みんな大好きKemper。
長年アップデートを繰り返しながら今でも最高峰のアンプモデリング・・・・・・というかプロファイル機材として使われているKemper。最近ではスタジオに常設されたりもしてきていて、もしそれが一般化すれば「スタジオのケンパー対策」なんて言葉が生まれるんじゃないかとこっそり思ったりしています。
そんなKemperですが、アンプをプロファイルしてそのサウンドを読み取り、アンプモデリングとして使うことができるというのはもちろん、そこにエフェクトなどを加えたプリセット(Rigと呼びます)を共有してみんなで使うことができる、というのも大きな特徴ですね。
もちろん、ファイルとして自身のウェブサイトで公開したり、SNS上で公開したり、個別に知人にだけ渡したり、ということも可能なんですが、Kemperには公式に、「Rig Exchange」といって、専用のソフトウェアからダウンロードすることも可能です。
このRig Exchangeですが・・・・・・
現状で14000を越えるリグが共有されています。これを指して、「無料で1万以上のサウンドを選べる」という言い方をされることもあります。
で、言うまでもないんですが、これを全て試そうとすると膨大な時間がかかります。たまにとんでもなく良い音のがあったらちょっと長めに弾いてしまうし、ワンコードでちょっと違うな、となるものもあったりするし。
そしてKemperは、アンプとキャビネット、さらにマイクまでも含めたシステムをプロファイルするモードと、アンプ部のみをプロファイルするダイレクトプロファイリングの2種類があり、それが特に区別されずに共有されています(ダイレクトプロファイリングはキャビネットがN/Aと表示されるため、それ自体は一目で分かります)。これを知らずにダイレクトプロファイリングの音を出して「デジタル感バリバリ」と思ってしまうのもKemper購入直後にはあるあるだったりするんじゃないでしょうか。
今回は、この膨大なリグの内、2019年にアップロードされたリグの中から良さそうなものを選んで簡単にレビューしてみる、という内容となっています。前からちょっとやってみたかったんですよね。
まず、今回対象とするリグについて。
Rig ManagerでRig Exchangeを選び、これらをアップロード日順に並び替え、2019年にアップロードされたものを対象とします。
また、ベース用のリグと、ダイレクトプロファイリングそのままのリグ(=キャビが設定されていないリグ)は対象とはしません。
つまり、簡単に言うと、「リグを選んでそのまま使えるギター用のもの」から選んでみました。もちろん、それをそのまま何かに使っても良いし、そこからさらに自分好みに調整するのも良いと思います。ただ、とにかくやはり基本のサウンドが良くないと、調整するのも大変になってしまうので、とりあえず使えそうなものを試してみて、良かったらそこからカスタマイズしてみたらどうでしょう?というような内容です。
今回選んだのは15種類。2019年にアップロードされているリグはこの記事を書いている時点で852種類ありますので、だいぶ絞ったんじゃないかなと思います。選ぶ上で、一応対象となる、ギター用でダイレクトプロファイリングじゃないリグは全部音を出しました。少なくともコード1発は弾いています。ただ、そういう選び方をしているので、今回選んでいないものでも良いRigが紛れていることは大いにあると思いますし、また好みや使う機材、環境によっても変わると思いますので、ある程度の参考として見てもらえれば良いかなと思います。
それでは、アップロードされた日の古い順に、今回選んだリグを見てみましょう。
FDM Marshall DSL RED A
アップロード日:2019/1/1
制作者:FDM Studio
アンプ:Marshall DSL15H RED Channel
キャビネット:Mesa/Boogie Rectifier 412
スピーカー:Celestion V30 412
マイク:SM57
エフェクト:Reverb
1/1にアップロードされたリグです。けっこう12/31とか1/1付近ってアップロードが多くて、まぁ世界的に休日であることもあるかと思いますが、軽いお祭り的な感じもあるのかなと思ったりします。
このRigは、15Wの小型ヘッド、Marshall DSL15Hをメサのキャビで鳴らした音ですね。
分かりやすいマーシャルの音。リバーブちょっと濃いめなのでRECだと切っても良いかもしれません。RED ChannelはたぶんUltra Gainチャンネルのことだと思います。
15Wモデルということもあってか、飽和感高め。でもちゃんと分離感のあるサウンドです。少しミッド多めなのはメサCABの特性かもしれません。同じアンプを使った他のセッティングもアップロードされています。
Silvertone 1483
アップロード日:2019/1/6
制作者:Rob Evers
アンプ:Silvertone 1483
キャビネット:Marshall JTM45
