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当サイトの内容を説明文等に使用している楽器店さんがあるようですが、一切関係がありません。

「グラニュラーシンセシス」が生み出す、ギターペダルの新たな世界。極小サンプルを重ねて個性的な音を作るグラニュラー合成とは。

特に個性的なエフェクターブランドの中で、今増えつつあるスタイルのエフェクトがあります。
グラニュラーシンセシス(グラニュラー合成)という、シンセサイザーの方式の1つで、その技術、というか方法を使ってギターサウンドを加工するエフェクトです。
こう書くとギターシンセの話と思うかも知れません。ある意味一種のギターシンセと言えなくもないかもしれませんが、その本質はデジタルディレイやサンプリングルーパーの一種です。

グラニュラー合成を使ったエフェクトは、音だけを聴くと意味不明な効果を作ったりします。特にアナログ回路のクラシックなエフェクトの知識しかないと、何が起こっているのか分からないような音が出たりします。
そして、その説明を読むと聞き慣れない単語が連打され、さらに意味が分からなくなったりします。

Red Panda Tensor

今回は、この「グラニュラー合成」を使ったギターペダルについて、それがどういうものなのか、ということをまとめてみたいと思います。
グラニュラーとは粒子のこと。グラニュー糖のグラニューと同じ言葉です。シンセシスは合成。それを動詞にすればシンセサイズ、erを付ければシンセサイザーとなります。いろんな波形を合成して音を作る楽器をシンセサイザーと言うわけですね。
グラニュラーシンセシスだと長いし、グラニュラーエフェクトと言うブランドもありますが、ここではグラニュラー合成と言いますね。

  • グラニュラー合成の基本

グラニュラー合成が、「何を」合成するのか、というと、「グレイン」と呼ばれる波形の単位です。ギターエフェクトで言えば、これは「ループ」と言う方が分かりやすいかもしれません。サンプリングルーパーって、数十秒から数分、中には数時間までカバーできるものもあったりしますが、「グレイン」と呼ばれるループの長さは数ms~数十ms程度。いわゆる「ディレイタイム1回分」くらいの長さのループを使います。
実はこれはそのまんまデジタルのショートディレイとしても使うことができるもので、単純に録音したグレインをそのままループ再生しながら音を重ね(ループのオーバーダブ)、原音と混ぜて音を出せば、クリスタルクリアなデジタルディレイとなります。

音を小さなグレインに分けて、それを「ループ再生しながら音を重ね、原音と混ぜ」ればクリアなデジタルディレイになるわけですが、そこで音を重ねず(オーバーダブせず)に、原音とグレインを「ランダムに再生する」と、「グリッチ」と呼ばれる、CDに傷が付いていたりプレイヤーが揺れたりして読み込みがうまく行かなかった時のような音になったりします。
また、ループに「何も録音せず」、原音と無音を「ランダムに再生する」効果を作ると「スタッター」と呼ばれるサウンドになります。


Catalinbread CSIDMAN Glitch/Stutter Delay

この辺までは、感覚的にこうなってるんだな、というのがまだ分かりやすいと思います。この「ごく短いループ」を扱う「ループサンプラー」であること、それがギターペダルでのグラニュラー合成を使ったエフェクトの基本構造であることを意識すれば、一見意味不明な効果を作る個性的なエフェクトも、何がおこってどうなっているのかが分かるようになると思います。
ちなみに、この「ごく短いループ」の「長さ」のことを、「グレイン」の「サイズ」というように呼びます。ここが理解できていないと、突然「グレインのサイズが~」という説明がでてきて「???」となったりします。

また、「ランダムに再生」ということも、グラニュラー合成を使ったエフェクトでは重要な要素です。このランダマイズこそ、単にループを繰り返し再生して音を重ねていくだけのループサンプラーとの最も大きな違いとなるかもしれません。機種によっては、この「ランダム」の動作を制御できるものもあります。
ランダム要素をなくせば、上に書いたようなショートディレイを作る事ができます。RandomやRandomizeといったパラメータがある場合、それを最小にすればランダム要素がなく、単にループ再生を繰り返すモードになりますし、それ自体が「ディレイ」という別モードに分けられていたりもしますね。

グリッチやスタッターは、短いループであるグレインが1つだけ再生されます。ディレイの場合は、グレインをフィードバック回数分再生しながら、演奏に合わせて新たなグレインを録音し、重ねていきます。そうしないといつまでも「最初に弾いた音だけ」が繰り返される音になってしまいます。
上では分かりやすいようにオーバーダブと書いていますが、実際はグレイン自体は変わらず、それをいくつも重ねていく形でディレイを作ることになります。このグレインの重なりを、デンシティ(密度)という言い方をします。
グレインのサイズ、デンシティ、ランダマイズ。このあたりが、グラニュラー合成を使ったエフェクトの基本的なパラメータとなります。

  • ホールド

音をホールドする。ある瞬間のサウンドをそのままいつまでも保持するエフェクトも、グラニュラー合成の一種です。短いループであるグレインの再生を一時的に停止させ、そのまま音を出し続けることで、音をホールドします。ホールド専用のエフェクトもあれば、多くのデジタルディレイなどにも搭載されているホールド機能も同様のスタイルとなります。

Gamechanger Audio Plus Pedal: Magnificent SUSTAIN!


