無償で使えるフル機能のDAW、「Cakewalk by BandLab」を使って1曲作ってみるシリーズ、最終回です。今回でついに楽曲が完成します。
Part.11(前回)はこちら
Part.1はこちら
Cakewalk by BandLabのダウンロード方法はこちら
前回やったこと
・ピアノの音作り
・ピアノバスでの音作りとバランス
・ストリングスのバランス調整
・アコギ、エレキのバランス調整
・リードギターの音作り
・リードギターのバランス調整
・音圧の調整
前回はここまでやりました。この状態で、楽曲としてはあらかた完成。このまま表に出して大丈夫なくらいには仕上がっていると思います。
ですが、より高いクオリティを目指すためには最後の仕上げが残っています。
その前に、ミックス前の状態、Part.7の最後にアップした形を載せておきましょう。
では、ミックス最後の仕上げです。いきましょう。
現時点で、各トラック、バスのバランスはだいたい調整されています。マスターでの音圧アップもしていますね。後やることといえば・・・オートメーションの書き込みです。
Part.9でもちょっとやりましたが、オートメーションというのは、楽曲の展開に合わせて各種パラメータを自動で変化させることです。
これはPart.9でクラッシュのトラックにオートメーションを入れた時の画像ですが、基本これと同じ事を全体にわたってやっていきます。まず、オートメーションの書き込みはできるだけ最後にやる方が良いです。その理由は、オートメーションを書き込んだトラックは「オートメーションを読み込む」設定になっており、例えばフェーダーとかその他パラメータをいじって設定を変えようとしても、オートメーションが優先となるためプレビューとして変化してもすぐ元に戻ってしまいます。(オートメーションで追加で書き込むことはできます。)
なので、各種バランス調整を行ってから、最後にオートメーションを書き込むのが良いと思います。上のクラッシュトラックはだいぶ例外で、クラッシュ自体の音の設定をやった上で、もう触らなくて良い、またはバストラック(この場合CymbalバスとDrumバスをこの後通ります)側での調整でいける、という状態だったので先にオートメーション書き込みを行いました。
で、オートメーションの書き込みですが、こちらも基本的に元のトラックには行わず、バスのオートメーションを書き込む形になります。トラックに書いちゃダメ、ということはもちろんないので、そこは自由にやって良いんですが、現時点で元のトラック間のバランスは取れているので、それを崩す必要がないことからバスにオートメーションを書いていく形にしています。
オートメーションの書き方は各トラックやバスでオートメーション、設定したいパラメータを選んで書いていくだけなので簡単ですね。実際に書き込んだオートメーションとその理由を書いていきたいと思います。
まずはマスタートラック。アウトプットボリュームのオートメーションです。マスタートラックのパンやフェーダーはよほど特殊な効果を狙わない限り、基本的に触りません。が、楽曲の最初と最後の無音部分にのみオートメーションを書きます。無音部分でフェーダーを最小から0dBまでフェードインとフェードアウトをしている形ですね。アルバム等で「曲が連続してつながっている」効果を狙う場合はべつですが、1曲で完結するものの場合、こうして最初と最後に無音のフェードインとフェードアウトを入れています。これは万一の場合のノイズ成分が前に出てしまうことを防ぐためだったり、他の楽曲と続けて再生したときにプツって音が出てしまわないようにするためだったりです。「下処理EQ」などで対処済みなのでほぼ問題ありませんが、もし「聞こえてない音成分」がここに入っているとそれが何らかの状況で何らかの問題を起こす可能性がないとは言えないからですね。
なお、プラグインによって、オリジナル機器を再現するためあえてノイズ成分を出すものもあります。そういうプラグインを挿しているトラックは、このマスターの場合と同じように、「音が鳴っていないところのフェーダーを最小に下げる」オートメーションを書くと良いと思います。今回はそういうプラグインはありませんけど。
