集まって何かをしたりするのが大変なこの時期、バンドサウンドも自宅で作ってしまおうという自宅でバンドサウンドを作ってみよう!シリーズ、今回はパート7です。
ここまででドラム、ベース、ヴォーカルのミックスを行いました。今回は残りの楽器のミックスになります。
パート1はこちら。
toy-love.hatenablog.com
前回はヴォーカルミックスを行いました。
toy-love.hatenablog.com
今、楽曲はドラム、ベースの土台とヴォーカルの柱が建っている状態です。このままミックスが終わったところだけをSOLOにして聞いても問題なく、各パートのバランスがとれていることを確認したら、ギター、そしてその他上モノの楽器に入っていきましょう。
- ギターのミックス
ギターはバンドにとって華のような存在で、「バンドサウンド」と聞いて一番に思い浮かぶのがギターを弾いている様子だったりギターヴォーカルかもしれません。
ですが、実はミックスに於いては、これまでの土台と柱がしっかりしていればそれほど深く考えなくてもバランスは取りやすかったりします。
現状のバス(ステム)です。(消しているのは終わったところ)
メインヴォーカルコーラスベースキックスネアタムまとめ太鼓系まとめハイハットその他シンバル・金物シンバルまとめ- リズムギター
- リードギター
ヴォーカルまとめベースまとめドラムまとめ- ギターまとめ
- その他楽器
ここまでの流れがわかっていれば、基本的にやることは同じです。
まず、ギターまとめのバス(ステム)をSOLOにしてフェーダーを下げます。
そしたら、各ギタートラックに戻り、まずはパンとギタートラック間の音量バランスを調整します。すでに調整済みならいったんそのままで良いです。
ギターだけを聞いて、ステレオ感に問題がないかを確認します。
また、ギターの音はどうでしょうか。この時点で音は十分良い音となっていますか?
もちろん録りや作りの段階でしっかりと音を作り込んでいるかとは思いますが、音が気に入らないならどこが悪いか…いや、どこが「どう」悪いかをしっかりと考えておきます。
ここで、一旦ここまでにミックスしたもの、ドラム、ベース、ヴォーカルをSOLOに加えて音を聞いてみましょう。変にかぶっているところとか、おかしなところが無いか確認します。他のパートを合わせることで、ギターの定位でおかしなところがなければ、続いてギターのサウンドを調整します。
このとき、先ほどギター単体で聴いた時に思ったことや、「こうしたい」というところを考えながらやります。
基本はEQ。ハイが足りないなら高域を伸ばしたり、ミッドが出過ぎてるならミッド付近を少し下げたりします。
EQをかける際はざっくりと、Qはあまり高くしすぎない(広めの範囲にかける)ようにします。だいたいのポイントはミッドを上げるか下げるかと、トップエンドを上げるか下げるかくらい。あとよく見かけるのが「ミュートの音が邪魔」。ミッドからローミッド付近で、歪んだミュートの低いボボボボという音が目立ってしまっていることがあります。狙ってやるのは良いんですけど、歌を邪魔してる感じになってるのがけっこうあるので(特に依頼してギターを弾いてもらった曲など、作り手がギターの音に慣れてないときとか)、そこはちょっと注意してもいかも。
こういうギター向けのプラグインエフェクトなども効果的。やりすぎないように注意しながら設定します。
大事なのは、「ギターの音作り」というよりもEQと音のエッジがポイント。基本的にはEQでギターそのものの音がより好みになるよう調整しますが、ここで1つちょっとした技を。
アンプシミュレータをかけます。
ギターって録る段階ですでにアンプシミュレータとキャビネットシミュレーターがかかっていたり、アンプからマイク録りだったりしますよね。なので普通はここからはEQとかの調整になるんですけど、アンプシミュレータプラグインってギター用に調整されていて、ギターサウンドをいじるのに最も適していたりします。個人的にこのWAVES PRS SuperModelsはかなり優秀。
もちろん使うアンプシミュレータにもよりますが、この“アンプシミュレータ2重かけ”が意外と簡単にギターサウンドを調整できます。
アンプシミュレーターを追加すると、特に歪みのエッジを立たせるか丸くするかだったり、多少ゲインも変えられます(が、基本的にここでかけるのはクリーンチャンネル等を使い、ほんの少し歪む程度までの方がたぶん良い結果になりやすいです。)
また、ヴォーカルでも使ったScheps Parallel Particlesはギターサウンドの最終的な調整に良いです。リードなどにも使いやすいですね。