  • 再生速度と再生方向

グラニュラー合成を使ったギターエフェクトは、短いループをいくつも重ねたりできるループサンプラーの一種です。一般的なループサンプラーでも、「倍速」や「半速」、「逆再生」といった操作ができるものも多くありますが、それはグラニュラー合成のエフェクトでも同じです。
もちろん機種により操作できる範囲や操作方法は異なりますが、倍速再生はオクターブアップ、半速はオクターブダウンとなり、逆再生はそのままリバースで、逆再生+倍速ならリバースオクターブアップ…というようにピッチシフトとリバースサウンドを簡単に作る事ができます。
ピッチシフトは、倍速で1オクターブアップですが、そこまでの速度も調整することで+5度や+3度などのピッチに可変することができます。実はこの構造って、一般的なピッチシフターと同じです。ピッチシフターはごくごく短いディレイ(グレイン)のディレイタイム(速度)を可変することでピッチを変えています。ピッチシフトをかけた音に応答の「リニア感」が無くなるのはこのためです。
グラニュラー合成を使ったエフェクトでは、これらの再生にさらにランダマイズをかけ、ピッチがランダムに変わるようなエフェクトを作ったり、再生速度をマイナス(逆再生)までカバーしてランダムに逆再生とピッチシフトを合わせたような音を作ったりすることができます。そして、再生速度0(停止)が、上記のホールドというサウンドになります。


Chase Bliss Audio MOOD

  • サンプリングレートとビットデプス

ここまで何度も書いているとおり、グラニュラー合成のエフェクトは、短い時間のループサンプラーです。ループサンプラーということは、デジタルでレコーディングを行っています。
デジタルレコーディングした音は、サンプリングレート、ビットデプスによって音質を変えることができます。この音質をあえて落とすことで音を破壊するエフェクトを、ビットクラッシャーと言います。ビットクラッシャーは、短い時間での音の録音を行い、その音質をあえて下げてローファイサウンドを出力する、グラニュラー合成を使ったエフェクトの一種です。
ここに、上記のピッチシフトや逆再生、さらにランダマイズまで組み合わせると、さらにカオスで独創的な音が生まれます。それをどのように組み合わせ、どんなエフェクトとして音を出すか、というのが設計者の判断となります。


Meris Ottobit Jr Bitcrusher and Sequencer Demo

ちなみに、超絶で意味不明なビットクラッシャーとして知られるWMD Geiger Counterのシリーズは、内部にオシレーターを持ち、オシレーターが生み出す波形(ウェーブテーブル)とグレインの波形を組み合わせるグレインテーブルという方式を使ったビットクラッシャーです。これにより、単に音質を下げて音を破壊するだけのビットクラッシャーとは違った個性的な音色を生み出しています。

WMD Geiger Counter Pro - How To Get Started

  • デジタル世代のエフェクター

グラニュラー合成は、別に最新の技術というわけではありません。ピッチシフターがいつからあるか考えれば分かるとおりですし、最初期の「音が劣化しない」デジタルディレイも同様の技術と言えます。ただ、言葉としてはシンセの世界での言葉で、シンセサイザーだけでなくプラグインエフェクトなどでもグラニュラー合成に特化したエフェクトが出てきています。

そして、最近はギターペダルでもこの「グラニュラー合成」を前面に出したペダルが増えつつありますね。少し前のグリッチやホールドエフェクトの流れがそのまま先へ進んだような感じです。
ただ、そこに出てくる言葉が、いままでのギターペダルで聞き慣れた言葉とは違っている(グレインとかデンシティとか)のと、特にランダマイズが生み出すサウンドのカオスさから、全く新しいエフェクトのように思うこともあると思います。
構造が分かれば、実は難しいエフェクトではなく、またそれが生み出すサウンドは本当に独創的で面白いので、積極的に、特に飛び道具として取り入れていくのも面白いのではないかと思います。

アナログ回路では作る事のできない、レコーディングした音を自在に再生し、その音質を変えたり再生方向や速度を操作できるデジタルならではのエフェクターということもポイントですね。そういう意味では、クラシックな世代のエフェクトよりは新しいサウンドを作る事ができるペダルとも言えます。
 
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