES、DIST、TREBLE、MID、BASS。
これまでのMetal Muffはブーストとスイッチを備えていましたが、それがなくなり、代わりにゲートコントロールが付いた形ですね。ゲートが効いているときはLEDも点灯します。
また、以前のモデルではメタルマフは少しファズっぽさが加わったサウンドでNu-Metal的なものを意識したサウンドでしたが、より今のメタルに寄せたスタイルとなっています。
Bass、Mid、Trebleの3バンドEQはアクティブ。それぞれ順に14、15、10dB範囲でブースト/カットができます。
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Haunted Labs Old Ruin
ゲインレンジは広く、オーバードライブからハイゲインまで。ただハイゲインといってもメタル系ではなくやはりグランジライクなトーン。
Textureコントロールは特別に調整されていて、このペダルに合った形のトーンコントロールになっています。
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Hilbish Design PESSIMISER
80年代から活動するオルタナ・グランジバンドMelvinsのフロントマン、King Buzzoことバズ・オズボーンとのコラボレーションモデルのディストーションです。
Melvinsの、独特のディストーションサウンドを再現するペダル。
Blast、Mix、Boost、Low、Med、High AFコントロールを搭載。
3バンドEQとクリーンミックスにより広く音色を調整することができます。
ギターだけでなくベース等にも使えるペダルということですね。ペダルのデザインはバズ・オズボーンのパートナー、マッキー・オズボーンによるものです。
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idea Sound Product IDEA-RTX ver.1
ProCo Ratを再解釈して作られたディストーションです。
コントロールはVolume、Tone、Gain、そして3モードのゲイン切り替えスイッチを搭載。
オリジナルヴィンテージのRATよりも広いゲインレンジが設定でき、よりハイゲインな設定も可能。
かなり低出力なピックアップでも十分な出力が得られる範囲まで設定ができるようノブのレンジが広げられていて、使うギターや機材によっては高く設定すると発振することもある、ということです。安全よりも音の追求を取ったスタイルです。
toy-love.hatenablog.com
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JHS Pedals PACKRAT
9タイプのRATサウンドを収録したディストーションです。
コントロールは、RATらしくVOLUME、FILTER、DISTORTION。
そして9タイプのサウンド選択があります。収録サウンドは下記の通り。
- OG:オリジナル。最初期のラージラットのサウンドです。
- WHT:ホワイトフェイス。RATIと呼ばれるコンパクトサイズになったRATの中で初期の、白地のロゴを持つモデルのサウンドです。
- TRB:ターボ。Turbo RATのサウンドを持つLEDクリッピングモード。
- BRAT:ピンク色のカラーで一部から人気のBRATのトーン。インプットバッファとソフトクリッピングを通常のRATに加えたサウンド。
- DRTY:2004年製のYou Dirty RATサウンド。
- LA:1986年、Ibanezが発売した“LA Metal LM7”というモデルのサウンド。TS10とかと同じオフセットしたスイッチの時期です。
- GRF:ハイエンドRAT系ディストーションとして知られるLandgraff MO-Dのサウンドです。
- Croline:ロゴがモードになっていますが、Caroline Guitar Companyのディストーション、WAVE CANNONのサウンドをベースとしたモード。
- JHS:JHS Pedals Rat Pack Rat + 9v ModのモディファイRATサウンド。
kgr harmony X KUROSAWA 陰陽進退
シングル回路オペアンプにLEDクリッピングを採用したディストーションです。コントロールはVol、Tone、Drive。クランチ程度からディストーションまでをカバーするペダルです。アグレッシブなディストーションサウンドを作ります。ノブと南部鉄器プレートを使用しています。
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Limetone Audio JACKAL
基本的にはハイゲインディストーションペダルで、同時にピッキングなどの表現力を持ったサウンドが特徴です。
Biteスイッチは音のエッジやアタック感を切り替えることができます。そしてPlexiスイッチはクラシックなプレキシアンプ系のローゲインサウンドとなります。
また、内部にBalance、Resonance、Presenceトリムポットがあります。3バンドEQの範囲の外側の音色を調整することが出来るようになっています。
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Malaise Forever Golden Guillotine
デュアルOpampで構成された回路を持ち、PreとPostでそれぞれのゲインを調整可能。Cutはトーンですね。
中央のスイッチは3モードで、クリッピングを切り替えてコンプレッションの強さやスムースさを選択するもの。
外装も手書きで、1台1台表情が異なります。
