Ibanezが制作する多数のTube Screamerシリーズ最新モデルです。
「Ibanez NTS NuTube Screamer」。
KORGとノリタケ伊勢電子が共同開発した新世代の真空管、NuTube 6P1を搭載したチューブスクリーマーですね。これまでの真空管とは違い、大幅に小型化され、5Vで駆動する新しい真空管ですね。3極管構造で、12AX7等と同様の動作をします。連続期待寿命30000時間と、寿命も大きく延ばされたモデルですね。
こんな箱に入ったNu Tube ScreamerことNTS。
では、さっそくレビューいってみましょう!
Ibanez NTS NuTube Screamer
こちらがNTSです。TS808の筐体を使用したペダルです。ホワイトカラーにグリーンの文字やラインが付けられたデザイン。フットスイッチの上にはNuTubeと書かれた窓があり、そこからNuTubeが見えるようになっています。
コントロールは伝統のOVERDRIVE、TONE、LEVELと、新たに小さなMIXノブが付いています。MIXは歪みに加わるクリーンのバランスをコントロールするものですね。
裏面には電池ボックスがあります。ちょっと基板も見えていますね。日本製です。
開けるとこんな感じです。表面実装パーツを使用した構造ですね。中央にある白い大きなパーツはOmronのシグナルリレー。スイッチングを行う部分ですね。中央にあるのが306500というチップで、これはボルテージレギュレーターです。おそらくNuTubeに送る電圧を安定化させるものではないかと思います。そして、その右上にあるのが表面実装のJRC4558 Opampですね。
トリムポットが2つあって、かなり多くのコンデンサ、抵抗、トランジスタがありますが、ダイオード等は見当たりません。トリムポットは見るからに「触るなよ」な雰囲気なので、触ってません。
4558から、後から追加されたようなバイパスが出ています。もしかしたらここが、“発売延期”となった理由かもしれないなと思います。NTSは当初1月発売予定でしたが、3月に変わったんですよね。
基板全体を外すと、NuTubeが見えてきます。ここでクリッピングを行っているようです。
実はNuTubeはかなり“マイクロフォニック”なパーツです。振動などを直接拾ってしまうという特徴があります。なので、ここの基板は柔らかな発砲素材で固定されていて、触るとサスペンションのように動きます。振動を緩和し、直接衝撃がNuTubeに伝わらないように作られています。
- 操作性
コントロール類に難しいところは一切ありません。操作性もこれまでのTube Screamerと同様という感じ。MIXノブはちょっと今の設定が見にくいような感じですが、あまり頻繁に触る感じではないのかなと思います。ちなみにこのMIXは最小にしても歪みがかかるので、0〜100%というタイプではなく、ある程度音の調整を行うものですね。
そしてTSの伝統というか・・・相変わらずON/OFFのLEDはちょっと見づらいです。真上から見ればすぐに分かりますが、ちょっと角度が付いているとON/OFFが分かりにくかったりします。NuTube自体はエフェクトバイパス時にも点灯しているので、そこはON/OFFの判断にすることはできません。まぁON時は弾けばピッキングに反応して明るさが変わるので、それで判断することは可能ですが・・・。
使いにくいところがあるとすればそこくらいですかね。
- サウンドレポート
では、音の方いってみましょう。今回もいくつかサンプル録っています。アンプはKemper Profilerを使用しています。
Kemperの設定はこちら。Vox AC30をプロファイリングしたリグで、軽いリバーブがかかっています。「TAF-Voice Ace Clean+」という、最初から入っているファクトリーリグですね。
なぜこれを使ったかというと、素直で分かりやすい音だったからですね。アンプは全てこの設定にしています。ギターはストラト、リアPUです。駆動は今回全て9Vです。
では、まずはNTSとヴィンテージTS808のサウンドを比べてみましょう。
NTSとTS808(Original)
- NTSのサウンド
(聴けない場合はこちら)
- TS808のサウンド
(聴けない場合はこちら)
NTSの全てのノブを12時にした設定と、ヴィンテージTS808(1980年9〜11月ごろの製造/RC4558P)の全てのノブを12時にした設定の音です。NTSの方は最初にクリーントーンを入れています。
聞けば分かりますが、音は違いますね。NTSは確かにTSサウンドではあるんですが、ヴィンテージ808のような「クリーミーさ」はありません。これは全てのノブ12時の設定ですが、どんな設定にしても、NTSでヴィンテージ808の音を作ることはできませんでした。
NTSはMIXノブ12時で「オリジナルTSと同じ設定」となるよう作られているということですが、おそらくそれは回路的な視点からの「同じ設定」であり、実際の音が同じという意味ではないのだと思います。なので、MIXも含めていろいろ試しましたが、「同じ音になる設定」を見つけることはできませんでした。
ヴィンテージ808と比べて全体的に解像度が高く、同時に粒が大きめのサウンド。倍音成分が豊かで現代的な雰囲気が常にありますね。ピッキングに合わせてNuTubeのフィラメントが光ったり暗くなったりするので、クリッピングにNuTubeが使われていることも分かります。それが理由なのか、それとも実装パーツだからということもあるのか、ヴィンテージな音ではなく、よりモダンなサウンドになります。
さて、この音。出していて思ったことがあります。この音、TS808HWっぽいな、と。
ということで、比べてみましょう。
NTSとTS808HW
(聴けない場合はこちら)
やっぱり。これはほとんど同じ音を作ることができました。このサンプル、言われないとどっちがどっちか分からないと思います。前半はTS808HW、後半はNTSです。808HWの方は全てのノブ12時の設定で、NTS側をこの音に合わせてセッティングしました。具体的には、OVERDRIVEが10時手前くらい、VOLUMEが10時半くらい、TONEは12時ちょい過ぎ。そしてMIXは4時半くらいです。ほぼMIXフルですが、ちょっとだけ戻すのがポイントですね。
じゃあ、逆にNTSならではの音を作ることができるのか、というと、できます。TSサウンドでありながら、他のTSではなかなか作ることのできない音が出ます。そのサンプルがこちらです。
NTSならではのトーン
(聴けない場合はこちら)
例えば、こんな設定。OVERDRIVEを最大、LEVELとTONEは2時、そしてMIXは最小設定。MIX最小でもこんな感じで歪むので、MIX最小でも0%にはならないことが分かりますね。
かなり解像度高めで、倍音豊かなサウンド。TSらしいミッドの強さもありつつ、フルレンジなサウンドですね。できるだけ「ジャキっとした音」を狙って作ってみましたが、まぁ基本TSなのでこんな感じ。ただけっこう迫力ある音にはなりました。
NTS、面白いペダルです。全体的にモダンな雰囲気でありながら、ちゃんとTSの音ですね。808HWと比べると価格は安いので、808HWの音を手頃に作ることが出来るペダル、という言い方もできるかもしれませんね。ただ、より広く音を作ることができるペダルですね。
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