定番のエフェクターを改めて振り返る特集、前回のアナログライクなデジタルディレイでは、コンパクトでアナログサウンドを再現したデジタルディレイを見てみました。また、その前のコンパクトデジタルディレイ編でも、デジタルディレイを見てきました。
デジタルディレイにはPT2399や初期のデジタルディレイチップを用いたタイプと、DSP、つまりプロセッサを用いたタイプがあるということは、これまでの特集でも述べたとおりです。
今回はディレイ編のラストとなり、デジタルディレイの定番モデルの中でも最高峰のモデルをいろいろ見ていきます。DSP、そしてデジタル技術の粋を集めた多機能なデジタルディレイペダル。多くのプリセットや多彩なサウンドなど、マルチエフェクターと見まがうほどの機能を持ったモデルなどを見ていきたいと思います。
※「定番」に定義はありません。あくまで個人的な印象も含んでいますので、これが入っていない、これは定番じゃない、といったご意見もあるかもしれませんがご了承ください。メーカーのアルファベット順にご紹介します。
BOSS DD-20
BOSS DD-20 (GIGA DELAY) 【BOSSグッズプレゼント!】 |
10種類のディレイサウンドを搭載し、E.Level、Feedback、Toneコントロールを搭載。またディスプレイの採用で、タップテンポやノブによる感覚的な設定だけでなく、数値による厳格なディレイタイム設定に対応しているのも特徴。2ペダルながら4つのメモリーとマニュアルモードを備えています。ヘッドフォン端子が付いていて、外部フットスイッチによるコントロールも可能。ステレオ入出力に対応します。
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Digitech Time Bender
【ディレイ】Digitech 《デジテック》 TIME BENDER |
10種類のディレイモードと、20秒までのルーパーを搭載。メモリは4種類までプリセット可能で、5秒までのディレイタイムに対応します。ディレイタイムを表示するディスプレイも搭載しています。
特に、Digitech Harmony Man等にも搭載される、入力音からコードを読み取るトラッキング技術を用いたハーモニーディレイが特徴的で、右側のフットスイッチを踏みながら演奏することで自動的にキーを読み取り、100種類以上のプリセット、またはプレイヤーが設定した通りにディレイ音の音階を上下させることができるペダルとなっています。タップによるテンポ設定だけでなくフィードバック回数の設定や、ディレイタイムのクリック出力といった機能も備えています。ステレオ入出力、外部フットスイッチ、エクスプレッションペダル端子を装備しています。
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Electro-Harmonix Stereo Memory Man with Hazarai
electro-harmonix Stereo Memory Man with Hazarai ディレイ/エコー |
Blend、Decay、Filter、Repeats、Delayコントロールと、メモリやディレイのモード設定を行うHazaraiノブを搭載。通常のディレイやマルチタップディレイ、リバースエコーと30秒までのルーパーを搭載。モジュレーションもかけられます。ループはリバースやピッチを変えないテンポチェンジ、ピッチチェンジが可能。プリセットは8つまで保存可能です。
あくまでも多機能ディレイとしては必要な機能の絞り、アナログペダルライクな操作感を実現。またルーパーに力の入ったペダルというのが特徴的ですね。ステレオ入出力対応です。
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empress superdelay
Empress Effects Superdelay |
収録されているディレイサウンドとしては通常のデジタルディレイ、リバースディレイ、テープエコーの3つと13.6秒までのルーパーと、それほど多くありません。しかし、さらにリバースエコーでオクターブを上げたり、入力レベルに対してフィードバックやミックスを操作したり、通常のノブによるコントロールやタップテンポに加え、入力に合わせて自動的にテンポを設定したりといった細かな機能を含め、24種類のモードを搭載。8つまでのプリセットの保存も可能です。モジュレーションやローパス・ハイパスフィルタも搭載します。
mix、d time/ratio、feedback、mode、volumeノブと、exp pedal、filter、modulation、mode specificのトグルスイッチ、そして3つのフットスイッチによる多彩なコントロールが可能。中央のフットスイッチ横にある小さなスイッチはSaveスイッチです。これで8種類のプリセットを保存できます。エクスプレッションペダルに対応。完全モノラルペダルです。
機能や音質が特にギター向けに作られているという点も特徴的ですね。
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Empress Tape Delay
【デジタルディレイ】empress Tape Delay |