続いてヴォーカル。これはヴォーカルのアウトプットボリュームのオートメーションです。ヴォーカルのオートメーションはとにかくこだわります。大切なことは「常に均一に聞こえるように」、それでいて「表現がしっかり出せるように」オートメーションを書きます。いくつか、一瞬だけ音量を下げているところがあります。これは息づかい(ボカロなのでそれを模した音)が目立っているところや、何らかの要因で音が一瞬大きくなってしまっているところ、または大きく音程が変わるところのポルタメントが目立ってしまっているところなどを下げています。
また、こういう風にいったん下がってからクレッシェンドして戻っているところがあります。これは音を伸ばすところですね。ボカロならではのオートメーションかも知れません。というのも、こういうバラード曲で音を伸ばす時って、子音を発音した直後にいったん音量を下げ、そこからクレッシェンドで伸ばしていく歌い方がありますね。それをオートメーションで音量を調整することでやっている形になります。まぁ、実際のヴォーカルでも一本調子に伸ばしたところにこういうオートメーションをかければ表現力豊かに聞こえるかもしれません。
さらにヴォーカルのオートメーション。これはリバーブのセンドレベルです。今回の楽曲は最初と最後がピアノ伴奏のみ、中間でバンド演奏が入ります。それに合わせてリバーブのセンドレベルを変えることで、「常に同じ位置でヴォーカルが鳴っている」ように聞かせています。そう、「なにもしていない」ように見せるためのオートメーションですね。聴き手に「あれ?」と思わせないための設定です。
さらにヴォーカルのオートメーション。こちらはPart.10でバスに挿入したプレートリバーブのミックスレベル調整。前述のバンド演奏とピアノ演奏の違いでのオートメーションもありますが、出だしでリバーブがだいぶ目立ってたのでそこの調整が主でやってます。
続いてコーラス。アウトプットボリュームのオートメーションですね。ヴォーカル全体を調整したら、一部コーラスが変に目立ってしまうところや、音がちょっと汚く聞こえるところ(コーラスの音程が理由では無く音の混ざり方の話)があったので、その部分を下げています。
次はピアノバス。こちらもアウトプットボリューム。ピアノは、バンド演奏が無いところでは唯一の伴奏。なのでそこもしっかり書きます。ピアノだけが伴奏となるところでは、バンド演奏の伴奏のところより音量を上げて全体のバランスを取っています。後はバンドの中で一時的にピアノを前に出したいところは音量を上げています。
ピアノもヴォーカル同様、リバーブのセンドレベルと、前回バスにかけたホールリバーブのミックスをそれぞれ調整し、出だしとバンドありなしのところで自然になるようにしています。
続いてはストリングスのアウトプットボリューム。今回の曲、バンド演奏が入っているところの伴奏の主役は間違いなくストリングスです。ロックバンドだとギターにあたるところをストリングスが担ってます。なので、曲展開に合わせ、他のパートとのバランスを取るために音量をきちんと調整して、どの程度目立たせるかをそれぞれ設定しています。
続いてベース。ベースは基本いじらなくても大丈夫だったんですが、1ヶ所だけなんかドラムと被って低音がやたら出るところがあったのでそこだけちょっと弱めています。なんかぐちゃぐちゃっと調整していますが、これはその目立つ部分のドラムパターンに合わせて音量を変えているからですね。
次はドラム。ドラムはTom、Snare_bus、Taiko、Cymbal、Drumのバスがあります。まずはこの黄緑色のところがアウトプットボリューム。それぞれTom、Cymbal、Drumのバスにオートメーションを書いています。タムについては、バンド演奏の入りとリードの入りのところでタムだけが鳴る部分があるので、そこは音量を下げてバランスを合わせています。シンバルは、あまりに目立ってしまうところがあったのでそこを下げています。ドラム全体のバスでも同様。ドラムが目立ちすぎているところを抑えています。
