Fractal Audio Systemsのフラッグシップモデル、「Axe-Fx」シリーズの第3世代モデルが発表されました。キャッチが「The Only Limit is Your Imagination」。めっちゃ挑戦的です。優しく訳すなら「こいつはなんでもできる、あんた次第でな」って感じですが、別の訳し方をすると「こいつができないことはあんたの想像力(の欠如)のせいだ」みたいな。つまりそれだけ自信があるモデルってことですね。
現行モデル、Axe-Fx II XL+と何が変わったのか、順に見ていきたいと思います。
- 外観、サイズ
その分大型のディスプレイを搭載できるようになっているので、運搬性は下がったものの操作性は上がったという感じでしょうか。
- DSP
今回のIIIでは、DSPが新しくなります。これまではTigerSHARCという300MHzフローティングポイントのDSPを2つ積んでいたんですが、IIIでは新たにKeystoneという1GHzフローティングポイントのDSPを2つ搭載。その他内部の周辺機器などもアップデートすることで、DSPパフォーマンスが倍以上となったとのことです。
- 画面
ディスプレイも大きく見やすくなりました。これまでは160×80の単色でしたが、IIIでは800×400ピクセルのカラーディスプレイとなっています。
- モデリング
これまでのQuantumモデリングに代わる最先端のモデリングを搭載とのこと。各アンプには5ノブ、パラメトリックPre EQ、独立した4つのチャンネルを搭載し、操作性や音の幅を広げています。もちろんAxe-Fxですから、内部には大量のパラメータも用意されています。
- キャビネットシミュレータ
キャビネットシミュレータも大きく変わります。今回のモデルでは、基本的に全てIR化。2048のキャビネットIRを搭載しています。今までのモデルにあったキャビネットシミュレータはレガシーバンクに納められ、そちらも使うことができます。もちろんIRは外部のものを読み込み可能。ユーザーキャビネットも2048種類保存できます。そして、ここに4chミキサーが入っていて、IRをミックスして使うことも可能ということですね。
ちなみに新たに2048種類とかやばいって思いますが、今までのキャビネットシミュレータは189種類。ただ、ここに各10のマイク選択があったので、IR的な観点でみると1890種類のキャビネットをこれまでも選べたことになります。(IRは構造上キャビネットとマイク/マイクプリと録音環境のサウンドを合わせたものになります。)とはいえ、倍以上に増えているのもたしかですね。
- 収録エフェクト数
めっちゃあるんでリストにします。エフェクトブロック名、IIに収録のエフェクト数 / IIIに収録のエフェクト数(増減)という表記でまとめています。
-
- Amp 258/259(+1)
- Cab 189/2237(+2048)
- Mic 10/-
- Chorus 11/13(+2)
- Comp 4/6(+2)
- Crossover 1/1
- Delay 18/18
- Drive 35/37(+2)
- Enhancer 1/2(+1)
- Filter 12/12
- Flanger 6/8(+2)
- Formant 1/1
- Gate/Expander 1/1
- Graphic EQ 4/12(+8)
- Looper 1/1
- Megatap Delay 1/1
- Mixer 1/1
- Multiband Comp 1/1
- Multi Delay 10/5
- Ten Tap Delay 1/1
- Tremolo Panner 2/2
- Parametric EQ 1/1
- Phaser 8/8
- Pitch Shifter 10/12(+2)
- Quad Chorus 1 /-(-1)
- Resonator 1/1
- Reverb 9/44(+35)
- Ring Modulator 1/1
- Rotary Speaker 1/1
- Send 1/1
- Return 1/1
- Synth 1/1
- Tone Matching 1/1
- Vocoder 1/1
- Volume/Pan 1/1
- Wahwah 8/8
- Input Noise Gate 2/1
- Output Mixer 1/1
マイクモデリングが無くなっている(というか記載されていなかった)のは前述のとおり、キャビのIR化にともなうものですね。レガシーキャビでマイクが選べるのかどうかは不明です。
そしてキャビネットモデルと共に、リバーブの種類が大幅増。これももしかしたらIRによるリバーブだったりするんでしょうか。
