ふと思いつきでやってみた、オーバードライブペダルの簡易比較動画「いろんなオーバードライブを弾いてみた(ニコニコ動画)」ですが、アップロードから数時間にもかかわらず、思いの外反響をいただきましたので、せっかくですから登場したペダルについて考察を書いてみたいと思います。すでにレビュー記事のあるペダルもあれば、まだレビューしていないペダルもありますが・・・いつものレビュー記事とは別で、それぞれの音について簡単に書いてみます。各ペダルの詳細なレビューは(レビュー記事がないものは)またの機会にさせていただきますね。
それでは、いってみましょう!
Analog.man King Of Tone V4
Analog.manが、テレキャスター使いのJim Welderと共に開発したという、オーバードライブペダルです。このペダルが発売された当時は世界中でTS系のオーバードライブがもてはやされていた頃で、Jim Welderさんも80年代のTS808(TS9ケースにノックダウン)を使用していたにもかかわらず、TS系とは全く違う回路で制作されたオーバードライブです。このV4では、2つの「King Of Tone」を独立で連結させるという改良がなされた、King Of Toneの最終バージョンですね。生産が非常に遅れていて、しかも恐ろしく多いバックオーダーをかかえているため、国内、海外問わずなかなかショップに並ぶことのないペダルです。
音についてですが、基本的にナチュラル系の歪みが特徴です。ギターとアンプの特性を全く変えずにただマイルドな歪みだけを足したようなサウンドが特徴ですね。両方のチャンネルを使えばゲインをかせぐこともできますが、片方だけだとクランチサウンドが精一杯です。ちなみに、「他のオーバードライブをブーストするゲインブースター」として使っても非常に優秀なペダルです。
Far East Electric FUJIYAMA60
実は届いたばかりのペダルです。かつて国産最高峰のオーバードライブという謳い文句が踊った、Honda Sound Works FUJIYAMA Drive Britishをベースに改良、製作された、Far East Electricの新しい「フジヤマ」です。HSWのFUJIYAMAは私は弾いたことがないんですが、とにかく賛否両論が激しくて、果たしてどんな音なのか非常にきになっていました。今回、FEE名義でリニューアルしたのを見つけ、早速注文してみたというわけですw
音ですが、まずすぐに分かるのがこのレンジの広さです。そしてHSW時代にも言われていたとおり、少しファズライクなテイストもありますね。というか、ブリティッシュ系のファズペダルのゲインを上げてギターのヴォリュームを絞ったときの音にナチュラルなオーバードライブを混ぜ合わせたような・・・非常に独自色の強いペダルだと思います。これは賛否がはっきり分かれるのも道理だと思います。
Hermida Audio Technology Zendrive
これは長いこと探していたペダルの一つでした。オーバードライブペダルの売り文句に、「ダンブル系」というのがあって、それを謳うペダルはいくつもありますが、それを広めるきっかけの一つが、このZendriveだったのではないかと思います。国内に正規代理店がないため、このインパクトのある名前を知っている人は多くても、実際に見かけることがほとんどないペダルですね。
音は、なるほどアンプライクなタイプの歪みだと思います。今でこそ真空管アンプの特性の研究が進み、アンプに近い反応性のペダルが増えていますが、このZendriveが作られた頃だと驚異的なペダルだったのは間違いないと思います。反応性はアンプライクですが、あまり「ダンブル」とか「マーシャル」というような癖はなく、ナチュラルで非常に使いやすいオーバードライブです。
Klon Centaur(ゴールド/絵なし)
先日もちょっと登場しましたが・・・「ハイエンドオーバードライブ」の代名詞的な存在、Klon Centaurです。全体域を持ち上げるブースター的オーバードライブとして有名なペダルですね。
実際聞いていただくと分かると思いますが、Zendriveと比べると倍音成分が豊かで、煌びやかな音が特徴ですね。ただレンジが広いというだけでなく、「ギターの音が前に出る」帯域だけを均一にブーストしてくれるので、弾いていて本当に気持ちの良いペダルです。このペダルは今回の動画で使った中で唯一トゥルーバイパスではないんですが、内部に組み込まれたバッファがまたとても良いんですよね。「つなぐだけで音が太くなる」と言われたのはそのためです。
Mad Professor Sweet Honey Overdrive
昨年発売された、MAD PROFESSORの新作オーバードライブですね。おそらく、今最も勢いのあるオーバードライブの一つなのは間違いないと思います。動画ではメーカー名をアルファベット順で並べているので、Klonの後だとややレンジが狭まって聞えてしまうかもしれないんですが・・・このペダルの場合その絶妙なレンジ感が本当にちょうど良くて、すばらしいバランス感覚というか・・・土台がしっかりかたまったような安心感さえ感じるペダルです・・・個人的な好みにも合っていました。
