自宅で音を出さずにギターを弾いたりする際、そしてレコーディングする際にはヘッドフォンが欠かせません。自宅でのリスニングや深夜のPC、ニコ生やツイキャス等のウェブストリーミング配信・・・人によっては外で音楽を聴くときにもオーバーヘッドタイプのヘッドフォンを使うこともありますね。DJやドラムのモニタなどにもヘッドフォンは使われます。
ヘッドフォンは、音楽や音に関わる人、プレイヤーでもリスナーでも誰もが使うことのあるオーディオ機器だと思います。それだけ幅広い需要があるヘッドフォンは、超低価格から高級品まで様々なモデルが発売されています。
ヘッドフォンには、大きく分けて2種類のタイプがあります。密閉型と開放型です。(イヤフォンもヘッドフォンの一種とすればインイヤータイプを3つ目に分けても良いかもしれません。)この違いは、ハウジング・・・ドライバーユニット(スピーカー)の入った部分の外側が空いているのが開放型、閉じているのが密閉型です。ギターアンプのオープンバックキャビネットとクローズドバックキャビネットみたいな違いです。密閉型は遮音性が高く、ローが強めになる傾向があり、一方で高域の繊細な表現では一歩劣るという感じ。開放型は特に高域での表現力が高いですが、低域が弱くなりやすく、遮音性も低くなります。ちなみにこの遮音性とは、ヘッドフォンをしていない人からの目線の「音漏れ」と、ヘッドフォンをしている人が「外の音が聞こえる」という点の両方を指します。とはいえ、遮音性や音の特性はモデルによっても違っていますので、どの程度を求めるのかによってどちらが良いか、ということは分かれますね。また、密閉型と開放型の中間的な構造のヘッドフォンも一部存在はしています。
今回は、密閉型ヘッドフォン4機種を実際に比較しながら記事を書いていきたいと思います。ちなみにヘッドフォンのレビュー記事って、ほとんどが音源なしなんですよ。まぁ実際それは分からないでもないんです。音を録って比較する、といっても基準となる録り方もありませんし、ヘッドフォンにお金をかける人は録音設備を持っていないことも多かったりします・・・。(すさまじい再生設備があったりしますけどw)
そもそもヘッドフォンで鳴っている音をマイクで録って、それを鳴らしても実際に聞いた音と同じになるはずが無い、というのもあるかと思います。
また、ギターなんかでもそうなんですが、聴き手の再生環境によって音は変わります。時によって微細な違いを丁寧に解説する必要があるのが本格的なヘッドフォンレビューだと思いますが、それを、たとえばラップトップの付属スピーカーで再生されても違いは分からないでしょう。
様々な理由があるのは理解した上で、今回はあえてヘッドフォンのレビューに音源を付けて比較するということをやってみたいと思います。ヘッドフォンで鳴っている音をマイクで録って、それを比較音源として公開します。先に述べておくと、上で書いたとおりですが「実際に聞いた音と同じになるはずが無い」んです。ただ、実際に録って比較してみると、それぞれのヘッドフォンの特徴がより強く反映され、違いとして出たように思います。なので、単品のヘッドフォンの音としてレビューで出すには不適切(実際に聞く音とはけっこう違う)かもしれませんが、比較レビューとしてはありだと思います。
その注意点を先に述べた上で、今回の比較に移りたいと思います。
今回使用するのは、下記の4機種です。
- Shure SRH1540
- beyerdynamic DT1350
- SONY MDR-CD900ST
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
ではまず、各機種の簡単な説明からいきましょう。
Shure SRH1540
まずはこちらから。2013年12月に発売されたShureのヘッドフォンです。Shureといえばマイクやヘッドフォンなど多くのオーディオ機器を製作するアメリカのメーカーですね。ヴォーカルマイクやレコーディングマイクの定番を制作するとして知られるのはもちろん、カナル型インイヤーヘッドフォン(イヤフォン)では1、2を争う人気ブランドです。ヘッドフォンではそこまで頭角を現していませんが、評価の高いモデルも多いです。
