キャビネットシミュレーターは、ラインレコーディングを行う上で必要です。意外とアンプシミュレーター以上にキャビネットシミュレーターの方がリアルな音でレコーディングしたりラインで音を出したりするのに必要だったりします。
かつてのキャビネットシミュレーターは、アナログであれデジタルであれ、フィルターを組み合わせることでスピーカーの特性を再現するものが主流でしたが、現在はIR(インパルスレスポンス)を用いて、「スピーカー、マイク、空間の残響」までまとめて再現するものが主流となっています。
詳しい説明については、以前のIRシミュレーター特集とか、IRについての説明を書いた記事の方を見てもらえればと思います。
toy-love.hatenablog.com
toy-love.hatenablog.com
前回のIRシミュレーターの記事が5年前だったので、それからどれくらい変わったのか、コンパクトIRキャビネットシミュレーターをまとめてみたいと思います。
現在も販売されているものや、新しくなったものなどがどう変わったかなども見れると思います。
で、IRシミュレーターなんですが、それ自体は主流となっているので、メイン機能ではない部分として搭載されているものもあります。
例えばこのペダルはプリアンプモデリングをメインとしながら、IRもロードすることができます。こういったスタイルのペダルもいろいろあるんですが、それらを含めるとちょっと違ったように見えると思いますので、そういったペダルは今回は含めないようにします。同様に、「マルチエフェクター」などのようにIRをロードできる多機能なモデルも今回は含めないものとします。
一方、例えば似たスタイルですが、トップ画像にもあるこのペダル
このペダルもアンプモデリングとIRシミュレーターを搭載しています。しかし、このペダルの場合はアンプモデリングとキャビネットシミュレーターが並列またはキャビの方がメイン機能と見えるので、今回のまとめに載せます。このあたりのバランスは難しいんですが、多少主観も入るのでご了承ください。
また、「IRキャビネットシミュレーター」は、必ず「個別のIRファイルをロードできる」機能があることを前提としています。
という形とした上で、改めて、現在の「コンパクト」IRシミュレーターを見てみましょう。ここからまとめです。ブランド名順に載せています。
BOSS IR-2 & Cabinet
BOSSから発売されたコンパクトなアンプシミュレーター・キャビネットシミュレーターペダルです。
11タイプのアンプモデルを収録し、CelestionのIRを用いたシミュレーターを内蔵。そして、USB端子でPCに接続することでIR-2 IR Loaderソフトウェアから、各アンプモデルに使用するIRを設定可能。サードパーティIRをロードできます。
BOSS IR-200 Amp & IR Cabinet
本体には144種類のBOSSオリジナルIRと、10種類のCelestionIRを収録。
さらに128種類の外部IRをロードできるスロットがあります。
それだけでなく、8タイプのギタープリアンプと3タイプのベースプリアンプを収録。
コントロールはAMP、CABINET、AMBIENCEノブとGAIN、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLEコントロールを搭載。
AMBIENCEはルーム、スタジオ、ホールリバーブを収録。EQもグローバルEQとメモリーEQがあり、パラメトリック、グラフィックEQを選択できます。
各コントロールを128種類プリセット可能、1つのプリセットにはステレオIR、またはモノラルIR×2を設定できます。
内部構造はアンプシミュレーター、ノイズサプレッサー、エフェクトループ、2つのキャビネットと個別のEQ、そしてAMBIENCEという構造。EQはAMBIENCEの後にも設置できます。
外部IRロードやプリセットのバックアップができるソフトウェアもあります。
www.youtube.com
Darkglass Electronics ELEMNET
5つのIRプリセットを選択することができます。
3つの大きなタッチスライダーはPhones1、Phones2、Blendコントロールとなっています。
2つのヘッドフォンアウトがあり、それぞれのアウトプットボリュームをスライダーでコントロール、またBlendはギター/ベースのサウンドとAUX INまたはBluetoothオーディオのバランスを調整します。