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One Control ANODIZED BROWN DISTORTION 4K
ディストーションでありながらギターのVolumeやピッキングタッチでゲインをコントロールできる高い応答性を持ち、ゲインレンジもかなり広く、ハイゲインなトーンまでカバーするペダル。それでいて音はクリアでモダンなトーンを持っています。
コントロールはGain、Volume、Mid、Treble。それまでのデザインは3ノブでしたが、4ノブ化してMidコントロールを追加し、より広く音が作れるようになっています。
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Papa Goriot Studios RAPTOR
ADVENT同様CMOSにJFETを組み合わせ、ローノイズかつハイゲインに仕上げられたディストーション。
Level、Gain、Bass、Trebleの2バンドEQとBlast/Stabスイッチを搭載。Blastは分厚いサウンドで、Stabは鋭くアタックが強めの音色になります。
こちらからサンプルサウンドを聴くことができます。
Pro-co LIL'RAT
コントロールはVOLUME、FILTER、DISTORTION。通常版RATと同じチップセットで、全く同じコントロールを搭載。FILTERは時計回りでハイカットです。もちろんRATのAの部分にLEDがあります。
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TEISCO DISTORTION PEDAL
コントロールはLevel、Gain、Tone、Presence、そしてTight、MuscleスイッチおよびMoreノブがあります。
ブースターを搭載したディストーションで、クリーンブーストのみを個別に使うこともできます。
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Umbrella Company #24
Volume、Gain、X、ToneコントロールとDensityとChannelスイッチを搭載しています。
Xノブは音の圧、音圧感を調整します。ギターアンプの持つ特性のローエンドだけをブーストできるコントロールとなっています。
また、さらに内部トリムポットで圧を調整できます。
Densityスイッチは音の密度です。中央でOFF、右でハイミッド、左でローミッドの密度を高めます。
続いてChannelスイッチ。こちらはゲインレンジを切り替えることができるスイッチです。中央はノーマルで、クリーントーンをエンハンスして食らい付くようなトーン。右はクランチで、プリブーストにトレブルブーストが加わり、明瞭なトーンに。左はリードで、プリブーストにさらにブーストを追加してハードな歪みを作ります。
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WALRUS AUDIO ERAS
Vol、Gain、Blend、Bass、TrebとModeスイッチを搭載。2バンドEQとクリーンブレンドで音色をコントロールできるペダル。
5つのクリッピングは下記のとおり。
- LEDハードクリッピング:軽いミッドカットを持つタイトなトーン
- シリコンハードクリッピング:コンプレッション強め、軽いミッドカット
- シリコン+LEDハードクリッピング:長いサステインを持つディストーション
- LEDハードクリッピング:モード1よりもさらにミッドをカットしたトーン
- シリコンハードクリッピング:モード2よりもさらにミッドをカットしたトーン
WALRUS AUDIO Iron Horse V3
Iron Horse V2から新たにノブが追加され、ソフトクリックスイッチに変更されています。
コントロールはLevel、Tone、DistortionとSi/LEDノブ。
新たに追加されたSi/LEDノブは、シリコンダイオードとLEDクリッピングの間を連続的に可変できます。
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こんな感じです。見ての通りかなり多くのペダルが作られています。
いくつか傾向もあるので少し分けてみましょう。
- RAT系
Comodoro RAT BASS
idea Sound Product IDEA-RTX ver.1
JHS Pedals PACKRAT
Pro-co LIL'RAT
WALRUS AUDIO Iron Horse V3
- マーシャル/ブリティッシュ系
Alexander Pedals Jubilee Silver Overdrive
Animals Pedal PUSH & PULL DISTORTION
Blackstar DEPT.10 DUAL DISTORTION (ブリティッシュのみではありませんが)
Cusack Music Meta Plexi
D-Sound Fisherman
TEISCO DISTORTION PEDAL
- ハイゲイン系
BOSS HM-2W Heavy Metal
Electro-Harmonix Nano Metal Muff
Haunted Labs Old Ruin
WALRUS AUDIO ERAS
大きく、RAT、マーシャル/ブリティッシュ、そしてハイゲイン。このあたりは伝統的にディストーションの人気のところ。
ただ面白いのは、それに限らず作られたペダルの多くが、かなり「レスポンス」を重視している点です。ハイレスポンスディストーションというペダルが作れるようになってきたことも、最近のディストーションに人気が出てきたところもあるのではないかと思ったりします。
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