今回使用するShure SRH1540は、そんなShureのヘッドフォンの中でもハイエンドモデルに属するものです。密閉型の中ではShureの最高峰ですね。「密閉型ヘッドフォンの模範的なモデル」と言われることもあるらしいです。
オーディオ界に君臨する超高級品、というわけではなく、まぁ高級ヘッドフォンの中ではそこそこな価格帯です。モニタリングヘッドフォンとしても優秀で、昨今の高級モニタリングヘッドフォン、通称「リファレンスモニター」に分類されます。
大型のキャリングケースが付属します。ヘッドフォンサイズからするとこれ以上小さくするのは難しいと思いますが、それでもこれで持ち歩くのはかなり大変なヘッドフォンです。ポータブル用としてはあまりおすすめできません。
ペンケースみたいなのが2つ付いていますが、ここにはヘッドフォンのケーブルがそれぞれ1つずつ入っています。片方は断線時などの予備として使うことができます。
ハウジングにはカーボンを使用。軽量かつ高剛性を実現しています。
イヤーパッド(耳当て)は低密度アルカンターラを使用。高級車のファブリックシートなんかに使われたりする素材です。すべすべしていてふかふか。何カ所かに穴も開けられていて、長時間使用しても蒸れが無いように作られています。
ヘッドバンドは2本。それぞれにクッションが装着されています。ここは普通のクッションでした。
ヘッドバンドの調整は無段階。近未来的なデザインと新素材を組み合わせた構造のヘッドフォンです。
ケーブルは本体から取り外せる方式。Shure独自のコネクタとなっています。
![]() SHURESRH1540【密閉型ヘッドホン】【送料無料】 |
タイプ:ダイナミック密閉型、ネオジムマグネシウム
ドライバー径:40mm
感度:99dB
周波数特性:5〜25,000Hz
最大許容入力:1000mW
インピーダンス:46Ω
プラグ:3.5mmステレオミニ(金メッキ)
質量:約286g(ケーブル除く)
音に関しては後で書くとして、装着感は非常に良いヘッドフォンです。かなり大柄なモデルであるにも関わらず軽量で、かつ素肌、特に耳に触れる部分の素材にもこだわって作られているため、音像の特性とも相まって長いこと使っていても疲れが少ないです。
価格帯は高級ヘッドフォンの下から2番目くらいですかね。密閉型のみで考えれば世界的にも上位にくるモデルです。(そう、高級ヘッドフォンはほとんどが開放型なんです。)レコーディングにも使えて、快適な高級ヘッドフォンを探していて、これに決めたモデルですね。
beyerdynamic DT1350
続いてこちらです。ドイツの有名音響メーカー、beyerdynamicのポータブルヘッドフォンです。1937年に世界で初めてのステレオヘッドフォンを開発したメーカーとして知られています。ちなみに1967年、世界で初めて開放型のヘッドフォンを発売したのがSENNHEISER
です。世界的にも、国産メーカーのSONYやAudio Technica、STAX、Denon、オーストリアのAKG、アメリカのBOSEやShure、イギリスのBowers & Wilkins、そしてドイツSENNHEISER等々と並ぶ人気ヘッドフォンメーカーの1つです。
今回のモデル、beyerdynamic DT1350は2011年4月に発売されたポータブルヘッドフォンです。
Beyerdynamicのフラッグシップモデル、T1と同様の、高い磁束密度を持ったテスラテクノロジーという技術を用いて作られたモデルです。密閉型のコンパクトなヘッドフォンです。ポータブルヘッドフォンとしてはけっこう高級モデルですね。
こちらがキャリングケース。バッグに余裕で入るサイズです。・・・まぁイヤホンなんかと比べるとそこそこのサイズはありますが。
コンパクトなハウジングですが、しっかりとしたクッションが付いています。
ヘッドバンドにもちゃんとクッション付。このあたりはさすがにそれなりの高級モデルならではです。
![]() beyerdynamicDT 1350【送料無料】 |
型式:ダイナミック密閉型
周波数特性:5 - 30,000 Hz
インピーダンス:80Ω