Auxインプットを搭載し、外部オーディオを使用可能。Bluetoothでオーディオと接続してオーディオ再生が可能、また同じくBluetoothでスマホなどのデバイスからアプリを通してコントロールも可能となっています。
Friedman IR-X Dual Tube Preamp
チャンネル1、チャンネル2それぞれにBoost V.、Volume、Treble、Middle、Bass、GainコントロールとCab/IRスイッチを搭載。チャンネル1にはBrightスイッチ、チャンネル2はTightスイッチを搭載。
フットスイッチはチャンネル1、チャンネル2、Boostとなっています。Cab/IRスイッチはチャンネルごとに合わせたIRシミュレーターを3タイプから選択できます。
プリアンプは12AX7真空管を用いたプリアンプとなっていて、専用エディタでプリセットを選択したり、IRの選択やサードパーティIRのロードが可能。MIDIコントロールはチャンネルセレクト、Boost ON/OFF、IRの選択、THUMP、PRESENCEの3モードスイッチ、エフェクトループON/OFF、Boost Lockを保存できます。またMIDIから128プリセットを選択できます。
Hotone Binary IR Cab
小さなサイズのペダルを主に展開する中国のHotoneによるキャビネットシミュレーターです。ギター用やベース用を合わせた100種類のIRキャビネットシミュレーターを収録し、さらにサードパーティーのIRを読み込むこともできます。VOL、MIC TYPE、X、Y、Zコントロールを搭載。Aux IN、Headphone Outも搭載しています。
Hotone OMNI IR CAB IR Loader
同じくHotoneのキャビネットシミュレーターです。
40種類のIRベースのキャビネットシミュレーターを内蔵。USBからエディタに接続してIRロードが可能。40のプリセットを内蔵し、4バンドEQも搭載。Aux INやヘッドフォンアウトもあります。フットスイッチには機能をアサインできます。
Mooer CAB X2
14種類のプリセットでキャビネットを切り替えられるキャビネットシミュレーターです。
コントロールはHC、LC、LEVEL、LATENCY、CAB。CABノブを使って11タイプのキャビネットを選択することができます。
ステレオ入出力に対応し、モノラルINステレオOUTも可能となっています。
そして、各プリセットには2つのキャビネットを設定可能。ステレオアウトの際のLとRに別々のキャビネットをあててミックスすることができます。
サードパーティIRをロードすることができ、デフォルトのキャビネットIRを置き換えが可能。
エディタソフトを使ってプリセットやIRなどの設定が可能です。
Mooer Radar
同じくMooerのキャビネットシミュレーターです。
30種類のキャビネットモデルに加え、11種類のマイクモデル、4種類のパワーアンプモデルを収録し、さらにEQを加えてそれらの組み合わせを36種類までプリセットできるミニサイズの多機能デジタルシミュレーターです。
ミニサイズの筐体にはインプット、アウトプット、ヘッドフォンアウトとUSB端子を搭載。本体上部にはカラーディスプレイが付いています。フットスイッチのように見える赤いコントローラーはMENUノブ。プッシュ可能なノブで、このノブ1つで全ての設定を行うことができます。
プリセットごとにパワーアンプモデリングをON/OFF可能、マイクモデリングは位置と距離の設定もできます。そして、こちらもON/OFF可能なギター用、ベース用、および4バンドパラメトリックイコライザーの3つのEQも搭載。3種類のEQから1つを選んで設定します。
これらを36種類までプリセットして本体に保存可能。さらにWindows対応のエディタを使えば各種パラメータをPCから設定したり、サードパーティIRを読み込んでキャビネットシミュレーターとして使うことも可能となっています。
BEST NEW GEAR? - Mooer Radar Speaker Cab Simulator
NUX OPTIMA AIR
こちらは、今回のまとめの中では異色のモデルです。
「IRシミュレーター」ではあるものの、「キャビネットシミュレーター」ではないというモデル。なぜならこのペダルはアコギ用だからです。
Neve 1073プリアンプを物理モデリングで再現したプリアンプを内蔵し、EQとリバーブも搭載。
