以前レビューさせていただきました、RE-J/Analog.man AR20DL/Pro+というアナログディレイが生産終了となり、後継機種としてオリジナル筐体と大幅に強化された機能を搭載したアナログディレイ「Analog.man ARDX20」が今年、発売されました。
このARDX20は7月に行われたニューヨークアンプショウで発表され、即完売したモデルですが、先日アナログマンのサイトを何気なく見ていたら「今ならすぐに発送するよ」と書かれていたので、ついオーダーしてしまいました。
さっそく、レビューしてみましょう!
Analog.man ARDX20
こちらが、ARDX20です。このペダルは、AR20DLの後継機種ということもあってか、開発は「Analog.man Asia」ことRe-J Projectさんによるものとなっているようです。ちなみにAnalog.man Asiaとは「ARDX20を含むRE-J Projectによる企画開発ペダル、およびKing of Toneを含むAnalogManオリジナルペダル全機種を、インターネットを介した直接取引きによりアジア全域に提供します。ただし、Analog Man Asiaがペダルを提供する対象はプロギタリストの方または自らの楽しみのため演奏をされる特定可能な個人の方であって、RE-J Projectの立ち上げ当初からの理念に基づき、店頭販売や転売を目的とする方面は直接の提供対象となりません。(こちらから引用)」というものとなるようです。これは非常に楽しみですね!
では、ARDX20について。
ARDX20は、ディレイタイム、フィードバック、ディレイレベルを2種類プリセットしておき、一発でそれらを切替えることの出来るデュアルアナログディレイです。最大ディレイタイムは600msと、アナログディレイとしてはかなり長いタイムを実現していて、これは前作AR20DL-XL(遅延時間倍増モデル)と同等のディレイタイムとなっています。ちなみに私の持っているAR20DL/Pro+は300ms程度のディレイタイムです。
コントロールは、Time、F.Back、Levelがそれぞれ2つずつ搭載されていて、右側のフットスイッチでペダルのON/OFFを、左側のフットスイッチで上下のモードを切替えることが出来ます。デュアルアナログディレイといっても、内部にアナログディレイが2つ入っているというわけではなく、単純にフットスイッチでパラメータを切替えられるというものです。
このペダルは、通常のInput/Outputの他に、エフェクトループをエクスプレッションペダル端子を備えています。両端がInputとOutputです。エフェクトループはディレイ音にのみエフェクトをかけることができ、昔のMarshall Guv'norに搭載されていたような、Y字ケーブルを使うタイプのもので、写真左から2番目がエフェクトループとなります。右から2番目がエクスプレッションペダル端子で、ディレイタイムをエクスプレッションペダルでコントロールすることが可能となっています。
筐体の裏側には電池ボックスが付いています。この、ちょっとRocktron風な筐体は完全オリジナルで、金型から起こして作られているということですね。前身機種となるAR20DLを思わせる、メタリックレッドカラーも印象的です。
ちなみに、アナログディレイを電池で・・・となるときになるのはやはり駆動時間ですが、このペダルはどういう仕組みか、アナログディレイとしては考えられない、15mAというエコ仕様wを実現しているので、、普通の9V電池でも30時間程度駆動させることができるとのことです。
裏蓋を開けると、こんな感じです。写真手前(フットスイッチの下側)に付けられたのがエフェクト本体の基板、奥に見えている基板はノブ系をまとめたもののようですね。
基板には「Re-J Project」の文字が入れられています。
たくさん並ぶIC類。手前右端のICは、MN3102の互換品となるBBDです。
Philips NE571N、そしてRe-J Projectさんの代名詞とも言えるJRC4558Dも搭載されています。また、狙った物か偶然かは分かりませんが、緑色のコンデンサなどはMade in Japan時代のBOSSペダルを思わせますね。
写真はこんなところでしょうか。それではレビューの方、いってみましょう。
- 操作性
アナログディレイとしては非常に多機能なモデルとなっていますが、各コントロールはそれぞれ1つのノブ/スイッチが1つの役割を果たすよう作られているため、とても使いやすくまとめられています。ただ、Re-J Projectさんにオーダーすればどうなのかは不明ですが、米国Analog.manから購入した場合、説明書がないので、背面の端子の役割をちゃんと知っておかないと、何が何だか分からないかもしれません。といっても、Analog.manの販売ページには英語ですが説明されていますし、このペダルをAnalog.manからオーダーするような人なら、たぶん機能は先に分かってるとは思いますw
- サウンドレポート
では、音の方を。いくつかサンプルを録ってみました。いつもどおりストラトとGVA Customの組み合わせです。
サンプル1
まずはディレイタイム最大でのサンプルです。約600msのディレイタイムとなっています。
サンプル2
続いて、ディレイタイム最小でのサンプル。ダブリングディレイのような効果を得ることができます。このときのディレイタイムは36mSです。
サンプル3