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Eventide Timefactor
EventideTIMEFACTOR |
高級デジタルペダルの代名詞的なメーカーがコンパクトペダルを製作という話題性もさることながら、その機能やサウンドクオリティで2007年の発売以来、現在も最高峰の多機能デジタルディレイとして知られています。
9種類のディレイとルーパーを搭載。ディレイは独立した2系統のディレイをかけることができ、原音と2系統のディレイを自在にミックス可能。Mix、DlyMix、Dly Time A、Dly Time B、Fdbk A、Fdbk B、Xknob、Depth、Speed、Filterコントロールを搭載。10バンク×2の計20種類のプリセットを保存することができ、もちろん多彩なタップテンポにも対応。12秒のルーパーを搭載し、ステレオ入出力にも対応します。
ドットマトリックスタイプのディスプレイで、ディレイタイムはもちろん全てのパラメータを数値で表示することができ、外部フットスイッチやエクスプレッションペダルによるコントロールも可能。USB経由でファームウェアアップデートにも対応し、入出力ともにラインレベルにも完全対応しています。また、MIDIによるコントロールで全パラメータのリアルタイムコントロールやパッチの呼び出しにも対応しています。
機能的にはそれまでの多機能デジタルディレイの集大成で、さらにサウンドクオリティはEventideらしい非常に高品質ということから、このペダルの発売後、一時期は他メーカーからの新製品がピタリと止まったほどの影響力がありました。
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ループサンプラーを含む16種類のディレイサウンドを、Delay Time、Repeats、Tweak、Tweez、Mixのノブでコントロールし、その設定を3つのフットスイッチにメモリー可能。タップテンポを一般的にしたのもこのペダルと言えるでしょう。14秒のサウンド・オン・サウンドや速度を可変可能なルーパーを搭載しています。ステレオ入出力対応、エクスプレッションペダル端子も搭載します。
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Strymon Time Line
【エフェクター】strymon TIMELINE |
200種類のプリセットを保存でき、Time、Repeats、Mix、Filter、Grit、Speed、Depthコントロールに、ValueとTypeノブを搭載。12種類のディレイをつくることができます。ステレオ入出力に対応し、モノラル使用時には残りのIN/OUTをエフェクトループとして使うことができます。エクスプレッションペダルやMIDIコントロールにももちろん対応しています。
収録されているディレイとそのサンプルは以下のとおりです。
dTAPE
El Capistenにも使用された、テープエコーの響きを再現するdTAPEアルゴリズムが使用されたディレイです。マルチヘッドディレイは作れないようです。
dTAPEサンプルムービー
dBUCKET
BRIGADIER、Ola、Orbitに使われた、BBDを再現するdBUCKETアルゴリズムを使用するディレイです。さまざまなタイプのアナログディレイサウンドを再現しています。
dBUCKETサンプルムービー
Digital
いわゆるデジタルディレイです。スタジオクラスのクリアなデジタルディレイから、黎明期のクリアではないデジタルディレイまで作ることが出来ます。Damage Control時代のTime Lineにも搭載されたディレイです。
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Dual
2つの独立したディレイを組み合わせることで、変わった反響を得るためのモードです。Timefactorを思わせるモードですね。
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Pattern
マルチタップディレイです。それを細かく設定することで、いろいろな反響パターンを作るというモードです。シンプルなものから複雑なものまで作ることができます。
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Reverse
リバースディレイです。入力された音を逆再生することで、テープを逆回転させたような音を出すことができます。
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Ice
ピッチシフト効果のついたディレイです。残響音が和音になったり、バックにストリングスが流れているような効果を作り出します。残響音にコーラスをかけたような効果も可能です。
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Duck
入力音に反応して、ディレイのミックスやパラメータを可変するタイプのディレイです。いわゆるダッキングディレイやダイナミックディレイ等と呼ばれ、t.c.electronicが得意とするディレイですね。
