特に高級なエフェクターにあると思います。しかし、なんでもかんでもトゥルーバイパスならいいってこともないですし、また、使い方によってその真価を発揮できてない、もったいない、と思うこともけっこうありますので今回はマジメなお話として書いていこうかな、と思います。
トゥルーバイパスって結局どうなの?と思ってる方は、是非読んでいただけたら、と思います
トゥルー・バイパスの意義について
そもそも、トゥルー・バイパスってなんなのか、について考えていこうと思います。
直訳すると「本当の側路(迂回路)」となります。エフェクターにおいてこれの意味するところは、エフェクトオフ時に「完全にエフェクト回路を通らずに、電気を迂回させる」ということですね。ON/OFFを識別するLEDを付けて、本当の意味での「トゥルーバイパス」を実現するには、Fulltone社製に代表される、機械式9PINのスイッチを使う必要があって、これがけっこう高いので価格もその分高くなってしまいますね。
次の写真の左右下にある青い、四角いものが9PINのスイッチです。
見てのとおり、端子が9つありますね。これが9PINということです。
では、これが何のメリットがあるか、ということについて考えたいと思います。
よく言われるのがエフェクトオフ時の音痩せ防止ですね。
トゥルーバイパスでない、機械式スイッチを持つエフェクターは、構造上、エフェクトをOFFにしたときにも電流がエフェクター内の回路を通ってしまいます。というか、分割されて残る、といった方が正しいかもしれません。
そして、それが原因で、エフェクターをOFFにしているのに、エフェクターを使わないときに比べて、音が痩せてしまう、ってことですね。トゥルーバイパスにすれば、これに関しての問題はなくなります。インプットからの入力をアースに落とす、というのがトゥルーバイパスです。
代表的なものが、ワウペダルですね。写真上が一般的なトゥルーバイパスでないワウ、下がトゥルーバイパス仕様のワウです。
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では、BOSSやIbanez等のエフェクターに使われている電子スイッチはどうでしょうか?
これはフットスイッチによって電気的に信号の方向を変えてやるタイプです。いわゆる電子機器にあるボタンと同じ、と考えてもらえばOKと思います。
こちらは、エフェクトオフ時に、最低限ですが回路を通過します。なのでやはり音痩せは出てしまいます。
では、トゥルーバイパスでないエフェクターの音はそのままに、トゥルーバイパスにするにはどうすればいいでしょうか。
- スイッチ自体を交換する
これが完璧です。モディファイ屋さんにお願いすれば、できると思います。
ただ、ケースの大きさや構造からできないものもあります。その場合にも対処法はあります。
写真は、トゥルーバイパス化されたIbanezです。機械式のスイッチが飛び出してるのがわかると思います。
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- ミレニアム・バイパス方式にする
厳密には「トゥルー」ではないんですが・・・(インプットがアースに落ちていない)基本となるスイッチはそのままで、配線のつなぎ方を変えることでバイパスを実現しています。
基盤にスイッチを含む部品が全て取り付けられていたり、ケースの問題があったりして、基盤作り直しやケース入れ替えはあまりにも高額になりすぎる、といった場合には、この方式も悪くはないと思います。もちろん完全なトゥルーバイパスを求める方には、ケース入れ替えや基盤再製作といった方法をオススメします。
- Maxon方式にする
Maxon(マクソン)エフェクター OD9 |
これも厳密に「トゥルー」ではないんですが、4PDTスイッチというのを使って、エフェクトと完全に独立したバイパスを作ることに成功しています。
- ラッチングリレー方式にする
Maxon方式に近いですが、電子スイッチはそのままで、完全独立したリレーによるバイパスを作る、という方法ですね。BOSSのTU-2など、音痩せのはげしいものにはこれでかなり変わります。ROOT20というモディファイ屋さんが得意とされてますね。
さて、このように、音痩せをなくす、という意味を持つべくしてつくられたトゥルー・バイパスですが、じゃあ持てるエフェクター全てをトゥルー・バイパスにすればいいのか、というと、それも少し違います。どういうことか、見ていきたいと思います。
BOSSの哲学とバッファーアンプ
さて、BOSSのエフェクターは全て電子スイッチですが、この電子スイッチには機械式にないメリットもあります。それは、切り替えの速さと切り替え時のノイズのなさです。BOSSエフェクターを使ってた人が、ハイファイなハンドメイドのエフェクターに手を出したときに、スイッチの切り替えでノイズが入ることがあって不思議に思うかもしれませんが、それはそういった構造上の問題なんですね。機械式、とくにトゥルーバイパスは、電流を回路から一気に抜くのでそうなってしまいます。
そして、BOSSのエフェクターには全て、「バッファーアンプ(バッファアンプ)」というものが付いています。いや、むしろ電子式スイッチのエフェクターには全て、と言い換えてもいいかもしれません。
ヴォリュームペダルを使ってる方は、「ハイインピーダンス」とか「ローインピーダンス」といった言葉を聞いたことがあると思いますが、一般的な多くのパッシブピックアップを搭載したギターから出力されるのは「ハイインピーダンス」な電流です。インピーダンスってのは、要するに電圧と電流の比のことで、単位はΩです。オームの法則の式を使って表すと
インピーダンス=電圧/電流(非常に単純化しています)