感度:109dB(1mW/500Hz)
最大音圧レベル:129dB(100mW/500Hz)
歪率:0.2%以下(1mW/500Hz)
重量:174g
ケーブル長:約1.5m(片出し、ストレート)
プラグ:3.5mmステレオミニ(金メッキ)/ 6.3mm変換アダプタ付属
このモデルはレビュー記事も書いているので、良ければ見てみてください。装着感は良好なポータブルヘッドフォンです。ただちょっと締め付けが強めなので、あまり長時間使うとちょっと耳のあたりが痛くなってきたりします。この辺はなんとも無い人とそうじゃない人で分かれるかも。ちなみに私にとってこのモデルが初のポータブルヘッドフォンなので、他のモデルと比べて装着感がどう、というのは言うことができません。
SONY MDR-CD900ST
続いてこちら。世界的にスタンダードなモニタリングヘッドフォン、SONY MDR-CD900STです。1989年にSONY
から発売されて以来、長年業務用モニタリングヘッドフォンの定番モデルとして知られています。
業務用ということで、必要なものだけを余さず、できる限りシンプルな構造でつくられたヘッドフォンです。
![]() SONY / MDR-CD900ST モニター ヘッドフォン【横浜店】 |
プロフェッショナルモニターヘッドホン
インピーダンス:63Ω
最大入力:1000mW
再生周波数帯域:5〜30,000Hz
感度:106dB
プラグ形状:ステレオ標準プラグ
ケーブル:2.5m ストレート
重量:200g(コード含まず)
※ 3.5mmステレオミニ変換プラグは付属しておりません。
こちらも音に関しては後から。装着感は、とても普通です。長いこと使っているとちょっと蒸れます。あと耳当てが浅いです。その分コンパクトにまとまるので持ち運びも簡単と言える(ほとんどポータブルヘッドフォンと変わらないくらいのサイズで持ち運べます。)んですが、ドライバーが耳に近いのでそれが音の特性にも出ているような感じもします。
こちらもだいぶ前ですがレビュー記事があります。
electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
最後はこちらです。もともと上の3機種のみの比較を考えていたんですが、そういえば100均ヘッドフォンってどうなの?って思ってさっき買ってきました。ダイソーのヘッドフォンはいくつか種類があるらしいんですが、行ったお店ではこれしかなかったのでこれを買いました。
あれは中学だったか高校だったか・・・そこまで音楽に興味を持っていない友人とダイソーに行った時ヘッドフォンを買っていて、「それどうなん?」と聞いたらそいつが「俺にはこれで十分や」と言っていたのを思い出しました。今のモデルは知りませんが、当時のモデルは壊れやすかったそうです。ただ、壊れて買い換えても数千円のイヤフォンやヘッドフォンを買うより断然安いと言っていました。まぁたしかに、30回買い直しても3000円と考えれば安いですね。
こちらが今回使うヘッドフォンです。耳掛け型のイヤフォンに近いスタイルのヘッドフォンですね。
パッケージにソフトジッパーが付いていて、そのままキャリングケースになります。これは意外と良いアイディアだと思いました。
形式:ダイナミック型
再生周波数帯域:20Hz〜20kHz
インピーダンス:32Ω
音圧感度:107±3dB
定格入力:0.3W
最大許容入力:1W
コード:約1.0m
プラグ:35mmL型ステレオミニプラグ
今日買ってきたので、まだ耳に付けて使ったことがありません。なので装着感は分かりません。
- 音の比較
では、音の比較をしていきたいと思います。
音の比較方法は、最近の記事で出したサンプルサウンドをヘッドフォンで鳴らして、それをマイクで録る形で行います。使うのは、以下の記事から。
- 無料プラグインエフェクトは使えるのか?無料TS系プラグイン、有料プラグイン、ヴィンテージオリジナルを比べてみよう!
- ブラックフェイス期のフェンダーアンプ再現、「One Control Sonic Blue Twanger」レビューします!BD-2Wともちょっとだけ比べます!