また、新たに加わるエフェクトブロックもあります。
-
- RTA:リアルタイムアナライザ:オーディオスペクトル解析
- Plex Delay(3タイプ):Shimmerエフェクトのための8本までのディレイ
- Multiplexer:複数の入力を1つの出力に
これらのブロックが追加されています。
ピッチシフトはピッチ検出を改良、ルーパーも強化され、5分以上のステレオルーパー(IIは15〜60秒まで)となりました。
- プリセット
続いてプリセットの内容です。
まずはプリセット数から。
IIでは383のプリセット数でした。その後強化され、II XL+では768プリセットとなっています。
今回のIIIでは、プリセット数は512。IIのオリジナルよりは増えていますが、XL+よりは少ないという形。これは後からXL+が出る兆候だったり・・・?なんて邪推してもしょうがないですが・・・w
そして、これまでのモデルでは、各プリセットごとに8つのシーンがあり、また4×12のグリッド(ここにエフェクトブロックを配置してルーティングを決めます)が用意されていました。今回のIIIでは、プリセットごとに8つのシーンを設定できるのは同じですが、プリセットのグリッドが6×14に増えています。それだけ同時使用したり複雑にルーティングを組めるようになっているということで、これはDSPパワーアップの恩恵ですね。
で、ここからなんですが、Axe-Fxにはインベントリというものがあります。これはグリッドに配置できるエフェクトブロックごとの上限。例えばアンプモデルは2つまで、とかそういうのですね。それも今回変わりました。
エフェクトタイプと同じようにリスト化しますね。
-
- Amp 2/2
- Cab 2/2
- Chorus 2/2
- Compressor2/2
- Crossover2/2
- Delay 2/4(+2)
- Drive2/4(+2)
- Enhancer 1/2(+1)
- Filter4/4
- Flanger2/2
- Formant Parametric EQ 4/2(Formantのみ)
- Gate/Expander 2/4(+2)
- Graphic EQ 4/4
- Looper 1/1
- Megatap Delay1/2(+1)
- Mixer 2/4(+2)
- Multi-Delay 2/2
- Multiband Compressor 2/2
- Phaser 2/2
- Pitch Shifter 2/2
- Resonator 2/2
- Return 1/1
- Reverb 2/4(+2)
- Ring Modulator1/1
- Rotary 2/2
- Send 1/1
- Synth 2/2
- Tone Matching 1/1
- Tremolo/Panner 2/2(Tremoloのみ)
- Vocoder 1/1
- Volume/Pan 4/4
- Wahwah 2/2
これまであったものもだいたい増えたりしてます。以下のものは減っていますが、他と統合されたり、別機能で使われるのではないかと思います。
-
- Effects Loop 1/-(-1)
- Quad Chorus 2/-(-2)
- Shunt (36)
そして新たに追加となるのが下記です。
-
- RTA 0/1
- Plex Delay 0/2
- Multiplexer 0/2
- Input 0/5
- Output 0/4
- Parametric EQ 0/1
- Ten Tap Delay 0/1
Ten Tap DelayはIIではMegatapに含まれているものだと思います。今回独立したんですね。パラEQもフォルマントといっしょだったのが分かれたみたいです。インプット、アウトプットは入出力端子増えているのでその分かと思います。またShunt(なんか接続につかうやつらしい)はどうなったのか謎です。
- USB
ということで、USBも強化されています。
これまでは4in2outオーディオインターフェイスとして使うことができました。今回のIIIでは8in8outに強化されています。オーディオインターフェースとしての質も高く、オーディオシステムの根幹としても使える、と言っていますね。
なお、Phantom電源供給などの機能はないので、それぞれの使い方によって、これでオーディオシステム全部いけるって人と、別途オーディオインターフェースはやっぱり必要って人に別れると思います。もちろんII同様MIDIインターフェイスとしても機能するかと思います。
- コントロール類
これも並べて比べてみますね。IIまでのコントロール / IIIのコントロールという表記でリストにします。