というようになります。見ていただくとわかるように、ハイインピーダンスの状態では、電流に対して電圧が高いわけですね。この状態だと、電流が影響を受けやすいために、ノイズ耐性が弱くなってしまいます。そこで、インピーダンスを下げてやることで、電流を強くし、外来ノイズ等の影響をうけにくくする役割を果たすのがバッファアンプ、というわけです。
バッファアンプは、単純にいえば原音そのままの増幅器です。ですので、一般的な「単体ブースター」なんかもバッファアンプの役目を果たすことができます。
さて、BOSSの考えは、エフェクターにバッファを備えることで、ノイズに対する弱点を補強し、速度と切り替えノイズのない電子スイッチを使用。またそれによって、機械式スイッチに比べてより自由な筐体設計ができるため、BOSSならではのあの、踏みやすく頑丈な形ができる、というものです。
ちなみにBOSSの「あの形」ができたとき、トゥルーバイパスは存在していませんでした。
-
- 追記:松美庵さんにご指摘をいただきました。その当時、「LED付きのトゥルー・バイパスは存在しなかった」ということだそうです。ON/OFFを表示するLEDをつけず、その回路をバイパスにまわす、というLEDのないタイプのトゥルーバイパスは多数存在した、ということです。知識不足をお詫びとともに訂正させていただきます。
- バッファアンプ
ここでいくつか、「バッファアンプ」として使用できるエフェクターを紹介していこうと思います。
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ProvidencePD-3BUFFER / BOOSTER (バッファー/ブースター) |
こちらはCAJのopamp方式とちがって、ディスクリート方式のバッファです。要するに、トランジスタを使ったバッファですね。
音に関してこの辺はもう好みなので、どれでも好きな方を試してもらえればいいかと思います。
また、その他「ブースター」として売られているMXR/CAE MC-401や、おなじくMXR micro amp、EX-PRO 32VOLT BOOSTERなんかもバッファアンプとして使えそうですね。
ちなみに、ワウペダルや、ファズは音が影響を受けやすいハイインピーダンスの方がかかりがいい、といわれることもあります。しかしそのあたりはもう好みの領域なのですね。
トゥルーバイパスとバッファそして音痩せについて、考察
さて、「音痩せ」を防ぐためにはどうすればいいか、ということについて考えてみたいと思います。
- 音痩せの原因
エレキギターのような電気を音として拾うもので、音痩せの原因は、「全てのパーツ」です。
PUから音を拾った瞬間から、すでに音痩せは始まります。では、なぜエフェクターの音痩せについてこんなにいろいろといわれているか、というと、「目立つから」でしょうね。
「ONにすると音が変わる」のが目的のエフェクターなのに、つないだだけで音が変わった!というと、なんだか腑に落ちないような気がしてくるのは当然です。また、トゥルーバイパスにおいても、当然プラグ→ジャック→スイッチの接点→アース→アウトプットジャック→プラグと通る間や、それぞれをつなぐ配線内でも音痩せはします。しかし、トゥルーバイパスやそういった音痩せ防止策というのは、できるだけマシなものにしよう、として改良されてきました。そういった努力は進歩に違いありませんし、評価されるべきです。
ですが、やみくもに「トゥルーバイパスじゃないと」とか、そういった「記号」を求める前にそれがどういった働きをしているのか、とか、他になにか問題はないか、と考えることは当然必要だと思います。
- 音痩せ対策
それでは、私なりの「音痩せ対策」をいくつか書いてみます。
- シールドは高品質なものを、できるだけ短い長さで・・・安い低品質なシールドほどノイズや音痩せの原因になるものはありません。また、それも短い方がいいです。多少の遊びは必要ですが、無駄に10mとかのシールドをアマチュアの方が使ってもあまり意味ないかと思います。
- ギター内部か、ギター直後か、せめてワウとファズの後にはバッファを入れる・・・さっき書いたとおりです、できるだけ早い段階でローインピに変換してしまいましょう。クラプトンのミッドブースターや、EMGのようなアクディブPUでギター内部の時点でローインピにしてしまうのも手です。
- 無駄なものはつながない・・・当然ですね。トゥルーバイパスでさえ音痩せするんですから、エフェクターをつなげばつなぐほど、音は痩せていきます。特に音を録るようなときには、いちいち繋ぎ代えが面倒と思っても、いま録るパートに必要な装備だけで臨むべきだと思います。
これらを踏まえて、エフェクターについて最強にこだわるのならば、エフェクターの内部は全てポイントtoポイント配線、高品質なバッファを常時onにしてあることを前提として、他のエフェクターは全てトゥルーバイパス、配線材も太く、余裕のあるものにする、ということも意味はあると思います。たとえばBOSSのOD-1の音が必要、というときはパーツはそのままで、全てポイントtoポイント配線で基盤作り直し、トゥルーバイパス化、エフェクトケース入れ替えというモディファイをすることもできます。費用を無視すれば、ですけど。
- 考察
さて、極端な例をわざと出したんですが、いかがお考えでしょうか?
結局のところ、どこで妥協するか、ですよね。執拗にトゥルーバイパスにこだわるのもいいと思いますが、一度システム全体を見直してみる、というのは大事なことだと思います。「木を見て森を見ず」状態にならないように、私自身も気をつけたいと思います。
最後に、私の考えをいいたいと思います。
・・・途中経過も大事だけれど、結局音作りは
「出音が全て」
です。音痩せはなくせないんですから、原音を出すことを目的とするより、出音をよくすることの方が大事ではないか、と思います。もちろんその手段としてのトゥルーバイパスやバッファアンプはいいと思いますよ。