Taikoバスのオートメーション(濃いめの緑)は、Taiko_fxへのセンドレベル。Part.9で「音に迫力を出すため」に強く歪ませたTaiko_fxというセンドFXバスを作っていましたが、そのレベルですね。これはタムと同じで、タムだけが出るところでは迫力が出過ぎてしまうので、そこのセンドレベルを下げています。
続いてギターのオートメーション。全てアウトプットボリュームです。上からアコギ、エレキ(バッキング)、リードです。アコギはほぼ触っていません。1ヶ所だけなんか目立つところがあったのでそこは下げました。あとアコギのバスの後ろにもう1つオートメーションが見えますが、これは設定したものの使わなかったものになります。具体的には、アコギバスのEQのハイパスON/OFFで、最後のサビのバックのアコギがなんか中低域で邪魔だったので強めのハイパスをかけて、ストロークのカシャカシャって音だけ出そうとしてみたんですが、なんか微妙だったので最後のサビのアコギトラックを全部削除しました。なので結果意味の無いオートメーションになって、それが残ってるだけです。
エレキのバッキングは曲展開に合わせてのバランス調整。2回あるサビの最後で4音のアルペジオがありますが、そこは目立たせたいので強く、あとは音を聴きながら音量バランスを調整しました。
一番下がリードの音量です。リードは楽曲中央のところにしか音がないので、前後は適当。音が鳴るところはヴォーカル同様、表現力の補完として、またリードの後ろで鳴っているストリングスの音量と合わせてバランスを取るため、そこは細かく調整しています。
以上でオートメーションの書き込みが終わりです。楽曲が完成しました。
完成したら、エクスポートしてオーディオファイルにしましょう。
この時、マスターの音圧アップ、今回はBoost11の2段がけをOFFにした音をエクスポートしておくのも良いと思います。今回はプロジェクトファイルもそのまま残してますし、そもそもそんな予定も無いのでやってませんが、バンド曲とかだとコンピレーションアルバムを後から出したりするとき、マスタリング済みの音源しか無いと、その音を元にマスタリングされることになってしまって音が悪くなったり、音量を上げれなかったりすることがあります。自分でミックスまでやるなら後から書き出せばいいだけなので良いですが、ミックス、マスタリングをスタジオに依頼する時などは、マスタリング前の音源ももらっておくと後々役立つことがあるので、覚えておくと良いと思います。
前回、ミックスで各トラックのバランス調整をしたらミックスは6〜7割と書きました。今回文章にするとたいして長くないんですが、このオートメーションの書き込みはミックス全体の3〜4割を占めるほど重要ですし、実際に時間をかけて良いところだと思います。もちろんそれぞれ楽曲によって異なりますが、単にトラックやバス単位のエフェクトを調整しただけではどうしてもバランスが狂ったり、「ここだけこうしたい」という部分が出てきます。それを行うのがオートメーションで、基本的に全てのパラメータをオートメーションで調整できるので、上手く使っていくと良いと思います。
例えば、ワウやフィルターのエフェクトを持っていなくても、オートメーションでEQの周波数を動かせば似たような効果を作ることもできます。アウトプットボリュームの調整でトレモロエフェクトを作ることももちろんできますね。基本どんなパラメータでも動くので、うまく使うとけっこうな効果が作れたりします。
ヴォーカルのオートメーションには「手コンプ」という言葉がついてたりします。これは手でフェーダーをいじることでコンプ感を変えるということから来ていて、今で言うとヴォーカルのアウトプットボリュームのオートメーションを指しています。
そうそう、オートメーション調整する際は、これもそれぞれだと思いますが、私はマスターでの音圧アップもした上で調整しています。たまに、例えばヴォーカルが抜けるところで伴奏がやたら大きくなってしまうこともあるので、その辺も調整しつつ、という感じですね。
では、完成した楽曲を載せてみましょう。