コントロールはTREBLE、MIDDLE、BASS、GAIN、REVERBとIR LEVEL、SELECT。アコギIRをロードしてアコースティックギターサウンドをよりリアルに作ることができるペダルです。
また、本体でアコースティックギターIRを制作することもできます。本体には15種類のアコギIRを収録しています。
エフェクトループも搭載し、USB端子でIRのロードができます。アプリからの操作もできます。
キャビネットIRほどではありませんが、アコギIRはアコースティックギターのラインアウトでリアルな音を作るのにとても有用です。今後こういったスタイルも増えてくるのではということで、載せています。ちなみに、普通にキャビネットシミュレーターIRにアコギIRをロードしてエレアコに接続する、という方法もよく知られています。
www.youtube.com
NUX Solid Studio
同じくNUXによるキャビネットシミュレーターです。
8タイプのCAB、8タイプのMIC選択ロータリースイッチとEL34/6V6/EL84切り替えとCENT/MID/EDGE切り替えが出来るスイッチでパワーアンプタイプを選択可能。MASTER、DRIVE、PRES.コントロールで音色を調整できます。
インプット、アウトプット、スルーアウト、PADやLINE/SPEAKERアウト切り替えスイッチ、そしてUSB端子を搭載。Solid Studioソフトウェアを使って、キャビネットサウンドを追加したり、IRファイルを使ったキャビネットシミュレートをすることも可能。また、好きなアンプからIRファイルを作るIRキャプチャ機能も付いています。
Nux Solid Studio IR & Power Amp Sim | Review
TC Electronic IMPULSE IR LOADER
本体には25種類のIRを収録。うち12種類はCelestion公式のIRとなっています。
また、8種類はTC Electronicオリジナルキャビネットシミュレーターです。
そして5つはアコースティックギターIRで、エレアコのピエゾPUをナチュラルなアコギサウンドに近づけることができます。
IRはA/Bのモードがあり、1つのプリセットに2種類のIRを保存できます。
また、74のIRスロットにサードパーティIRをロードすることができます。合計で99種類までのIRが保存できる形となっています。
グローバルEQを搭載していて、EQのON/OFFも可能。
USB端子を搭載し、IRのロードは専用のIMPULSEアプリから行う事ができます。
Two Notes OPUS
IRを用いたデジタルスピーカーシミュレーターの先駆者Two Notesのコンパクトなアンプシミュレーター・IRキャビネットシミュレーターです。
2つのノブとディスプレイを搭載。左側がPRESET/PARAM、右がVOLUME/VALUEコントロールです。
Torpedo Remoteというエディタを使って細かく設定が可能。
本体にはノイズゲート、8タイプのアンプシミュレーター(初期状態は5つ)を収録しています。
アンプシミュレーターはフェンダータイプ、アンペグベースアンプ、マーシャル系、VOX系、5150系、Orange系、ソルダーノ、Ashdownベースアンプです。
そしてパワーアンプモデリング。6L6、EL34、EL84、KT88の真空管と3極管/5極管切り替え、クラスA/AB切り替えが可能です。
IRキャビネットシミュレーターは32のキャビネットは8つのマイクを選択可能。512のサードパーティIRスロットもあります。このスロットに加え、サードパーティIRはメモリーカードスロットからSDカードで最大32GBまでロード可能です。
さらにキャビネットシミュレーターの後にEQ、エンハンサー、リバーブをかけることもできます。
49のアコースティックIRも収録されています。
本体には99のプリセットを保存することができます。
Shift Line CabZone X
CAB、VOLUME、AMPコントロールがあり、CABは10タイプのIRの選択とOFF、AMPは10タイプのパワーアンプシミュレーターの選択とOFFのロータリースイッチとなっています。VOLUMEは音量です。
楽器とラインレベル切り替え付インプット、スルーアウト、アウトプット、AUX IN、ヘッドフォンアウト、およびGNDリフト付のXLRバランス出力。
側面にはUSB端子があり、そこから外部IRをロードすることもできます。
Lineアカウントからブログ更新をお知らせ!
がっきや速報
人気blogランキングへ