【エレキギター】Gibson Les Paul 60th Anniversary Limited 【11月21日入荷予定】 |
それを記念して、限定の「初期仕様」を再現したレスポール「Gibson Les Paul 60th Anniversary Limited」が登場です!
- ソリッドボディ黎明期
では、ご紹介の前に、少しギターの歴史を振り返ってみましょう。
今、エレキギターといえばソリッドボディの方が一般的と言えます。ですが、元々アコースティックギターにピックアップを取り付けた形から発展してきたエレキギターは当初、フルアコースティックモデルが主流でした。
そんな中、「ソリッドボディのエレキギター」の源流となったモデルが2つあります。
(レスポール大名鑑 1915~1963より)
まずはこちら。1948年にギタリスト、マール・トラヴィスのためにポール・ビグズビー(現在もBigsbyヴィブラートで有名)が製作したソリッドボディのエレキギターです。シングルカッタウェイのフラットトップ、ヘッドは片側6連のペグが並ぶスタイルで、美しい装飾が施されたモデルです。
(レス・ポール伝〈下〉より)
こちらはさらに前。1941に製作されたギターです。ボディの中央はソリッドとなっていて、そこにGibsonネックを固定。ボディの左右はEpiphoneのホロウボディを大胆にカットした取り外し可能なボディウィングを搭載。ソリッドボディのギターの原型であり、セミアコギターの原型であり、そしてスルーネック構造の原型とも言えるギターです。このギターの製作者は当時トップギタリストの1人として有名だったレス・ポール。そう、Gibson Les Paul Modelは彼のシグネチャーモデルです。
レス・ポールはこのギター「The Log」をGibson社に持ち込み、ソリッドボディのギターを作らないかと交渉したそうですが、(ボディの真ん中のところを指して)箒にピックアップを付けたものだと言われ、当時は相手にされませんでした。
1940年代にエレクトリックスティールギターとそのアンプで躍進した新興メーカーがありました。その名も「Fender」社です。スティールギターでは、「ソリッドボディ」のものがすでに開発されており、FenderだけでなくGibsonもソリッドボディのスティールギターを発売しています。
Fenderの代表、レオ・フェンダーは1949年ごろから本格的にソリッドボディのエレキギター・・・スティールギターではなく、スパニッシュギターの開発に取り組みます。レオがビグズビーの製作したソリッドボディのモデルに刺激を受けたのは確かなようです。また、レオはソリッドボディの原形を作った有名ギタリスト、レス・ポールとも親交があったようです。
(フェンダー大名鑑 1946-1970より)
そして作られたのが、プロトタイプ1号機となるこのモデル。Fenderらしいボディ造形ながら、ヘッドは3対3のスタイルを採用しています。
さらに開発が進み・・・
(フェンダー大名鑑 1946-1970より)
プロトタイプの2号機も完成。かなり見慣れたスタイルに近づいて来ました。この時点でヘッドは片側6連。また弦のピッチがはっきりと出るソリッドボディのギターのために、イントネーション調整(オクターブ調整)の出来るブリッジも開発されています。
そして翌1950年のNAMM SHOWにて、Fenderは「革新的なギター」を発表します。
クラシック・シリーズ“エスクワイア”Fender MEX 《フェンダー・メキシコ》 Classic Series '5... |
Esquireは特に西海岸のミュージシャンを中心に人気を博し、さらに、翌51年になると、Fenderは2ピックアップ仕様のEsquireを発表。当初「Broadcaster」と名付けて発売されたそのギターは、商標の関係で後に「Telecaster」となり、現在でも高い人気の定番ギターとして知られています。
Fender USA / フェンダー Cust... |
一方、50年に発売されたEsquireの人気が高まるのを見たGibson社でも、ソリッドボディのエレキギターの開発が進んでいました。当時の社長、テッド・マッカーティは、Fenderのギターはあまり気に入らなかったらしく、Gibsonらしいギターの製作をしようと決断。当時すでに50年以上の伝統あるギターメーカーであり、同時に革新的なモデル製作にも積極的なGibsonは、1951年頃からFenderに続いてソリッドボディのエレキギターの製作を始めます。
(レスポール大名鑑 1915~1963より)
いくつものプロトタイプが製作され、(写真は当時の証言を元に再現されたプロトタイプの1つ)改良が進められていきます。Gibsonがこだわったのは、当時Fenderには作ることの出来なかった職人技「アーチトップ」。特にGibsonを1894年に設立したオーヴィル・ギブソンはもともとヴァイオリン職人で、その技術を活かし、Gibsonはアーチトップギターでトップに立っていました。