あとギターが浮いているとかトラックに馴染んでいないように感じるなら、ディレイはかなり有効。リードギターにはほぼ必須。L/Rでちょっとだけディレイタイムを変えたりしても良い感じです。左のギターは右にディレイを、右のギターは逆に…というのも方法の1つですね。もちろんリバーブのSENDにも使えます。例えばLRの元トラックからそれぞれ逆側のリバーブに軽くSENDしてやり、バス(ステム)からは中央のリバーブにSENDする、というようなやり方もいいですね。リバーブを左右にも作っている場合ですけど。
テープ系を通してギターサウンドに暖かさを加えたりするのも良いと思います。
音の調整が終わったら、ギターのフェーダーを丁寧に調整します。ここまでのドラム、ベース、ヴォーカルがきっちり調整されていれば、そこに聴きやすいようにギターの音量を合わせてやれば、自然とバランスの良いサウンドになると思います。
もちろんリバーブへのSENDも忘れずに。
- その他楽器のミックス
ギターが終わったら、その他楽器いきます。他のパート同様、まずバス(ステム)のフェーダーを下げます。ここに関しては残りのトラック次第ですが、SOLOを全解除して楽曲全体のパートで聴きならがらやって良いと思います。
他にリードシンセがあったり、ピアノが全体的にある場合はギターと同様にまず音色を作ってからバランスを取ります。
あとパッド系のシンセやストリングスなども同様ですね。
ここでは基本的にどれもEQでの操作がポイント。私の場合ですが、ギター以外の上モノ系は、api系のEQをかけることがとても多いです。Waves Api Collectionはかなり出来が良いですね。
あと上モノ、特にPad系のシンセやストリングスに使いやすいのがCenterなどのMS処理系。これでミッド…つまり中央分を下げて音を左右に集めてやると、真ん中のヴォーカルを邪魔しない感じになります。特にStringsはヴォーカルと帯域がめっちゃかぶるので、こういう分け方をするのはとても使いやすいです。
そして、全体のバランスを見ながらフェーダーを調整します。この辺になってくるとだいぶ慣れてきたと思います。
フェーダーを合わせて、リバーブにもSENDしましょう。
これで、全トラック、いったんミックスのバランスが取れています。
ミックスの基本的な流れとして、どのパートでもやったのが「まず音を一番良くしてからバランスを調整」です。
音を良くする、とは、楽曲にとって必要な音、狙った音に近づけるということです。音がきっちり狙ったものになっていて、さらにパンニングやフェーダーのレベルバランスがとれていれば、それで基本的に楽曲は良くなります。ただそれだけのことといえばそれだけなんですけど、それを実現するためにここまでミックスをやってきました。
あとは全体をなじませるためのリバーブがちゃんとSENDされていれば、それでもうだいたいは聴けるようになります。あとは細かいところの調整ですね。
- 全体のバランスを整える
すでに全体のバランスはほぼ整っています。この時点でOKであることもあれば、もうちょっとなこともあります。
まず、仮としてマスタートラックにマキシマイザーになるリミッターを挿入します。
リミッターやマキシマイザーに何を使えば良いかなんですけど、個人的にはIK Stealth Limiterか、AOM Inbizible Limiter G2のどちらかがあると良いです。より多機能ならOxford LimiterとかPro-L2などもありますが、要するに「音を変えずにマキシマイズできる」リミッターです。
ちなみに今載せた後半のものはトゥルーピークリミッターも入っているのでとても良いものです。
こういうマキシマイザー、リミッターって楽曲の最後にかけられるもの、つまり出口になるものなので、多少お金かけても良いかと…といってもまぁ2万円分くらいあれば十分かな。セールとかもあるので狙っても良いかも。
で、とりあえず2~3dBくらい上げて、さらにミックスダウンしましょう。
16bit/44.1kHzで書き出します。いわゆるCD音質というやつ。
そして、音を聴いてみましょう。音量がでかくなるので再生機のボリュームは注意ですが、それを聴きやすいように合わせてチェックすると、驚くと思います。
「え、音悪くない?」と。
それが16bitの音質です。今までの作業は24bitでバウンスしたものを64bitf Floatでエフェクト等かけたものを聴いていたので、そこから16bit、それもマキシマイザーかけたもので聴くと音質が変わります。
なので、ここで一度通して再生、「致命的なミス(調整忘れたトラックとか、とんでもないノイズが入ってるとか)」がないかだけを確認したら、いったん休憩しましょう。