-
- VALUE / VALUE
- NAV(上下左右) / NAV(上下左右)
- PAGE(左右) / PAGE(左右)
- ENTER / ENTER
- EXIT / EXIT
- LAYOUT / -
- GLOBAL / -
- RECALL / -
- EDIT / EDIT
- TUNER / -
- STORE / STORE
- CONTROL / -
- I/O / -
- BYPASS / -
- FX BYP / -
- UTILITY / -
- TEMPO / TEMPO
- X / -
- Y / -
- Quick Control(A/B/C/Dノブ) / A/B/C/D/Eノブ
- Output Levels(1/2ノブ) / OUT1〜4ノブ
ということで、実はフロントパネルのボタン類などは減っています。
画面が見やすくなったので、ディスプレイを見ながらいろいろコントロールできるという感じでしょうか。あとX/Yボタンがないので、X/Yスイッチ機能がどうなったのかは分かりません。ノブは逆に増えています。
- 接続端子
こちらも変わっています。まずはAxe-FX IIの接続端子から
・前面
INSTR、PHONES
・背面
L/Rインプット、L/RアウトプットおよびXLR L/Rアウトプット、L/Rアウトプット(SEND)アンバランスド、L/Rインプット(RETURN)バランスド、デジタルI/O AES/EBUとS/PDIF、USB、MIDI IN、OUT/THRU、MIDI IN Phantom Power、MFC、PEDAL
ちなみにMIDI IN Phantom Powerは7PINのケーブルを使い、フットスイッチに電源を供給できるやつですね。
II XL+では、FASLINK、が追加、PEDAK端子がPEDAL1/PEDAL2となり、MIDI THRUが独立しています。
では、IIIはどうかというと
・前面
INSTR、PHONES
・背面
インプット1:INSTRUMENT、インプット2:L/Rインプット(コンボ端子)、インプット3:L/Rインプット、インプット4:L/Rインプット(インプット2〜4はバランスド)、アウトプット1:L/Rアウトプット XLR L/Rアウトプット GND LIFT付、アウトプット2:XLR L/Rアウトプット GND LIFT付、アウトプット3:L/Rアウトプット、アウトプット4:L/Rアウトプット、XLRはバランスド、フォン端子はハムバスター(グランドループノイズの問題を軽減する)、AES:XLR IN/OUT、SPDF:RCA IN/OUT、USB、MIDI:IN、OUT、THRU、エクスプレッション:2つ、FASLINK IIとなっています。
ハムバスターについてはIIからあったものですが、今回はアンバランスドじゃなくハムバスターと表記されています。そしてFASLINKがIIになっています。入出力端子の数はオーディオインターフェース機能の数の違いと同じですね。
ということで、まとめるとこんな感じになりました。
もちろんPCエディタもありますし、さらに新たなフットスイッチも予定されているということです。また、逆に今回のモデルでもパワーアンプ付にはなりませんでした。この辺は設計思想の違いかもしれませんね。
ちなみに、Axe-Fx。今回のリストを作ったりするために改めてマニュアルを読み込みましたが(なのでリストとか手作業で拾ってる部分があります。間違ってたらごめんね。)、やっぱこのシリーズは現在最強のマルチエフェクターと言って良いですね。まぁKemper買ったんですけど、実際使えば分かりますが、Kemperはあれはアンプなんですよ。機材の分類上マルチエフェクターにカテゴライズされますが、Kemperは唯一無二のアンプです。KemperとAxe-Fxって対立するように見えますが、実はかぶらないと思います。というかKemperにAxe-Fxをつなぐ形がマジで最強だと思います。いろんな意味で。でも冗談でもなく。
新しいAxe-Fx、楽しみですね。ちなみにKemperはNAMMでは「継続してファームウェアの開発をしているよ」ということを言っているだけだったみたいですね。リバーブが強化されると聞いた、という書き込みがありましたが真偽不明です。まぁAxe-Fxは最強のマルチであるが故に、最強でありつづけるためにこのクラスではかなりの頻度で新機種を出している感じはしますね。一方Kemperは唯一無二であるが故に、新機種はあんまり出ないんじゃないかなと思っていたりします。どうなるか分かりませんけどw
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