お借りしたペダルをレビューさせていただく「エフェクト世界紀行」、今回もシンコーミュージックのSさんにお世話になります。
今回お借りしたのは、70年代に発売されていた、エレハモの名機として知られるものの一つで、「HOT TUBES」というものです。ブースター〜オーバードライブにあたるペダルですね。もちろんOverdrive Book 2にも載っています。
HOT TUBESといっても今現行で買うことができるHot Tubesとは完全に別物、まったく違うペダルとなっています。では、見ていきましょう。
Electro-Harmonix HOT TUBES
こちらが、お借りしたHot Tubesです。非常にエレハモらしいというか・・・かなり大型のペダルです。コントロールはOverdrive、Tone、Volumeのみのシンプルな構成です。
特徴はこのころのエレハモによくあった「Tone Bypass」スイッチを搭載しており、またウェット音とドライ音を別々に出力することができるというものです。歪み系でこれは珍しい仕様ですね。
ちなみに現行のHot Tubesはというと・・・
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こちらが70年代のHot Tubesの内部なんですが、見ての通り、真空管なんてどこにもありません。すでに現行とは完全に別のペダルであることが分かりますね。それにしても、筐体の半分が空間になってますねw
電源は本体から出たコードをコンセントに挿す形で供給します。そのため、このように内部にトランスが入っていますね。上の写真で見た筐体半分の空間は、基板部とトランスの距離をおくことでできるだけノイズを少なくしたかったといえるのかもしれませんが、フットスイッチをこんなにトランスの近くに置いてしまうとそれもあまり意味がないような気もしますね〜。
こちらが基板部です。EH3075Bの番号が入っています。この導電側にひとつだけコンデンサがつけられているのがおもしろいですね。
筐体と基板の間から、基板のパーツ側を写してみました。OPAMPはRC4558と、4049UBEというものが搭載されています。この写真だと、中央右側よりの、ポットの下に移っているのが4049UBEです。
それにしても、「同じ名前のペダル」でここまで初期と現行で全く違う仕様になったものって本当に珍しいんじゃないでしょうか。初期はブースター系オーバードライブだったのが、現行品は真空管を搭載した過激なディストーションだというんですから・・・中身も構造も違えば、エフェクトとしての役割まで完全に変わっているのがなんだかエレハモらしくて笑えます。もうちょっと別の名前考えたらいいのに、と思ってしまいますねw
では、レビューの方いってみたいと思います。
- 操作性
「音作り」のための操作性は非常に良好です。一般的なコントロールしかありませんし、迷うことは特にないですね。これは仕様なのか、それとも後から変えられたのか分かりませんが、ちょっと普通じゃないのはノブの回り方です。一般的には12時の位置が真ん中にくるんですが、このペダルは9時の位置が真ん中にきます。こんなのはノブを外して入れ直してしまえば簡単に変えられるんですが、もしこれが仕様だとすれば、「縦置き」で使うことを前提に作られたのかもしれませんね。今回のレビューでは、分かりやすくするため、「縦置きにして見たノブの位置」で表記します。(つまり、12時と書けば中央です。)
で、まぁ音作りのコントロール自体は問題ないんですが、やはりこの大きさ・・・そして強制的にコンセントを使わされるという点においては、ちょっと使いにくいかな、と思う方もおられるかもしれません。もちろん、そこがエレハモらしくていいんだ、というのもよく分かりますが・・・w
操作性についてはこんな感じですね。
- サウンドレポート
ではサウンドです。まずはテレキャス(Volume、Tone共にフル、リアPU)を使ったサンプルを聴いてみてください。
サンプル2
サンプル1はフルゲインサウンドです。Overdrive、TONEをフルにし、Volume10時となっています。
サンプル2はゲインを下げたブーストサウンドで、Overdriveは9時くらい、Tone2時、Volumeフルです。
まずサンプル1についてですが、TONEをフルにしても、かなり低域が強いサウンドだということが分かると思います。ギターはテレキャスでこれですからね・・・w
ですが、コードを弾いた状態でもアルペジオはちゃんとできますし、フルゲインにしてはそこまでゲインは高くないという感じではないかと思います。ちょっと粘っこいというか、重たい感じの音が非常にエレハモらしいサウンドですね。ちなみに音は録ってませんがTONE BYPASSにしたら低域がもっと強くなって、ちょっとこもり気味になりました。機材によって使い分けるとよさそうですね。
さて、サンプル2だと、とても自然な感じの反応性を持っているように思います。今のペダルと比較すると反応性についてはまた違ってきてしまいますが、なんていうか・・・アンプっぽい雰囲気のあるペダルですよね。Hot Tubesという名前も、こういうアンプライクなサウンドからつけられたのではないかと思います。回路としては一般的なオーバードライブだそうですが、当時としては他にはなかなかない、「チューブアンプのような音が出るペダル」として重宝されたのはないかと想像できます。ある意味、アナログのアンプシミュレータと考えても良いのかも知れませんね。
ただ、やはり古いペダルだからでしょうか・・・ノイズも多いです。弾いているときは問題ないので「使えない」ってことはないんですが、弾いていないときのノイズは大きめですね。
というわけで、70年代のElectro-Harmonix Hot Tubesでした。Sonic YouthのKIM GORDONが使っていたことでも有名なペダルだったりするんですが、一般的に見ればちょっとマイナーなヴィンテージペダルということになるのかな、と思います。Sさん、おもしろい機材をありがとうございました!