Klonがソロのときに思いっきり前に出て行くためのペダルなら、こちらはいつもONにしてギターサウンドの足下を固めるようなタイプのペダルだと思います。
Paul Cochrane Timmy Overdrive
「トランスペアレント」といえばこのペダル、と言うような評価で、こちらも人気のオーバードライブです。ギターの音を全く加工せずに歪ませているかのような、広いレンジと高い反応性、特性を持ったペダルですね。Klon Killerと言われたり、Zendriveと音が似ていると言われたりしますが、並べるとそれぞれ全く違った特性なのも分かっていただけるかと思います。若干、Fenderアンプ系の味付けがなされていて、少しジャリっとした歪み方が特徴です。
Shigemori Stone Drive Custom Ver.3
以前Mavis MOD-20を買おうかどうか迷いながらイシバシ楽器さんのネットショップを見ていたらなぜかこれが届いてしまいましたw
その形状から男性用下着として親しまれているオーバードライブですね。純度の高いアルミを削り出した筐体、こだわり抜いて作られたサウンド・・・メーカー自らが「でかい、重い、高い」の3拍子がそろっていると言ってしまった、オーバードライブペダルです。
動画の中では、ギターの各弦の音にそれぞれオーバードライブをかけたような、最も濃密な歪みを作り出しています。オリジナルTube Screamerの、独特の「鼻づまり感」をなめらかにしたような独特の雰囲気は、まさにShigemoriサウンドです。ちなみに、「Shigemori Ruby Stone」は、この音がもうちょっとあっさりとしたような感じのサウンドです。「シルクのような」という形容詞が似合うサウンドですが、これで他のオーバードライブをブーストすると、エッジが強く立った、攻撃的なサウンドになります。Shigemoriマジック、でしょうかw
Shun Nokina Design Redemptionist
若き天才エフェクトビルダー、Shun Nokinaの製作したオーバードライブ/ディストーションペダルです。アルファベット順とはいえ、動画内で最大サイズの筐体を採用したShigemoriと最小サイズのShun Nokinaが並んだのはちょっと面白いです。
Shigemoriが「シルキー」なら、こちらは「ミルキー」とでも言えるような、とにかく柔らかくてなめらかなサウンドです。動画だと分からないと思いますが、サステインの長さと、普通に弾いてもまるでレガートのように流れるかのような音がこのペダル最大の特徴です。ちなみに、音はそれぞれ好みもあるので、どれが一番だと言うことはできませんが、「ノイズレス」という観点から見ると、ShigemoriとShun Nokinaの2台は他のペダルと比べものになりません。圧倒的にノイズレスです。
Smoky Signal Tubeless α tuning
突如として登場し、一気に話題になったSmoky Signal AudioのTubelessペダルです。Tubelessのベーシックモデル「β」をシングルコイル用に調整したというモデルですね。オリジナルのアルミダイキャスト筐体、ヴィンテージパーツやレアパーツをふんだんに使い、しかもOpampは何段階かに分けたリスニングで選別されるという、とんでもない工程で作られたオーバードライブですね。チューブアンプの癖と反応性、特性をエフェクターで再現するというテーマにこだわって作られています。
歪みの倍音成分は少し控えめで、少しチューブっぽい癖が強めに出る音が特徴です。特に倍音特性のせいか、一聴するとこもっているように聞えることもあるんですが、ギターの音はとてもよく抜けます。また、ピッキングに対する反応は早いんですが粘っこいというか・・・ただピッキングに素直に反応するだけじゃなく、ヴェールを1枚かぶせたような溜め感のある反応の仕方が非常にチューブアンプっぽい特性を作り出しています。
というわけで、動画内で使用したオーバードライブ9台の簡易レポートでした。
最初、この動画を作り始めたときはTwitterに書くくらいで、こちらのサイトとは別、みたいな形にしようかと思って、どうせやるなら豪華にいこうと、こちらでまだ紹介していないペダルも入れてみたんですが、Twitterに書いてみたところすぐに反響をいただきましたので、サイトでもちゃんと紹介しようと思った次第です。それにしても、動画に登場する機材の中で、一番安いのがアンプというのも謎ですねw
個人的にニコニコ動画って好きで、よく見てるんですが、なんかこう、自分の作った動画にコメントが流れるというのはおもしろいというか、何か不思議な気持ちになりましたw
見てくださった方、コメントをくださった方、本当にありがとうございます!
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