どうでしょうか。ミックス前のドタバタしてまとまりの無かった感じから、全体的にまとまった形に変わったかと思います。低音のすっきり感なんかは全然違っているんじゃないかと。楽曲自体はもちろん同じ曲なので、あんまり変わってないと思う人もいるかもしれませんが・・・・・・。これがミックスです。もちろん私もプロのエンジニアではないので、技術的にまだまだ未熟なところがあるのももちろんですが、あれだけやってこの程度しか変わらないと思うのか、やっぱり全然違うと思うのかはそれぞれかもしれませんね。
せっかく曲が仕上がったので、動画でもアップロードしてみました。
ニコニコ動画
youtube
今回やったこと
・オートメーションで全体の仕上げ
12パートに渡ってやってきた、SONAR初見勢による「Cakewalk by BandLab」での曲作りシリーズ、これにて完結です。
思えば4/4にCakewalk by BandLabのダウンロードが始まってからちょうど1ヶ月ですね。やっぱ曲を仕上げると操作方法も慣れてきて、だいぶいろいろ分かってきました。DAWってそれぞれ癖があって、操作性が合うか合わないかはそれぞれだったりします。正直に言います。私にとってCakewalk by BandLab、Cubaseより使いやすいかもしれない・・・・・・w
あと言えることは、Cubaseより軽いですね。まぁうちのCubaseは8.5 Proなので今の9.5とかだとどうか分からないですが。Cubaseだと止まっている、または動作が重たくなっているという場面(例えばこうして記事を書くためにブラウザとタブを多数起動したまま操作している時とか)でも気にせず動いていました。もちろんそれでも限界はあって、やりすぎると動作不安定になったり落ちてしまったりはありますが、それはどんなDAWも同じです。
そして、ボカロとギター、オーディオインターフェースだけでここまで出来てしまう機能性。付属プラグインのみでこれだけやれるというのは素晴らしいことですね。これが無料っていうのは、本当に革命的だと思います。
一方、やっぱり無料の範囲だけでは物足りないこともあります。バンドサウンドでいえば、一番はまずドラム音源。付属のドラム音源は本当に「DAW付属音源」って感じで、ミックスでもそうとういじくってましたが、よほどうまく使わないとなかなかメインのドラム音源としては物足りないですね。文句を言ってるのではなく、ここはちゃんと予算をかけましょうということですね。(DAW本体が無料になったんだから、その分浮いた予算でいいドラム音源は余裕で買えます。)
後その他音源はどうしても必要になってくると思います。今回の楽曲だと、ピアノ音源は欲しいところ。あともちろんヴォーカル音源(つまりボカロ)も必要ですね。
まぁ音源についてはどんなプロでも同じですからね。プロが音源買ってやってるのにその音を無料で作るなんてできるわけないんです。
それから「歌ってみた」でピッチ修正もやりたいなら、そのプラグインは必要になります。現在Melodyneの試用版が付いているので最初の30日はなんとかなるかもしれませんが、ピッチ修正を多用するならそのプラグインは買わないとですね。地味なところでは、ちゃんとした機能のディエッサー(一部の帯域にのみコンプをかけて、歯擦音など余計な音を目立たせなくするもの)が無いというところも、歌ってみたのミックスをする上では必要になるところかもしれません。
あえて不足しているものを書きましたが、逆に言えばそれだけ買えば十分にいけるという意味でもあります。これは素晴らしいことですよ。間違いなく、現在最強の無料DAWである、と同時に、最上位の他社DAWとも渡り合える実力を持っている(元々SONAR Plutinumだし)ものであると言えます。実際使っていて、DAW本体の機能、つまりプラグイン以外の部分で不満点は一切ありませんでした。SONAR最上位モデルといえば、平沢進氏をはじめ、多くのプロも使用していたプロユースのDAW。それとほぼ同じ機能が無料で使えるわけですから、まぁ不満なんて出るわけないんですけどね。
DTMを始めたい、というなら、まずはCakewalk by BandLabをダウンロードするところから始まる。もちろん他のDAW勢がどう動くか次第ですが、今はそれが一つの答えなのかもしれません。
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