スピーカー:Celestion V30 212
マイク:U47/SM57
エフェクト:Comp、Wah、EQ、Reverb
1966年製のSilvertone 1483アンプをマーシャルのプレキシ時代のキャビで鳴らしたサウンドです。Jack Whiteとかが使っていることでも有名なアンプです。
素直なクリーントーンです。設定されたコンプのかかりがちょうど良くて使いやすい音。ある意味でギターの音がそのまま出るように感じられる音ですね。ストラトとストランドバーグで試しましたが、実際ギターのキャラクターが素直に反映されます。
マイクやキャビ違いの音もアップされています。
EB ProRev64 - Dude
アップロード日:2019/1/9
制作者:EB McGee
アンプ:Fender Pro Reverb 1964
キャビネット:Fender Pro Reverb 1964
スピーカー:Celestion 212
マイク:Sennheiser e609 Sil
エフェクト:Reverb
これは1964年、ブラックフェイス期のPro Reverbアンプのサウンドです。マイクはコンデンサマイクですね。
スピーカーがCelestionに変えられているみたいです。そのせいか、オールドブラックフェイスの音というよりも、少しバランスの良いサウンドになっています。歪み方としてはヴィンテージフェンダーが綺麗に歪んだ音ですね。
アメリカンでTwangyな、“いなたい”雰囲気がしっかり出ていますが、その中ではかなりバランスは良いです。ちょっとバランス良すぎて物足りなければ少しBass上げると良いかもしれません。
ちなみにクリーンの方もアップされているんですが、そちらはあまりにもバランスが良すぎて逆に個性がなく感じました。
AXE 3 - Solo 100 + TS
アップロード日:2019/1/29
制作者:firepile
アンプ:Fractal Audio Systems Axe-Fx III(SLO100)
キャビネット:Marshall 1960A G12M M160
スピーカー:
マイク:
エフェクト:Gate、Reverb
Axe-Fx IIIでのSoldano SLO100モデリングの音をKemperでプロファイリングしたRigです。キャビもたぶんAxe内で設定してラインアウトしたものだと思います(スピーカーとマイク欄が空欄のため)。
Rigネームを考えると、Axe内でTSモデリングをかけているのかもしれませんが、そこは情報がないので分かりませんでした。
ちなみにAxe-FxはIIもIIIもいくつかRigがアップされているんですが、どれも共通してとにかく綺麗な音です。これはAxeの特性なのかもしれないと思います。
このRigは普通に使いやすいです。Axe-Fx IIIの他のモデリングもいろいろアップされていますね。Axeの音はどれも扱いやすいです。
ちなみに、他にデジタルものとしてはLine6 HelixやBOSS GT-1、Zoom G3n、Mooer GE200の音なんかもあったりします。
5153 Djent
アップロード日:2019/2/8
制作者:Rickysomething
アンプ:EVH 5150III
キャビネット:REVV 412
スピーカー:WGS Veteran 30
マイク:SM57
エフェクト:DIST(TS)、Gate、EQ
とてもモダンなサウンドのセッティングです。5150IIIにREVVキャビ。REVVはまだ日本ではそんなになじみはないですが、カナダのアンプメーカーで、耳の早い人ならば知っているかと思います。モダン系のサウンドを得意としていて、エフェクターも少し作ってますね。
これはその5150とREVVキャビにTSとゲートをかけるDjentの王道スタイルのサウンド。ローエンドがばっさりカットされていて、ベース、そしてドラムと合わさることで爆発するようなパワーを持つサウンドとなるように作られています。
けっこうこういうモダンなサウンドのRigっていろいろあるんですが、Djent系のRigは幕がかかった感じが強くなることも多い中、このリグはちゃんとギターの存在感があって良い音です。制作者が音作りをよく知っているんだろうな、というのが伝わってきました。
SOYCD
アップロード日:2019/2/23
制作者:Gian
アンプ:HIWATT DR103 1972 Linked
キャビネット:WOODSTOCK 0.1 PONCHIA PROTOTIPO 1
スピーカー:Fane AxA 212
マイク:SM57E906RODE
エフェクト:Comp、Delay、Reverb
リグネームが何を指しているのかよく分かりません。キャビの名前も謎です。イタリア語でプロトタイプ的なことが書いてあります。
スピーカーがFaneなので普通のHIWATTの2発キャビか、もしくはHIWATT用に作られた自作キャビでしょうか。
サウンドとしては、とにかく「ハイワット」な音が出るRigです。けっこうクリーンなんだけど迫力があって、なんかこう「ゴー」と来るような圧のあるサウンドですね。いい音です。