こちらは、エフェクトループにCORNELL The 1st Fuzzを接続してのサウンドです。最初はFUZZをOFFにしています。途中でディレイタイムが変わっていますが、これは左側のフットスイッチを使って一発で切替えた物です。ファズだとこんな効果になりますが、他にもディレイやコーラス、リバーブ、リングモジュレーター、ピッチシフター、ワウペダルなど、いろいろなものを接続することが独特の効果を得ることができます。エフェクトループを使う際の注意点は、ループ内で音量をブーストしないこと。ブーストする場合はFeedbackを下げること、です。ディレイ音にエフェクトループを通しているわけですから、ここでブーストするとフィードバックのたびにディレイ音がブーストされ、速攻で発振します。あえてそれを狙うのもありといえばありですが、下手をするとアンプが飛びかねないので注意しましょう。Feedbackが1回になるように設定すれば、ディレイ音をブーストしても大丈夫です。
サンプル4
続いては、アナログディレイならではの発振サウンドです。ARDX20はエクスプレッションペダルでディレイタイムを変えることができますが、このサンプルではTimeノブで発振音を変えています。
サンプル5
こちらは、エクスプレッションペダルとエフェクトループを使ったサンプルです。エフェクトループにはさきほどと同じCORNELL The 1st Fuzz、エクスプレッションペダルはKORG EXP-2を使いました。ちなみに、Analog.manオフィシャルサイトではRoland EV-5を勧めているようです。
これにより、ギタープレイと発振、さらにエフェクトループでの効果もあわせた、飛び道具のような使い方が可能となります。エクスプレッションペダルとワウをつないで両足で操作する、なんてのも面白いかもしれません。
いったんサンプルはこんな感じでしょうか。このペダルは、アナログディレイとしてはかなりクリアなサウンドが特徴と言えそうですね。発振中でも原音がしっかりと出ますし、ディレイ音も、アナログディレイですから徐々にこもっていくのは当然なんですが、それでもかなりクリアなディレイ音だと思います。サウンドはMAXON系のアナログディレイに近いといえば近いのかもしれませんね。
しかし、この機能性とそれによって作り出せる効果は本当におもしろいです。普通にアナログディレイとして使う場合も大変優秀で良い音のペダルだと思いますが、パラメータをプリセットできることで、曲中にも簡単に効果を変えることができますし、さらにエフェクトループとエクスプレッションペダルによるディレイタイム操作ができることで、変態的なサウンドを作り出すのも簡単です。また、ペダルにはON/OFFを示すLEDの他に、ディレイタイムに合わせて点滅する2つのLEDが搭載されているので、タイム設定も非常に楽です。
では、前作AR20DLとの違いはどうでしょうか。このARDX20は、前作の遅延時間倍増モデル「AR20DL-XL」に近いサウンドとなるよう調整されているということで、私の持っているAR20DL/Pro+とはまた違うのかもしれませんが・・・とりあえず比較してみましょう。
サンプル6
前半がAR20DL/Pro+、後半がARDX20です。ディレイタイムやフィードバックは同等に設定してあります。AR20DL-XLのサウンドを私は知らないので何とも言えませんが、こうして並べてみると、少なくともAR20DL/Pro+とは違った特徴のディレイペダルということになりそうですね。AR20DL/Pro+は、どちらかといえばBOSS系のDM-2等に近い、かなりフィルター感のあるディレイ音なのに対し、ARDX20はMazon系の、アナログディレイとしてはクリアなディレイ音が特徴だと思います。あとは好み、といったところでしょうか。機能面ではさすがに後継機ということもあり、AD20DLに勝ち目はありませんw
それにしても・・・最近はMalekko Echo600 Darkを主に使っていたんですが、改めてAR20DLを使ってみるとこちらもまた良いですね。Malekkoはもっとフィルター感が強く、どっしりとしたディレイサウンドが特徴なのですが、AR20DLのディレイ音が流れながら続いて行くようなフィードバックも素晴らしいです。そしてARDX20のクリアで使いやすく、それでいて間違いなくアナログディレイなサウンドもとても良いと思います。
一口にアナログディレイといっても、機能面はもちろんのことですが、サウンドにもそれぞれ特徴があるので、本当に面白いです。最近は手頃な価格でいろいろなアナログディレイが発売されているので、アナログディレイ好きとしてはとても嬉しい限りです。逆に欲しい物が増えてしまって困るという側面もありますがww
というわけで、Analog.manの最新作、ARDX20のレビューでした。ちなみにこのペダルは、アメリカのアナログマンで基板が作られ、Re-J Projectで配線、パーツの装着、中国でケース組み込みが行われ、もう一度日本でロゴが入れられ、最後の調整が行われるという方式で作られているそうです。それがアメリカのアナログマンショップに渡って、それを私が買って日本に送ってもらったというわけで・・・何かあっちこっちを旅してきたペダルですw
あまり楽器店では見かけることがないと思いますが(Analog.man Asiaの方針もありますし)もし何かで弾く機会がありましたら、是非試してみてください。また、少し待ち時間があるようですが、Re-Jプロジェクトさんのページからもオーダーすることができるようです。また、現在ARDX20専用の「タップテンポボックス」を開発中で、それが完成すればタップテンポにも対応するアナログディレイペダルとして使えるようになるそうです。