しかし、いくらギターの完成度が上がっても、「Fenderの2番煎じ」では決定打に欠けます。そこでGibson社は1940年代の初め、「ピックアップ付きの箒」を売り込みに来たギタリストに焦点を定めます。
当時レス・ポール&メリー・フォードとして、夫婦デュオで全米を席巻し、ビルボードチャートでも1位を連発していたギタリスト、レス・ポールです。こうして舞台は整いました。数々のプロトタイプを元に、レス・ポールの意見も取り入れながら開発は進み、ついに1952年、後に最も成功することになるシグネチャーモデル「Gibson Les Paul Model」が発売されます。そのギターは発売当初から非常に高い人気を博しました。
しかし、このギターには1つの問題点がありました。当時のLes Paulには、レス・ポールが発明した「トラピーズテイルピース」という、テイルピース一体型のブリッジが使われていました。レスポールのモデルに、レスポールが開発したブリッジを使うのは自然なことですが、当時世界ツアーやレコーディング、プロモーションで各地を飛び回っていたレス・ポールはGibson社と密な連絡を取ることができず、ブリッジの求めるネックの仕込み角と違った仕様のギターを作ってしまいます。
赤線が弦、青線がネック、黒線がボディです。この違い、分かりますか?
レス・ポールの開発したトラピーズテイルピースは、テイルピースの「上」に弦を通すことで、ブリッジを確実にボディに押さえつけ、振動をしっかり伝えると同時に、レス・ポールの特徴的なギタープレイの1つ、ミュート奏法を行うことができるブリッジです。
しかし、実際にGibsonが作った最初期のレスポールは、テイルピースの「下」に弦を通したときに正常となる仕様となっていました。これは、Gibson側としてはボディトップとネックの段差を出来る限り小さくして演奏性を高めたい、という思惑もあったようですが、上に述べた通り、連絡の不足から結果的に誤った形でブリッジを使うことになってしまいます。
この点は1953年のバーブリッジ、さらに56年のストップテイルピース+Tune-O-Maticの採用で改良されていきますが、現代に於いて初代レス・ポールモデルのブリッジが不評なのにはこういった訳があります。
1952年最初期モデルのLes Paul Modelのブリッジ(ギブソン・レスポール・コレクションより)
さて、ここまでレスポールやソリッドボディのエレキギター黎明期のことを簡単に見てきました。
では、改めて今回発売されたモデルを見てみましょう。
Gibson Les Paul 60th Anniversary Limited
【エレキギター】Gibson Les Paul 60th Anniversary Limited 【11月21日入荷予定】 |
メイプルトップ、1ピースマホガニーバックのゴールドトップボディ(内部にはウェイトリリーフ、つまり軽量のための穴開けもありません)にマホガニーネック、ローズ指板22F仕様です。ピックアップにはアルニコIIのP-90を2つ搭載。2Vol、2Tone、3Wayセレクターで、ブリッジはレス・ポールの開発したトラピーズテイルピースを搭載。
そして、このモデルに搭載されるトラピーズテイルピースは「Wraparound Trapeze」となっていて、レス・ポールが当初考えていた通り、弦がブリッジの「上」を通るスタイルを実現。ブリッジ側の高さを低くすることで、現在のLes Paul Standardと同じネック仕込み角(5°±15″)のまま、「正しい形」のトラピーズテイルピースを実現しているようですね。
ゴールドトップにナチュラルカラーのバック、ネックにもバインディングが入っていることから、最初期1952年モデルでも後期〜1953年にかけて作られたスタイルの復刻となっています。(さらに最初期はアンバウンドと呼ばれ、上に載せた写真のようにネックにバインディングが無く、他にも細かな仕様違いがありました。)
とはいえ、現在のいわゆる「スタンダード」や「2008スタンダード」「トラディショナル」といったモデルとは違い、ボディ材に軽量化を施さない仕様となっていることからも、通常のスタンダードモデルにパーツを付け替えた、というタイプではなく、きちんと限定モデルとして新たに作られていることが分かります。というか、カスタムショップでもないのに1ピースマホガニーのボディバックで、レギュラーのスタンダードと変わらない価格というのも素晴らしいです。
正直、これは欲しいです。
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