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Swell
ヴァイオリン奏法を再現するディレイです。かなり細かな設定ができるようです。ヴァイオリン奏法だけではなく、そこに原音を加えることで幻想的な効果にしたり、いろいろ可能です。
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TREM
ディレイとトレモロを合わせたタイプのディレイです。単純にディレイペダルとトレモロペダルがあればできるような効果はもちろん、さらにそれらをシンクロさせてさまざまな効果を得ることが出来ます。
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LO-FI
残響音のビットレートやサンプルレートを可変させることで、ローファイなディレイサウンドを得ることの出来るモードです。ファミコン的な音や、ノイズのような音のディレイを作ることができます。Mixをゼロにすれば、原音をカットしてローファイサウンドのみを出力することもできますね。
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t.c.electronic Nova Delay
t.c.electronicND-1 Nova Delay |
6種類のディレイ、9種類のプリセットとマニュアルモードを搭載。ディスプレイによるディレイタイム表示やBPM表示に対応しています。Delay、Feedback、Color、Mod Level、Mix LevelコントロールとManual、Preset、Mod Style、Tipe、Subdivスイッチ、および2つのフットスイッチを搭載。ステレオ入出力に対応したディレイペダルです。
t.c.electronicらしいスタンダードかつ高機能で、さらに高品質なサウンドも特徴ですが、なによりこれだけの機能を持ちながらコンパクトにまとまっているというのも大きな特徴のペダルです。
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t.c.electronic Flashback X4
同じく、t.c.electronicの多機能ディレイです。コンパクトエフェクター、TonePrintシリーズにラインナップされるモデルとなります。
4種類のTonePrintセッティングを含む、計16種類のディレイを搭載。4種類のTonePrintはWebからPC、またはToneprintアプリ(iOS、Android)を使ってスマートフォンからダウンロードします。
ディレイの選択の他、Delay Time、Feedback、Delay Levelとタップテンポの設定、ディレイとルーパーの切替スイッチ、4つのフットスイッチを搭載。メモリーは3つまでで、40秒までのルーパーを搭載。ループごとに違ったディレイをかけ、複雑なループ作りが可能です。
ステレオ入出力、MIDIコントロール、エクスプレッションペダル端子を掉尾しています。現時点では最も新しいモデルになります。アナログペダルライクな操作感とシンプルな機能を持ったペダルですね。
Vox DelayLab
VOXDelayLab |
30種類のディレイと28秒までのルーパーを搭載。コントロールはモード設定のスイッチとCatecory、Fine、Sync、Write、Cansel、Pedal Asignのボタンスイッチ、Time、Feedback、Tone/Speed、Intensity、Mixの5コントロール、およびTap/Bank Up、A、B、Cの4つのフットスイッチとなっています。ディレイタイムを表示するディスプレイを装備。
このペダルの最大の特徴は、全パラメータがエクスプレッションペダルにアサイン可能という点。ステレオ入出力とエクスプレッションペダル端子のみでMIDIを使わず、多彩なリアルタイムコントロールを行えます。30種類のプログラムを保存でき、また、その中には名曲で使用されたディレイを再現したソングプリセットを10種類搭載。発売が新しいモデルということもあり、それまでの多機能ディレイとはまた違った視点から製作されたモデルですね。
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というわけで、様々な多機能デジタルディレイペダルを見てきました。
それぞれ共通する点や違っている点など様々ですが、どのペダルも、よほどでなければたいていのジャンルに使えるモデルばかりです。どれか1つは持っておいても損をすることはないというか、あると本当に便利だと思います。
選ぶ際のちょっとしたポイントとして、筐体の大きさ、重さを実際に見てみること、そして試奏する際、こういったモデルは全ての機能を見極めるのはほぼ無理ですので、音の特性というか、音質の方向性に注目すると良いと思います。いろいろなディレイサウンドが収録されていても、それらの音質は基本的にペダルごとに同じ方向を向いているからです。また、どうしても必要な機能がある場合は、あらかじめ何が必要なのかを考えてからスペック等を見ると、必要なモデルが何なのか分かってくると思います。
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