かけられているディレイ/リバーブは使い方に合わせて調整したりOFFにして使うと良いと思います。
Cornell Romany 10W
アップロード日:2019/3/2
制作者:DANIEL RIGLER
アンプ:Cornell Romany Plus
キャビネット:Cornell Romany Plus
スピーカー:Jensen 12' Blue Label 112
マイク:Shure SM58
エフェクト:Reverb
クラプトンが自室用のアンプとして使っているとして知られるCornell Romany Plusのサウンドです。
このRigは単に音が良いです。ひたすらに良いクリーントーンですね。いつまでも弾いていたくなる音です。
けっこうこういうブティックなアンプのRigって、ちゃんとそのアンプの空気感まで録れているものは実は少ないんですが、このRigはとてもよくそこが出ています。
タッチへの反応もすごく良い。お手本みたいな音のRigですね。
MAyer
アップロード日:2019/3/13
制作者:G Hamilton
アンプ:Two-Rock Steel String Singer
キャビネット:Dumble TR 212 open back
スピーカー:Celestion G12/65 212
マイク:U67-Sm57-Sigma Rbn
エフェクト:Dist(TS)、Delay、Reverb
超ゴージャスな機材でジョン・メイヤーを再現した、というRig。
Two-Rockアンプをダンブルのキャビで鳴らしてる時点でなんかもうおかしいですが、その上にマイクがU67と57とリボンマイクのミックスということで、相当がんばってつくられたリグであることが分かります。
音は、メイヤーの音かどうかはともかく、リードでもいけるしポップ系のバッキングとかにも使いやすい音で、とても良いと思います。
これ、なぜかKemper内でTSのエフェクトがかかっていて、アンプは歪んでないっぽいんですよね。このTSを切ったら弦の音そのままみたいなクリーントーンになります。レスポンスが早くて、それでいて弾きにくくない音なんですが、あまりに機材が豪華すぎて、若干そこは半信半疑(Rigの使用機材は「自己申告」なのです)。ただ、それでも音自体は良いので使えるRigです。
Peavey 6505+ 112
アップロード日:2019/3/19
制作者:Heinrich House
アンプ:Peavey 6505
キャビネット:Hesu 2x12 Deamon
スピーカー:HESU Demon Speaker 212
マイク:MD421+Pr20+AT4050
エフェクト:EQ
こちらは112コンボの6505+を、あえてHESUキャビで鳴らした音ですね。5150系+HESUも、モダンなハイゲイン系王道セッティングです。
5150系は人気で、とにかく多数のRigがあります。ただ112コンボモデルを使ってのプロファイルは珍しいです。といってもこれはそれをヘッドとして使ってますけど。
で、このRigは数ある5150系の中でもかなり使いやすい音。エッジ感と音の太さがしっかりしていて、どちらもやり過ぎになっていないので好きな音に調整しやすいRigです。クラシックメタルからDjentまでいろいろ使えます。
そのままでも普通にハイゲインで使える音ですね。よりエフェクトをかけたLeadバージョンもアップされています。
V0X AC30HWmed d
アップロード日:2019/4/25
制作者:Apollo Music
アンプ:VOX AC30HW 2
キャビネット:VOX AC30 HW
スピーカー:Celestion Green Back 212
マイク:SM57
エフェクト:
VOX AC30HW 2のサウンドです。AC30は最近クリーントーンの基本として再評価されつつありますね。
公開されているRigは、多少エフェクトもかけてバランスをとったり存在感を増したものが多い中、これはエフェクトなし。アンプそのものの音だけでアップされています。
かなり良いAC30サウンドですね。このRigがあれば、あとはローゲイン系の音ならエフェクトを追加していけばいろんな音が出せます。他にも同じアンプでいろんな設定のRigが同時にアップロードされています。
MARS MINI STUDIO 2
アップロード日:2019/5/28
制作者:Bommel
アンプ:Marshall MS-2C
キャビネット:BOMMELS IRs IR Mix
スピーカー:Celestion 7080 / V30
マイク:sm57 mm1 ml52-02
エフェクト:Comp
上のVoxがアンプそのものの音を丁寧に取り込んだのとは対照的に、こちらはアンプの限界を超えた音のRig。
なんせ使っているアンプがミニアンプのMarshall MS-2Cです。