でかけたり、寝たり、ゲームしたり…なんでも良いので、MIXとは全く違う環境に耳を置きます。1~2時間もあれば大丈夫。最低30分は置きましょう。
そして改めて、今ミックスダウンしたものを聴き直してみます。おそらく音質的な違和感はだいぶ消えているはず。かなりちゃんと「楽曲っぽく」仕上がっていると思います。
全体を通して聴いてみて、どうでしょうか。もしヴォーカルが思ったほど出ていなかったり、ベースが大きすぎるとか、逆にキックが大きすぎるということがあるかもしれません。なんかベースが濁ってるな…とか。
それらを洗い出します。そして再調整します。どうしても明らかに音量が大きすぎる・小さすぎるパートがある場合はバス(ステム)のフェーダーごと調整しても良いですが、基本的にフェーダーは動かさず、EQで調整します。
なぜ音が濁ったりうまくパートが前に出なかったりするのか。それは音のかぶりがあるからです。それを探していきましょう。
パートの構成を思い出しましょう。音がかぶりそうなパートといえば、ベースとドラムの低域かぶり、またはヴォーカルとギターその他楽器の上モノ等によるかぶりです。あとシンバルとヴォーカルね。
まだ先ほど仮で入れたリミッターは解除しないまま作業します。
音かぶりの場所を見つけるのはそれほど難しくありません。例えばベースとドラム。ベース、ドラムの音を丁寧に聞きながら、だいたいのかぶりの位置を特定します。
これくらいのゆるやかなEQを1つ作ります。ベース側でもドラム側でもかまいませんが、「ちょっと大きいかな」と思う方があれば、そちらに作ります。
そして、だいたいかぶってそうなところ、例えばベースとドラムなら低域付近ですね。そこを画像の程度ブーストしつつ、中心周波数を多少左右に振ってみます。
これで注意なのが、ゆっくりと振ること。そしてベースとドラムが「最も強くなっているところ」、まぁだいたいサビ付近ですが、そのあたりをリピートしながらゆっくりと動かしてみましょう。
音のかぶりが最も大きいところでは、ブーストしていないトラック…例えばいまドラムトラックでやってるならベーストラックが「一番引っ込んで聞こえる」ところを探します。その周波数帯がどこなのか分かれば、今比較しているドラムとベースのどちらかに、その帯域付近をゆるやかに少しだけカットするEQを入れます。カットはやりすぎないように注意。音が「かぶる」帯域って、各パートで「おいしい音の帯域」であることが多いので、やり過ぎるとカットした方のパートの良さが消えてしまいます。そもそも完全に音がかぶらないように、なんて無理ですから。
大事なのは、「聴いて変じゃないか」「違和感がないか」なので、「かぶっているところは全部調整しなきゃいけない」ではない、ということ。複数のパートが同時に鳴っているんですから、音かぶりは「当然あるもの」です。それを見つけるのは良いんですが、見つけた上で抑えるべきかそのままでいいか、抑えるならどの程度抑えるのか、と考えるといいです。何も考えず「あ、被ってる、カットしよ」では、楽曲の力がどんどんなくなってしまったりします。なんか線が細くなって、パワーが足りない感じになってしまったりとか。
ちなみにこの「帯域探し」なんですけど、よくあるTipsで、「Qを最大にしてできるだけ細くし、最大までブーストして左右に動かして探す」というやり方をよく見かけます。
それでやってもいいんですけど、そのやり方、実はそれほど効果的ではありません。
例えば、「何かわからないけど常時変な音が鳴っている」とか、「この瞬間に鳴っているシンバルの変な部分」とかをピンポイントで見つける場合は、このやり方もありです。が、それはあくまで各トラックごとに行う場合。今回のように、トラック間の音かぶり探しでこれをやると、「美味しいところだけを削りすぎる」か、「ある瞬間ではいいけどそれ以外では意味の無いEQカット」を入れてしまうことがあります。
ピンポイントで「不要な」周波数を見つけて、その「要らない周波数だけ」を大きくカットするならいいですよ。ですが、音かぶりについては先に述べたように、広め(低め)のQで、軽めのブーストで周波数帯を探す方が良いと思います。
どうしてもけっこう勘違いされてたりするんですが…先ほども書いたように、「音かぶり」は「不要なところで起きている」のではなく、むしろ「おいしい周波数帯」で起こることが多いんです。
実際私も、最初よく分かってないころはこの「細いQで最大まで上げて音かぶり周波数さがし」やったんですけど、毎回「おいしいところだけ」見つかるんですよ。だからそのやり方だとちょっと違うんだなと、もう少しゆとりを持った探し方の方が良いとなったんですよね。
同じ事をギターや他楽器やシンバル系とヴォーカル間でもやります。もしグロウルも入っているならその部分はベースとかとのかぶりもあるかも。