- 宅録+おうちミックスでギターの音圧を上げてみよう! Part.2 〜ミックスでさらに音圧を〜
この記事用に録ったものから1つずつ、3つのサンプルサウンドを使って、音を比較してみましょう。
で、さっきから「ヘッドフォンで鳴らした音をマイクで録って」と言っていますが、その方法はこんな感じです。
マイクはコンデンサマイク、AKG C314を使います。指向性を双指向性に設定し、ダイヤフラムの前後から音を録れる形にします。そしてマイクにヘッドフォンを取り付けて音を録ります。
各モデル、録っている様子は以下の通り。
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
こんな感じです。紐で縛ってマイクに固定しています。では、音を比べましょう。オリジナルサウンド、その後価格が高い順に比べてみましょう。
- ヘッドフォンサウンド比較 その1 ギターのみの音
- オリジナルサウンド
(聴けない場合はこちら)
- Shure SRH1540
(聴けない場合はこちら)
- beyerdynamic DT1350
(聴けない場合はこちら)
- SONY MDR-CD900ST
(聴けない場合はこちら)
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
(聴けない場合はこちら)
- ヘッドフォンサウンド比較 その2 バンドサウンド
- オリジナルサウンド
(聴けない場合はこちら)
- Shure SRH1540
(聴けない場合はこちら)
- beyerdynamic DT1350
(聴けない場合はこちら)
- SONY MDR-CD900ST
(聴けない場合はこちら)
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
(聴けない場合はこちら)
- ヘッドフォンサウンド比較 その3 バンドサウンド 高音圧
- オリジナルサウンド
(聴けない場合はこちら)
- Shure SRH1540
(聴けない場合はこちら)
- beyerdynamic DT1350
(聴けない場合はこちら)
- SONY MDR-CD900ST
(聴けない場合はこちら)
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
(聴けない場合はこちら)
今回録った音はこんな感じです。まず、この結果には驚きでした。正直言って、こんなに上手く録れるとは思っていなかったんです。最初に述べたとおり、「聴いたそのままの音」にはなっていません。それは確かです。が、各モデル聞き比べた時の音の特性がそのまましっかりと音になっています。実際に聴く以上に音の特性は強調されている感じがするのと、あとこれはステレオヘッドフォンをモノラルで録っている以上仕方ありませんが、全体的にちょっと平坦な音になっています。そこは加味して考えてもらえればと思いますが、それでもこんなに分かりやすくなるとは思いませんでした。では、各モデルの音について書いてみます。
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密閉型とは思えないほど音場が広く、装着感の良さや軽さも合わせて長時間使っていても疲れが少ないと思います。大柄な本体はしっかりと頭にもフィットしますし、本当に楽で音の良いヘッドフォンだと思います。私は父親がけっこうオーディオ好きで、実家にはSTAX
ヘッドフォンレビューサイトでも評価の高いヘッドフォンです。ただヘッドフォンアンプが無いと鳴らし切ることはできない、と書かれていたのも見たので、今度はヘッドフォンアンプを導入して試してみようかなと思っています。
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実際に音を出して比べてみると、上下の音はけっこう削られていますね。ただ全体的な特性はけっこうナチュラルだと思います。ちゃんとドラムの音もタイコらしくなっていますね。
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しかし、こうして比較してみると、けっこう音には個性があることが分かります。ダイナミクスを広く取ろうとした結果だと思いますが、トップエンドとローエンドがけっこう強いです。シンバルがシャリシャリしていて、音圧の高いサンプルではローエンドがものすごい出ています。出過ぎていて破綻していますね。
このヘッドフォンの特性、1176
ただ、間違いなく良いヘッドフォンです。特性を理解した上で使うと良いと思います。
また、業務用ということもありとても頑丈です。しかもアフターパーツも豊富ですね。







普通に売っているアフターパーツだけで本体が組み上げられるのも業務用スタンダードらしいモデルですね。
- electrica E1 (ダイソー オーディオ用耳掛け式ミニヘッドホン)
税込み108円でこの音が出るのは素晴らしい、というべきなのか、さすがに他のモデルと比較すると全く使えない、というべきなのか。よくヘッドフォンのレビューで、買ったばかりのものだと「まだエイジングが済んでいませんが」という定型文が入ったりするんですが、それも必要はないでしょう。
音そのものももちろんですが、ノイズも多いです。100円のヘッドフォンに文句を言うつもりはありませんし、むしろこれだけ出来れば十分だと思います。とりあえずちゃんと音楽として音を聴くことはできるヘッドフォンです。ちなみにミニプラグなので、接続部には同じくダイソーの100円変換プラグを付けています。変換プラグとヘッドフォン本体が同じ価格というのもすごいです。
ということで、いろいろなヘッドフォンを比較してみました。最近はやりの高級「リファレンスモニター」は、さすがにすごいと思います。長く使っていても楽ですし、音もスピーカーとの差がほとんど無いので調整も簡単。特にレコーディングの音作りをする上で、スピーカーに近い音が自宅でも出せるというのはとても良いと思います。
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