これはマイク録りではなく、ダイレクトプロファイリング+IRの音ですね。歪み自体の音はかなりチープなんですが、そこに制作者のIRミックスを合わせることで「使える」チープな音になっているのが特徴。あえてチープなアンプをレコーディングで使ったような感じです。
若干ファズっぽさもあって、グランジとかだとそのままいけそう。もし、MS-2Cを12インチキャビで鳴らしたらこんな音になるのかな、という感じがしました。
けっこう分離感も良くて、音が潰れすぎていないのはKemperの特徴かもしれません。これはある意味本物じゃ出せない音ですね。
謎にIR違いやセッティング違いのダイレクトプロファイリングとか複数アップされています。制作者も思ったより音が良くて気に入ったのかもしれません。
PAJE - Dark - verse
アップロード日:2019/5/28
制作者:Supernanard
アンプ:Marshall JCM800
キャビネット:Marshall 4104
スピーカー:
マイク:
エフェクト:Pitch(-1oct)、Pitch(+1/+2oct)、Stereo、Reverb
こちらはちょっと変わったRigで、アンプの音を聴くというよりも、こんなエフェクトのかけ方でこんな音も出せますよ、というようなRigです。
制作者のバンド(ってか親子ユニット?)で使われたRigをそのまま公開しているみたいですね。
PAJE - Dork (clip)
お子様ドラマーのクオリティが高くてそっちを見てしまいそうなオリジナルMV。ちゃんとKemperも映ってますね。
これはVerse(AメロとかBメロとか)のサウンドです。Intro、Verse、Chorus、Bass、Soloがそれぞれアップされています。
JCM800のRigですが、エフェクトの使い方の参考になるRig。シグナルをパラで分けて、ピッチとステレオ効果を使った面白い音が出せます。
NexTOne3
アップロード日:2019/5/31
制作者:HEUSSCHEN )
アンプ:BOSS Nextone Stage
キャビネット:BOSS Nextone Stage
スピーカー:BOSS
マイク:SM57
エフェクト:Reverb
発売されたばかりのギターアンプ、BOSS NextoneのサウンドのRigです。
こういう最新アンプの音を共有できるのもKemperの特徴ですね。
このRigは、良い意味で恐ろしく無個性な音が出ます。同時にレスポンスと音の分離がやたら良いですね。
エフェクトを掛ける際の基本サウンドとしても使いやすそう。あとカッティングもかなりいける音です。
Sweet Child Solo
アップロード日:2019/6/14
制作者:WangWei
アンプ:Marshall AFD
キャビネット:Mesa/Boogie Rectifier 212
スピーカー:Celestion V30
マイク:SM57
エフェクト:Wah、Boost、Delay、Reverb
音を出した瞬間笑ってしまったRig。Guns n' Rosesの名曲、Sweet Child O' Mineのイントロとリードの音そのまんまです。その音しか出ません。
Guns N' Roses - Sweet Child O' Mine (Official Music Video)
このピーキーなマーシャルサウンドを再現したRigです。ストラトでもほぼこんな感じの音が出たのは本当に笑いました。80sリードトーンの基本サウンドとしても使えそうです。まさに煌びやかなサウンドです。
FM 57 TWIN SM57
アップロード日:2019/6/14
制作者:FM
アンプ:Fender Twin 1959
キャビネット:Fender Twin 1959
スピーカー:Jensen P12Q 212
マイク:SM57
エフェクト:Reverb
ラストです。
1959年製のツイードツインの音。ツイードアンプの中でも高価だったためほとんど出回らず、タマも少ない貴重なアンプのサウンドですね。
フェンダー系のリグって、あの「フェンダーの味」が消えてしまって普通のいいクリーン、みたいになってることが多いんですが、これはツイードフェンダーの美味しいところをちゃんと持っているRigです。
シンプルに良い。気持ちの良い、少し甘さのあるクリーントーンですね。いつまでも弾いていられる音だと思います。
意外とモダンなギターとも相性良いかもです。個人的にはストラトで鳴らした時よりもストランドバーグで鳴らした方が音が良く感じました。なぜか分かりませんが。
ということで、2019年になってから半年ちょっとの間にアップされたリグから15種類を選んで一言ずつレビューしてみました。
もしKemperを持っていたら、これらのRigはちょっと試してみても良いと思います。好みに合うかは分かりませんが・・・どれも良い感じのリグだと思います。
リグマネージャーのリグ厳選とそのレビュー、1回やってみたかったんですよね。もし反響がありそうならまたやってみようかと思います。
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