各パートのバランスを判断する上で、3つのレイヤーを考えると分かりやすいです。一番上(前)にあるのがヴォーカルやギターソロなどの「主役パート」。これははっきりと聴き取れることが望ましいです。
2番目にあるのが「主となる伴奏」。これは実はどちらかといえば上モノで、どうしてもベースを聴かせたい場所とか、ドラムを聴かせたい場所でなければ、だいたいがギター、またはピアノとかストリングスとかになります(バンドサウンドの場合ですよ)。その辺は楽曲の展開に合わせて選びましょう。このレイヤーのパートは、主役パートを邪魔しない限り、はっきりと聴こえるようにします。
そして3番目のレイヤーが残りのパート。どうしても細部を見出すとここがだんだん強調されてきたりするんですが、常に全体の視点を持って見ます。この3番目のレイヤーの楽器は、「パっと聴いた感じまとまって1つに聴こえる」状態でありながら「よく耳を澄ませば各パートの演奏がちゃんとはっきりきこえる」ようにするのがポイントです。
例えばベースとドラムの音かぶり。これに熱中しすぎて、さらに無意識のうちに片方のパートを偏重してしまうと…例えばスネアだけがなんか強調されて全体のバランスがおかしくなる、ということが起こり得ます。スネアはだいたいの場合よく聴こえるんですけど、こういう細部を凝視してしまうと、なぜか「リムショットのリムの金属感がかぶって聞こえにくい」みたいな謎のこだわりが出たりします。その謎のこだわりは一生懸命抑えましょう。
「よくよく聴けばちゃんと聞こえてる」このバランスが大事です。実際にどんな感じかは、実際にリリースされている曲を聴いてみると良いです。できればパート構成が似ている、同ジャンルの曲、それもできるだけ「売れた曲」で。「ベースを聴こう」と思ってその曲を聴くと、しっかりベースラインが聞こえてくると思います。でもぼーっとして聴くと、全体が綺麗にまとまって聞こえると思います。このバランスを頭に入れてやると良いです。
ちなみに、ここで使うと良い感じなのがiZotope陣。具体的にはNeutron。
もちろん使わなくてもいいんですが…使うならグレードはStandard以上で。持ってなければ無理に買う必要はないです…ただあると便利です。
このStandard以上のNeutronには、マスキング機能といって、複数のトラック間の波形のかぶりを簡単に見つけることができます。
自動ミックス機能?私は使ってないです。もちろん使っても良いですけど…否定するつもりは全くないんですけど、今のところはまだ手作業で調整する方がやはり自分の好みに仕上げやすいです。
まず、各まとめのバス(ステム)トラック全てにNeutronを入れ、名前をつけます。そしたらベーストラックのNeutronをアクティブにしてEQ以外をOFFにし、EQだけがONの状態でマスキングでドラムを選択(逆でもいい)、およびヴォーカルとギター、その他楽器という感じで、音のかぶりが視覚的に分かります。視覚的に分かれば、その周波数帯を、カットしても良いパートの方ををゆるやかに軽くカットすれば、だいたいそれでOKです。
その後、EQ以外のエフェクトも使ってみても良いと思います。それぞれONにして調整し、良い感じになるなら使う。なんか微妙だな、と思うならEQ以外使わなくても良いです。
EQだけではどうしても調整しきれないものもやはりあります。そういうときに便利なのがこういうSmack Attack みたいなトランジェント系。
これで、「どうやっても前に出てこないパート」のアタックをちょっと、ほんとにちょっとだけ上げてやると、途端にしっかり聞こえたりします。ヒトの耳がどれほど「音のアタック」を重視しているのかが面白いほど分かります。
EQ等調整したら、改めてミックスダウンしてまた聴いて…をやります。基本的に全体のチェックは16bit/44.1kHzでやる感じで。なぜなら、公開する際はその音質になるからです。(何か別のハイレゾでしか公開しない、ならその公開する音質で良いです。)
ということで、今回はこの辺りかな。だいたい全てのパートのバランス取りが出来上がりました。この時点で、(マキシマイザーは別にして)ほぼ「楽曲として成り立っている」、なんなら「Youtubeにアップしても大丈夫かな」レベルまで持って行けてれば最高。
次回は、ついに完パケまでいきます。次回は楽曲を活き活きとさせる「オートメーション」、そして、最終段「マスタリング」編です。次回シリーズ完結!
toy-love.hatenablog.com
パート1はこちらから
toy-love.hatenablog.com
Lineアカウントからブログ更新をお知らせ!
がっきや速報
人気blogランキングへ